第11話
3人が朝食を食べる時間には、冨永家の両親はもう家から出ている。母親は毎日3人分の料理は作っておいてくれていた。
制服に着替えた3人が食事を済まして、学校へ向かうと、もう雨はやんでいた。
いつものように、湊の左に恋人つなぎをして歩く華怜と、湊の右に少しだけ距離を置いて歩く青空。雨が上がった後のジメッとした空気が3人を包んだ。
「あっついね」セーラー服をばたばたさせる華怜。
「あー、ほんとに」
「ところで、お姉ちゃん、もしかしてやつきた?」
「あーきたきた、華怜も?」
「うん、うつったよー」
「えー、華怜のほうが先だったんじゃないの?」
「かなあ?同時?」
「朝起きたらかなあ、私」
「お兄ちゃんが刺激するからだよ」
「え。俺の責任ですか?」
「いつも隙あらば狙っているんだもの」
「そんなことはないぞー」
「ありますー、よね?お姉ちゃん」
「んーかも?」
「ほらー」
「バカなこと言っているうちに学校着いたぞ、またお昼な」
「うん、また、お昼ね!」
華怜が1-Aに吸い込まれていくのを見送ってから、湊と青空は自分たちの教室へ向かう。途中何人かのクラスメートと挨拶を交わしていく。
2人は、午前中の授業から集中していた。今日は予備校がある日だから、時間も長く、夜9時半までみっちり勉強のスケジュールが入っていた。ただ、それは華怜も同じだ。
4時間目の授業が終わると同時に華怜からLINEが届く。食堂で待ち合わせをして先に席を取っておいてもらう。