第13話
話しているうちに、料理が運ばれてきた。
華怜はナポリタンに入っているピーマンを湊の皿に入れていくところから食事を始める。湊は今更なにも言わないが、少しだけまわりの目を気にしていた。
食事が終わると丁度予備校の授業に間に合う、いい時間だった。
「終わったら、下の自販機のところで待っているからね、お兄ちゃん、お姉ちゃん」
「ああ、何かあったらLINEする」
「じゃあ、またあとでね!」
予備校の授業は10人規模のクラス制だった。録画もされているため、質問は授業終了後に行うことになっている。予備校の授業は学校の授業に比べると格段に面白いし、理解も進む。たっぷり3時間授業を受けて水曜日の勉強は終わった。
華怜のクラスのほうが15分早く終わるため、1階の自販機のところでミルクティーを飲みながら時間をつぶす。動画サイトなどを観ているが全然面白くない。海汰にLINEを送ってもバイト中なのか返信はない。
予備校の広いロビーには、他に生徒もいないようだ。
そろそろ、時間かなとエレベーターのほうを見ると、湊たちが勉強していたはずのフロアで止まっている。
エレベーターが降りてくるのをじっとみつめていると、湊と青空が仲良く降りてきた。
「おつかれさま!」言って湊の腕にまとわりつく。
「はいはい」華怜のことが少し可愛く思えた。
「帰ろう!お兄ちゃん、お姉ちゃん」
「ああ、だな、さすがに疲れたぁ」
「疲れたよ、私と華怜は初日なんだからね」
「そうだったな、腰くらいもんであげようか?」
「湊にされると、なんか変なことされそうだからなぁ」
「そっかぁ、まあ、いいけど」
「湊、とにかく帰ろう、今日は、もうきつい」
「今日はバスで帰ろうか?お姉ちゃん」
「そうね、そうしようか、華怜」
「俺もバスで帰るぞー」
「うん、お兄ちゃんもね」
池袋駅東口の大通りを出たところにバス停があり、滝野川方面へはかなりの本数が出ている。その中の一本に3人は乗った。帰宅のサラリーマンでかなり混んでいる。
3人は乗客の圧力を全身に感じながら10分ほどバスに乗って最寄りの停留所で降りた。