第2話
3人は7時過ぎには冨永家を出た。ゆっくり歩いて高校に通うのが日課だ。華怜の寝坊がなければの話だが。
「ねえ、今度の日曜日海汰ちゃんがバイト休めるって、4人で新宿に行かないかって」
「日曜日かあ、どうする?青空」
「うーん、日曜日ねえ、どうしようか?湊」
4人は楽しいのだが、いつも海汰におごってもらうことになり、湊・青空カップルからするとどうしても遠慮がちになってしまう。
「まだ、火曜日だし、木曜日までに決めるってLINEしておいてよ」
「らじゃーです、お兄ちゃん」
華怜は湊の左側にいるが、右手を恋人つなぎして、べったりくっついている。器用に左手でスマホをいじって海汰に送信しているようだ。
青空は湊の右側で少しだけ距離を空けて歩いていた。
「華怜、歩きスマホは危ないよ」
「前はお兄ちゃんとお姉ちゃんが見てくれているから安全運転なのだ」
「こら、華怜、俺を便利ツールのように使わないように」
「その代り、今度、部屋で水着見せてあげるから!この前ママと一緒に行って買ってきたんだ」
「その代りも何も見せたくてしょうがないんだろうに」
「じゃあ、生着替え付きにする?」
「こらこら、お姉ちゃん許しませんよ」
「えー、そうなの?」
「だめです」
「はーい、生着替えは海汰ちゃんの前だけにします」
「おにいにならよきよき」
「あー、なんか海汰兄ちゃん、二人に信用されている気がするなあ」
「湊は、華怜とくっつきすぎなの」
「愛し合っているからしょうがないよね?お兄ちゃん」
「あ、ああ、まあそう言われたらそうか」
「湊、流されやすいんだから、ほんとに、もう」
まあ、まあと青空をなだめているうちに、高校に着いた。華怜は1階、湊と青空は2階の教室になる。別れる直前に、華怜が寂しそうな顔で湊を見つめる。
「お昼休みは、食堂で3人一緒に食べられるからな、少し我慢してくれ」そう、華怜に優しく声をかける。
「はーい」少し元気になり、手をほどいて自分の教室に行く華怜。湊と青空はそれを見送ってから、自分たちの教室に向かう。