第51話
父親は、世の中に必要のない仕事は一つもないと言っていた。
たしかにそうなのだろう。
弁護士になるというのも考えたことはあった。ただ、現状弁護士が過剰になりすぎていて、なかなか収入が厳しいという話も聞く。なにより、それほど憧れているわけではない。
医師、公認会計士、起業、どれもあまりピンとこない、ただ、学校の先生には少し憧れていた。でも、俺みたいな人に子どもたちの教育なんてできるのかとも思う。
俺は、今は文雄大学法学部に行くことだけを考えようと思った。まずは、きちんと入学すること、その後、また考えようと割り切った。
そんなことを考えていると青空と華怜がお風呂から出てきた。
「ただいま、お兄ちゃん」
「おう、おかえり」
「だいぶ進んだ?湊」
「んー少しかな?」
「もう11時か、今日は2時くらいまで頑張ろうか?」
「ああ、そうだな、青空。華怜は寝るか?」
「ううん、私も2時まではやるよ」
「そうか、そうだな」
「コーヒー持ってきてやるよ、アイスとかホットとかあるか?」
「アイス!」
「アイス!」
「じゃあ、アイス3つだな、了解」
湊が階下へ行きアイスコーヒーを作って、持ってくる。
「ありがとう、湊」
「ありがと、お兄ちゃん」
「どういたしまして」
そこから、3人は集中して勉強を始める。華怜は相変わらずベッドで教科書をパラパラ見ているだけだが、表情がいつもより真剣だ。華怜のコーヒーはテーブルの上にあるから飲むときはベッドから身を乗り出す。湊は華怜のキャミソールの胸元につい目が行ってしまう。
ただ、湊も青空もいつもより集中して勉強できていた。テストも近かったし、お互いに負けたくないという気持ちもあった。
きっちり3時間勉強をして2時になった。
「時間だな」
「今日はそろそろ帰らなきゃ、おにいも帰ってくる時間だし」
「ああ、送っていくよ」




