怖い話
社会人になり数年、ぼちぼちと仕事をして後輩も増えてきた私のもとに友達の穂乃花から連絡が入った。
『やっほー、元気?お茶しない?暇なとき教えてー。』
久々に入った連絡に何か合ったのかと勘繰ってしまうがお誘いにのり、返事を送る。
『土曜は一日空いてるよ。』
それから、どこで待ち合わせるか等を話して、楽しみにしながら残りの日数、仕事に勤しんだ。
お茶会、当日。
店に入ると穂乃花は、先に来ていた。
久々に会う穂乃花は、記憶のなかとそれほど変わっていなかった。
結婚して、子どもがいると言われれば、「あぁ、お母さん頑張ってるんだ」って思うぐらいで、いい感じに落ち着いていた。
「久しぶり!元気だった?」
なんて話ながら、キャイキャイと飲み物を注文する。
近況報告をお互いにしながら、運ばれてきた飲み物を飲む。
しばらく話していてふと、突然のお誘いの訳を尋ねてみる。
「そう言えば、今日は突然どうしたの?なんか合った?」
そう問い掛けると、穂乃花はちょっと困った顔をする。
「あっ、べつになんかないと誘っちゃいけないとかじゃなくて。何て言うか心配って言うかなんと言うか……」
ゴニョゴニョと話ながら、あわてて否定すると穂乃花は、笑いながら返事を返す。
「大丈夫。私も突然誘っちゃって、ごめんね。ちょっと聞いてほしい話があってさっ。」
ほうほう。
「話ならいくらでも聞くよ。何々?深刻なはなし?」
ちょっとシリアスな雰囲気出した方がいいかな?
「うーん、なんと言うか…怖い話的な?とりあえず聞いてくれる?」
怖い話?嫌いじゃないけど。
幽霊は、みたことないよ。
「子どもがいると『ママ友』って存在がでてくるでしょ?でさ、同じクラスにちょっと変わった人がいるんだ。」
どんな風に?
「なんかさ、強いんだよ。私がみんなの代わりに意見を出してあげる!!みたいな感じで話すんだよ。苛烈って言えばいいのかな?しかもさ、それを特に気にしてる訳じゃないんだよ、皆。話の流れで相づちをうったこととかを皆言ってる!って、担任に怒鳴り込んじゃう感じなんだ。」
中学の時にいたな、そういう子。
一人でもいったら、皆言ってた!って騒ぐ子。
「言った後は、私はいってやったぜ!って、正しいことをしてると思ってるの。火に油を注ぐのが得意なんだよね。しかも、うちの子が~みたいなことを言うんだけど、見てるとそこまで出来る子じゃないんだよ。まぁ、ここまでだったらただのモンスターペアレントですむんだけど…」
ん?まだあるの?怖い話?
「ここからが本題なんだけど。」
ま だ 本 題 じゃ な い 、だ と ! ?
「でね。そのお母さんが同じクラスになると、連絡先をめっちゃ聞かれるの。しつこいぐらいに。理由としては、最近は連絡網を作らないし、お母さん同士の繋がりが余りないからみたいなことを言うんだ。クラスのグループを作って連絡を一気にするんだけど……」
へー。連絡先知られたくない人にとっては拷問だね。
てか、教えたの?
「余りにもしつこいから1回、クラスグループに入ったの。連絡が入るタイミングは、雑談みたいなのから明日行事があるよね、とか持ちもの何とかがいるよ、とか。その中で、旦那の職業とか年収、ボーナスの日とか聞いてきて…」
え、なにそれ。怖い。
「さすがに私はスルーしたけど、教えちゃった人がいてさ。そしたら、ボーナスの日に『○○さんの旦那さんがボーナスの日です。今日はみんなで美味しいものを食べるのかな(^ー^)』って連絡が入ったの。」
マジで?昼ドラみたい。
「さすがにドン引き。何だかんだ理由を付けてそのグループを退室したんだ。」
正解だと思う………
「でもさ、昼ドラみたいに陥れてやる、とか意地悪してやる、とかの意図があれば良くはないけど、分かるんだよ。その人は、悪気がないと言うか、本当に雑談の一部みたいな感じなの。」
うぇ。悪意がない悪意ほどたちの悪いものはないな。
「それを知ってどうするわけ?とか、それをクラスほぼ全員の親に伝えてどうするの?とか思うんだけど、その人にとっては『雑談』だから、深い意味はないんだろうけど。怖くない?」
怖い。めっちゃ怖い。
やっぱり幽霊とかより、生きてる人間のが怖いかも。