第5幕 迎え称えんと欲すれば
【ストーリー】
「その程度の問なら今すぐ答え、指示してやろう。鬼を狩れ。」
悶々と自問自答を続け、僕は鬼のこと、桃太郎のこと、そしてこれからのことを考えていた。
だが、いくら考えたとて道が開けるわけじゃない。そして鬼は待ってなどくれはしないのだ。
「おばあさん」に出会い、僕の前にある扉が開かれる。様々な断片がつながった時に僕は、目標を定める、選択する、何かを決断することが出来るのだろうか。
今は前を見て、ハンドルをしっかりと握らなければならないのかもしれない。
僕らのレースはまだ終わっていない。
ゴールの先も、この道はあの青空の先までずっと続いているのだ。
※注 幌谷が運転しているのはゴーカートですが、レーサー小説ではありません。
【登場人物】
幌谷ビャクヤ(ホロヤ・ビャクヤ):主人公の大学2年生。
妄想、こだわり、無駄な知識の独白が多いのは精神的現実逃避。
中学二年の時、母との死別を切っ掛けに「桃太郎の転生者」として覚醒。しかし精神的に未成熟だったことから、母の死という哀しみと「覚醒」そのものを心の奥に封印していた。
一連の鬼との戦闘を経て、仲間を救いたい思いから過去の「僕」を受け入れ、そして再覚醒。
消極的だったが、やっと自ら前に進もうと決断する。
男性雑誌のキャッチコピーにつられやすい。
軒島ニコナ(ノキシマ・ニコナ):「狂喜の魔犬」の転生者、私立中学2年。
武術全般が得意で近距離戦担当。喜々として鬼を蹂躙するのは「狂喜の魔犬」の影響が色濃く出ているから。だがウズウズやミスミと違い命を奪う経験がなかったため、また自身の死を潜在的に経験したことから、戦闘に対する覚悟の足りなさを感じていた。ヤチヨと会ったことと、もともと楽天的な面が幸いし、成長する兆しが見えてきている。
学校生活はそれなりにこなし、ひよりんと琴子という親友がいる。
スポーツシューズ以外は持っていない。
佐藤ウズシオ(本名不明):「冷酷の魔猿」の転生者、フリーター。
ダガーナイフ2刀の他、刃物全般(主に調理道具)を使う。近中距離戦、防御担当。覚醒前から命を奪うことになんの感情もわかない。感情の欠落が影響しているのか「冷酷の魔猿」との融合率が他の二人より高く、三面六臂の猿を自在に操ることができる。気配を消す能力が向上している。
元暗殺者で、壇之浦を討ち損じたのをきっかけに笠子組の保護下で活動する。ことあるごとに主人公の周りでアルバイターとして出現するが、本当にバイトしているのかは謎。
この作品唯一のコスプレ担当。
雫ミスミ(シズク・ミスミ):「静寂なる魔鳥」の転生者、幼馴染。
銃器全般(弾は豆)を使用する遠距離戦、支援担当。索敵能力がずば抜けているのは「静寂なる魔鳥」によるもの。また射撃の命中精度が大きく向上している。
対鬼組織に所属していることから、鬼との戦闘経験、情報等に一番精通している。組織人であるため独断で動くことは少ない(情報公開等)。必要以上に主人公の日常を監視している。まさに諜報員。
嫌いな食べ物はナスです。78%
浦島リュウジン(ウラシマ・リュウジン):鬼狩り一族の末裔、高校2年。
浦島家現当主の次男坊。浦島家は、鬼狩り一族だった山柴家の武闘派集団『裏柴』が独立したてできた分家。兄が鬼との戦闘で半身不随となり戦線から離脱したことから、「俺がやらなきゃ!」君になっている。戦闘に実効力の無い本家に対して不満を持つ。
見た目が中学生っぽいのもさることながら、発言も行動も中学生男子レベル。でも転生者達に引けを取らないほどの戦力を持ち、刀術に長ける。
愛刀は「白魚改・二〇三」。
山柴イチモンジ:「おじいさん」と名乗る世捨て人。
「対鬼刀・柴刈乃大鉈、またの名を『宝刀鬼殺し』」を主人公に与えた。
神出鬼没なうえに、なかなか言動がファンキー。
千条ヤチヨ:「おばあさん」と呼ばせない幼女。
花咲八千代学院初等科(小学)4年生にして、W&Cの最高経営責任者。
サクヤ:常に日傘をさす黒髪の女学生。
幌谷曰く「神のSラインを持つ完全なる曲者」。度々、幌谷達の戦いの場に現れる。
体重45kg前後、身長は160cm未満、靴のサイズは23cmジャスト。(※幌谷調べ)
壇之浦ヨウコウ(ダンノウラ・ヨウコウ):主人公の元父親。
暴力団関係者、つまりはヤクザ。ひょうひょうとした喋り方をするが話の運び方(交渉)は上手い。
主人公が未就学児の時に離婚。母親が亡くなってからは時折、金銭的援助を行っている。
千条家と協力関係を結ぶことで組織内での地位が大きく向上している。
笠子組若頭。
幌谷カナデ(ホロヤ・カナデ):主人公の姉。27才独身。
