第113話
「でもさ、お兄ちゃんは本当の本当は私を選ぶんじゃないのかな?」
「うーん、どうなんだろうな、今はよくわからないな」華怜の髪の毛をなでる。
「ねえ、ぎゅうってして」
「ああ、分かった」華怜の体をぎゅっと抱きしめてあげる。
「私、生まれてきて良かったって思えるよ、お兄ちゃんがいてくれるから、勉強だってさ、頑張れるんだ、お兄ちゃんが見ていてくれるから、私にとってはお兄ちゃんが全てなんだ、この世で唯一価値があるもの、なんだよ」
「そっか、華怜にとってはそうなのかもしれないな」
「そうだよ、だって、お兄ちゃんだから」華怜も湊の体を抱きしめる。これ以上ないくらいぴったりと体を密着させる。
暗い湊の部屋で、2人だけの時間が流れる。今何時なのかも分からない。雨の音は激しく聞こえる。今なら雷があっても怖くない、華怜はそう思った。
二人は優しいキスをする。何度も、何度も。そのうちに華怜の声が少しずつ途切れていく。眠くなってきているようだ。
湊は華怜のことをぎゅっと抱きしめてあげる。華怜は幸せそうな顔をする。
だんだんと反応がなくなってくるが、それでも湊のシャツは掴んだままだ。
湊が、おやすみと伝えるが、華怜はもう眠っていて反応がない。
華怜が寝たのを確認してから、湊もまた眠りについた。
7月23日木曜日、昨日からの雨が降り続いていた。
「おはよう、湊、華怜」 青空はチェック柄ミニのプリーツスカートに白いペイントTシャツといったコーディネートで登場した。
「ん?今何時?」
「もう10時だよ、いつまで寝ているの?そんなにくっついちゃって」
湊と華怜は密着したままだった。
「あ、おはよう、お姉ちゃん」
「おはよう、そろそろ起きなさい、華怜」
「お兄ちゃん、おはようのキスして」
「だめだ」
「なんで?お姉ちゃんがいるから?」
「それは、そうだな」
「そっかあ、そうだよね」少し声が小さくなる。
「とりあえず、俺は着替える、華怜も着替えて来い」
「うん」華怜は大人しく自分の部屋に戻る。
湊が部屋着を脱ぐと、細身で筋肉質の体が青空の目に入ってくる。
「わあ、なんか、色っぽいよ、湊の体」




