第131話
何回目のチャレンジになるのか、1000円は使った頃、ようやくぬいぐるみはポケットに落ちてくれた。
「おー取れた!」
「取れたね!湊!」ハイタッチをする2人。
ぬいぐるみを抱えて歩く、青空が可愛かった。写真を撮って華怜に送り付ける。「今日の戦利品(お土産)だ」と打ち込む。
華怜からは、デートしてないで早く帰ってきてとの返信が来る。
青空がもう帰ろうかと言い出す。
「え?もう?まだ早くないか?」
「ううん、華怜が待っているし、帰ってあげようよ」
「そうか、優しいな、青空」
「華怜は、私にとってはいつでも大切な妹だから」
「まあ、そうだよな、今度ちゃんとしたデートに連れて行くからな」
「うん、期待しているよ、湊」
2人は池袋から歩いて滝野川にある冨永家へ。途中ちょっと雨が降ってきたが傘をさすほどでもなかった。
それでも、少し足早に歩く。
「ねえ、湊」
「なんだ?」
「私、湊と華怜と3人で結婚してもいいよ」
「え、青空、そんなこと考えていたのか?」
「だって、華怜は多分湊のことしか考えられないよ、生きている限り」
「青空はそう感じるのか?」
「うん、私、生まれてからほとんど湊と華怜を見ているから、さ、分かるんだ」
「そういうのって、どうなんだろうな」
「別に、3人が良ければ誰にも何も言われないよ、法的な手続きを取るわけじゃないし」
「3人だけの世界か」
「うん、そう」
「青空はそれでいいのか?」
「私はそれでいいよ、華怜のこと好きだし、湊のことを独り占めしたいとか思うけどさ」
「まあ、俺たちがそれぞれ稼いで、自立して暮らせば、周りから何か言われることもないよな」
「うん、そうだよ、湊」
「そんな方法があるのか、考えてもいなかったよ」