雑貨屋のオーナー兼店長。仕事だけでなく家事全般もできるが料理は苦手。唯一お稲荷さんを作るのは得意でオイナリッド製作者。主人公のことを「はーちゃん」と呼ぶ重度のブラコン。異常なほどの被害妄想&仮想マダムに対する敵対心は弟に対する愛。さすが同じ姉弟。
おっとり系なのにしっかり者と評判です。
澄河ユイ(スミカワ・ユイ):主人公の1年先輩で憧れの人。
オノマトペ研究会(という名の読書同好会)に所属。洋書の原書を好んで読む才女。
前髪がアホ毛になるのを気にし、いつもヘアピンをつけている。気遣いの出来る優しい性根の子で、両親ととても仲が良い。
本を読みだすと周りが見えなくなるタイプ。
【組織】
※本編では詳細に語られていない設定です
・山柴財団(山柴家)
元家電会社「山柴(山柴電器)」を主軸とした財団。現在は表立った活動は行われていないが、財界、政界と広範囲に人脈がある、むしろ一族が要職についている。
「山柴」がM&Aされる前には、対鬼養成所「山柴義塾」を裏で運営していたが、実態としては昔と違い一族の者で鬼狩りができる者は少数。
ちなみに「浦島家」は分家であり友好関係(主従関係)にあるものの、財団には含まれていない。
・W&C(ウオッシュ&クリーン)
世界中に支社を展開するアメリカの一大洗剤メーカーで、山柴をM&Aして日本でも巨大企業となった。実際は逆で千条家に買収されている。
あくまで千条家(千条ヤチヨ)が裏で動くための隠れ蓑。その目的は鬼討伐のための資金源、ネットワークの構築。そして対鬼兵器の開発(主に豆鉄砲)と人材育成。
ちなみに千条家が表向きに運営しているのは「学校法人・花咲八千代学院」と、宝鏡カグヤが所属する「花咲芸能事務所」など。
・笠子組
古くは命を救われた7人の博徒達が、その恩に報いるため始めたとされる義侠団体。地域密着型で、主な生業は賭博場、的屋、繁華街の地回りなど。「降りかかった火の粉は全力で払う。」というスタンスなため、積極的な勢力拡大は図っていないが、ちょっかいを出した他の団体がその都度、壊滅させられるため、徐々に勢力、影響力は広がっている。現組長は今どき珍しい任侠道な人。高齢のため近々、若頭の壇之浦に代を譲ろうと思っている。
壇之浦が千条家と取引するようになって以来、裏社会での知名度が上昇中。
【鬼】
半鬼:鬼化したての鬼。
鬼化の元凶である鬼門をつぶせば人間に戻れる可能性がある。
見た目は人と変わらないが自我を失い狂暴化。戦闘能力、耐久力も人間以上。
餓鬼:完鬼になり切れなかった劣化型。
鬼化に身体が追い付けずに変化を遂げたがために、人間より少し大きいぐらい。
完鬼になりきれなかったとはいえ半鬼よりは強い。そして数が多い。
完鬼:完全に鬼化した鬼。
鬼門をつぶしても人間に戻ることはない。
見た目は完全に童話上の鬼と同じ。通常の人間レベルで倒すことは無理。
蛙水(カワズミズ):中鬼。
見た目はスーツに身を包んだ営業マン。口調は慇懃無礼。
鬼化するとインパラの角が生える。ボールペンで戦うが、触れずに相手にダメージを与える。
課長やマネージャ等、肩書がいくつかあるらしい。
兵跡(ヒョウゼキ):氷鬼の中鬼。
アーミー調ハーフコートに身を包む。元キックボクシング世界王者にして立ち技最強とまで言われた男。
鬼化すると水牛角が生える。氷を操り攻守に使う。
雨早川(アマハヤカワ):中鬼。
山羊の面をつける謎の女。ダンシング狂人。口数が多くヒステリック。
鬼化すると山羊の短い角が生える。カミソリのような紙吹雪を操る。
荒渡(アラワタリ):高鬼の中鬼。
「自分、底辺なんで」が口癖のパンクな出で立ちの男。
鬼化すると羊の巻き角が生える。一定区画を「見えない水」で水没させる。また体表を「見えない水」で覆い防御に使う。
【その他】
娘々太郎:某遊園地のネコ型マスコットキャラクター。性別不明。
腕々マッスル:某遊園地の「腕力ですべてを解決する正義の味方」という設定の裏キャラ。
見た目は、顔がリアルなシュナウザー犬で体がボディビルダーという、シュールな覆面レスラー。
トンカツ屋の幸子さん:架空アニメ「がんばれ!ミシュール先生!!」に出てくる。
宝鏡カグヤ:W&Cと専属契約を結ぶアイドル。高校生らしい。
副部長:オノマトペ研究会の創設者。アンパンが好き。
部長:オノマトペ研究会の部長。そして師範レベルの書道家。
田村:笠子組の構成員。
対抗組織から幌谷姉弟の護衛を秘密裏に行っている。そして佐藤ウズシオの連絡担当。
見た目はまったくヤクザっぽくない。ハンチング帽がトレードマーク。
実はウズウズに毎回、アルバイトを手配している。
島:笠子組の構成員。
運転ばかりしているが壇之浦の片腕。けっこう厳つい。
只の部下というわけじゃなく、壇之浦のことを心底慕っている。男が男に惚れるってやつ。
ビール党。ビールなら無限に飲める。