第12話
「そういえば今日は予備校の日だね、お兄ちゃん」
「ああ、そうだな。一日長いわ」
3人の通う予備校は池袋駅前にあった。いつも3人で歩いて通っている。この日の昼食は、3人にしては珍しく、あまり会話もなく黙々と食べていた。途中、華怜が自分の嫌いなプチトマトを湊に「あーん」して食べさせたくらいだった。
午後の授業も湊と青空は真面目にノートを取っていく。2人の席は最前列窓際と一つ隣の席だ。目が悪いわけでもなく最前列の必要はなかったが、人気のない最前列だったら隣にいれると考えてそこを2人で希望した。
日本史、数学、英語といった順番で午後の授業は流れていく。
7時間目が終わると、いくら勉強熱心の2人でもさすがに開放感があった。
1階の下駄箱で華怜と合流して、3人で予備校へ歩き出す。
「華怜は予備校行っても寝ているんじゃないか?」
「お兄ちゃんひどい!ちゃんと授業聞いているよ」
「お前、勉強しなくても学年トップじゃん」
「勉強していますー、この前もしていたでしょ?」
「んー、していたっていうのかな?雑誌を読んでいるくらいにしかやってなかったような」
「それが勉強なんですー、勉強の仕方はなんでもいいでしょ?」
「まあ、結果出ているし、文句を言えるようなところはないけれども」
「湊、予備校の前にご飯食べていこうよ」
「あ、そうしようか、どこがいいかな」
「パスタは?湊」
「パスタいいねえ、お姉ちゃん」
「そうだな、たしか池袋駅前の地下になっているところにあるよな」
3人はパスタ屋へと向かった。
お店に着いたのはまだ夕方ということもあって、店内はすいていた。ディナータイムが始まったばかりといった頃か。
青空はカルボナーラ、華怜はナポリタン、湊はペペロンチーノを頼んだ。
お店には、クラシックのようなピアノ曲が流れている。4人掛けのテーブルを青空と華怜が隣あって座って、湊は2人分の席を占領している。
「昨日もおにいは夜中だったよ、帰ってくるの」
「海汰ちゃん、ほんと頑張っているよね」
「海汰兄ちゃん、まだ1年生なのに、バイトばっかりで大丈夫かな?学部の勉強もけっこう大変って聞いたけど」
「うーん、おにいは勉強に関しては、多分問題ないと思うけどね」




