第117話
「そうだよね、湊っていつも迫ってくるからなー」
「健康な男子だから」
「まあ、健康だよねえ、お兄ちゃんは」
「なにか言いたそうだな、華怜」
「べーつに」
「ま、毎朝元気なのは別に生理現象で、華怜に欲情しているわけではないからな」
「へー」
「ちょっと華怜、その微妙な反応で俺を誘導尋問するのはやめろ」
「はいはい、ごめんね、お兄ちゃん」
「いつか襲ってやる」
「いつか襲われちゃうから」
「こらこら、変態兄妹、何を言っているの」
「いや、だって華怜が」
「だって、お兄ちゃんが」
「変なこと言ってないで、そろそろ勉強に戻ろう」
「了解」
「はーいお姉ちゃん」
3人はまた、さっきまでの配置に戻って勉強を再開する。
華怜は来週からのクラス変更に伴って送られてきたテキストを爆読みしている。パラパラとめくっているだけのようだが、かなり深い所まで記憶していく。
湊と青空は土曜日の模擬試験に向けて英語をじっくり進めていく。湊はときおり、青空の方を見る。美人だ。真剣に英語のテキストに目を走らせている姿が絵になる。たまに、視線が合う。集中しなさいというような顔つきであしらわれる。その顔もまた、大人っぽくてきれいだ。
外の雨音が少し激しくなってきたようだ。もう7月も後半だというのに涼しい。エアコンはドライ設定で運転している。
華怜がベッドの上から足を伸ばしてきて、湊の肩にぶつけてくる。振り返ると、綺麗な足が目の前にあった。お行儀悪いぞと、足をベッドの方に戻す。
華怜は膨大な量のテキストを一巡したらしく、さすがにだいぶ疲れているようだった少し、目を閉じている。こんな勉強法で学年トップの成績が出せるのだから、本当にすごい能力だ。
ただ、華怜でも、模擬試験の全国順位は1位が取れていなかった。それでも一桁だが。
夜の8時になり、湊からシャワーに浴びることになった。お風呂へ向かい、15分くらいで上がってくる。
その後、青空と華怜が2人でお風呂に入る。こういうところは本当に仲が良い。
また1時間コースだなと、湊は英語の勉強を続ける。




