第43話
海汰と華怜は車で池袋のサンシャインまで戻って来ていた。地下駐車場に車を止める。
展望台に行くには少し早かったので、水族館に向かった。
海汰も華怜も特に専門的な知識があるわけではなかったが、色鮮やかな魚がいる水槽の前で華怜の足が止まった。
「なんだ、華怜ちゃんはこういうのが好きなのか?」
「ん、なんていうか、今日一番落ち着くなって」
「ああ、そっか、初めからここに来ていれば良かったかな」
「んー、そういうわけでもないけど」
「あっちにはペンギンもいるみたいだけど」
「ペンギンさんも観たいけど、この水槽なんか、いいな」
「ああ、ゆっくりしようか」
「うん、ねえ、海汰ちゃん」
「ん?なんだ?」
「ううん、なんでもないよ」
「そっか」
水族館をまわり終わった二人はそのまま展望台へ向かう。エレベーターも幻想的な雰囲気の演出がされている。
「俺、色んな展望台行ったけど、ここの展望台が一番好きかな」足元には東京の夜景が見える。
「うん、綺麗だよね、ここ」
「華怜ちゃん」
「ん?なに」
「別れようか、っていうか、多分俺たち付き合ったこともないと思うけどさ」
「あ、」
「俺は華怜ちゃんが好きだし、結婚するなら華怜ちゃんだと思う、でも今付き合わなくてもいいと思う、最後にはきっと俺のことを好きにさせるから、だから、今はただの幼馴染になろう」
「海汰ちゃん、ごめんね、私が言わなくちゃいけないことなのに、全部言わせちゃったよね」
「いや、いいんだ、戦略的撤退というやつだよ、華怜ちゃん」
「そっか・・・」
展望台から、3階まで降りてレストラン街に行く。華怜の食べたいものを付き合うと言うとオムライス専門店を選んだ。
「そう言えば、いつかもここに来たよね」
「そうだったっけ?華怜ちゃんとはたくさんデートしているからね」
夕食を終えて帰る頃には夜8時半を回っていた。




