第22話
「そっか?ありがとう」
「それより、眠れる?私はさっき寝たから全然眠くないんだけど」
「ああ、それな、俺もあんまり眠くない」
「真っ暗な部屋で健康な男女が二人きりだとやることは決まっているよ、お兄ちゃん」
「ここには三人いるから、変なこと言うなよ、お前は」
「てへ」
「なにが、てへだ」
「動画観ようよ、イヤホンつけてさ」
「ああ、そういえば二人で観るならタブレットのほうがいいだろ、机から持ってきてくれ、音は出さないようにな」
「はーい」華怜が机の上からタブレットを持ってくる。
「何見る?映画?アニメ?YouTubeとか?」
「そういえば、アニメの映画観たかったんだよ、ロボットの少女と男の人の恋愛ものみたいなやつがあって、名前なんだったっけな」
「ああ、あれか、たしか検索したら出てくると思うぞ」
湊がタブレットを操作して映画を検索する。花束を持った少女のイラストが出てきた。
「これだよな」
「そうそう、これこれ」
二人はワイヤレスイヤホンをそれぞれ片方ずつ耳にして映画に集中する。
「ねえ、お兄ちゃん、この映画みたいに世界が滅んじゃうなんてことあるのかな?」
「どうだろう、核戦争か、毎日学校に行くしかない俺たちにとっては遠い話だけど、もしかしたら、誰かが、核兵器のボタンを押してしまうなんてことがあるのかもしれないな」
「そうなったら、お兄ちゃんやお姉ちゃん、海汰ちゃんも死んじゃうの?」
「ああ、みんな生き残れないかもしれないな」
「嫌だよ、そんなの、なんでそんな兵器が世の中にあるの?」
「どうすれば効率よく人を殺せるか、そんなことを大真面目に研究している天才たちが世の中にはいるんじゃないかな」
「なんで?人を殺すのはよくないことじゃないの?」
「ああ、良くないことだな、それでも、戦争になってしまえば、そんな当たり前のことすら、覆ってしまう」
「おかしいよ、なんで?人を殺して、自分の国は大丈夫なんて、そんなこと、その憎しみが自分たちに降りかかってくるに決まっているよ」
「ああ、憎しみの連鎖、恐怖の連鎖、それが断ち切れなければ、いずれはこの映画のように人の世界の終末が訪れてしまうんじゃないかな」
「そっか、そっかぁ」華怜は少し考え込んだようだ。




