第59話
「華怜、大丈夫みたいね」
「ああ、なんとか、かな」
3人で食卓を囲む。今日はごはんと納豆、鮭の塩焼きだった。3人とも完食し、食器はいつものように華怜が洗ってくれた。
誰もいない家に行ってきますと言って高校まで歩き始める。
傘をさしているので、少し歩きにくい。
華怜は器用に湊にくっついて歩く。なにか、いつもよりもべたべたしている感じがある。雷の後遺症だろうか。
学校に着くと華怜がクラスに入るのを見送ってから、湊と青空は自分たちのクラスへ行く。クラスメート達と挨拶を交わしながら、最前列の机へ。
テスト前日ということもあって、授業が始まる前から勉強しているクラスメートも多い。湊と青空もそれぞれテスト勉強を始める。
午前中の授業は2時間目と4時間目が自習で、時間が早く感じられた。
お昼にまた3人で食堂に集まる。
「明日からだね、お兄ちゃん」
「ああ、明日からだな」
「今回はお兄ちゃん頑張っているよね」
「そうかな?まあいつもより、少しね」
会話もすぐに切り上げ、明日のために勉強を始める3人。今日も予備校があるので、夜は勉強時間が限られていた。
午後の授業も、既に試験範囲外のため、先生の言葉は聞かずに明日の試験勉強を黙々とこなしていく。
終業のチャイムが鳴り、3人で下駄箱のところに集まった。雨が降っているので予備校まで電車で行こうということになり、JR大塚駅まで歩く。朝から降っている雨は少し勢いを増しているようだ。
雨独特の匂いが立ち込める。大塚駅近くには東京さくらトラムという路面電車が走っているが、遠くから走ってくると雨で少し輪郭がぼけてみえる。
3人はまだ混雑が始まっていない駅のホームに着く。
話す間もなく、山手線はホームに到着した。ほぼ中央の車両に乗り込む。
湊はなんとなく、華怜の顔を見る。美少女だよな、やっぱりと思う。華怜も気づいたのか、湊のほうを見る。視線が合っているのが恥ずかしくて、湊は目線を外す。
池袋駅でホームから降りる。
「なに?お兄ちゃん?」
「いや、なんでもないよ」
とりあえずはご飯ということで、3人はマクドナルドへ入って行った。
華怜は席取りに行かせて、湊と青空で注文をする。




