どうしても、会えない
投稿2本目です! どうぞよろしくお願いいたします!!
♀12月31日
ある物理学者がテレビで言っていた。『パラレルワールドは、計算上実在する』。
私たちのすぐそばの、ただの空間でしかないところに、別の次元の、もうひとつの世界があってもおかしくない、ということが、科学的に証明されている。
見えないが、ある。
私も、そういう気がしている。
ヨウイチと出会ったのは、バイト先だった。ファーストフードのバイト募集で同時期に採用になって、バイト初日が同じ日だった。その後もシフトが重なることが多かった。私はカウンターで、ヨウイチは厨房で、まるでコンビのように働いた。大学は別だったけど、学年も年も一緒だった。最初はなんとも思っていなかったけど、何度も顔を合わせていくうちに、なんとなく好きになっていった。あの時は純粋にときめいていたけど、今冷静に考えると、あれは“広告”と一緒だった。何回も流れるコマーシャルの商品をつい買ってしまうというやつ。私がヨウイチを好きになったのは、“刷り込み方式”だった。ヨウイチも同じ。私を好きになったのは、刷り込みだ。恋と勘違いした、悲しい刷り込みだった。
♂9月10日
クミの後ろ姿ばっかり見ているな、と気づいたのはいつだろう。ポテトやらチキンやらを油に落とし、カラカラとはじける音を聞きながら、俺はついカウンターのクミを見てしまう。愛想はそんな良くないのに、頑張って声上げて接客してるところとか、暇な時、足首をぐりんぐりん回すとことか。で、客が来たら、すぐに足をピッと元に戻して真面目な顔して接客するところとか。なんか面白い奴だな、って思って、目で追うようになった。先輩のナカニシ(こいつに“さん”はいらない)が、クミのこと顎で指して、
「どうよ?」
って言ってきた。
俺が目で追っていることがバレてたら、めんどくせーなと思い、
「なんすか? どうって」
そっけない返事をすると、
「あの子、俺とよく目が合うんだよ」
と言った。は? 見てねーし。俺はずっとクミのこと目で追ってるから知ってるけど、見てねーよ。ムカつきながらも俺は、ここは適当に流す方がいいと判断。
「首凝ってんじゃないですか、彼女」
「夢がない奴だなー、お前は。『えーよく目が合うんすか? ナカニシさんに気があるんじゃないですか~』くらい、言えねーのかよ」
お世辞を通り越して嘘をつけと、こいつは言ってくる。答えが見つからず、黙っていると、
「そんなに見つめんなよ~。まさかお前も俺のこと好きとか?」
とナカニシはぶさいくな顔を乙女チックに装って、俺にしなだれかかってくる。「やめてくださいよ~」と作り笑いで押しのける。ブハハと笑って、仕事に戻るナカニシ。まじでうっとい。
ナカニシとの不毛な会話の後、一瞬クミと目があった。やっぱりあいつは、ナカニシなんかじゃなく、俺を気にしてる。
♀12月31日
付き合い始めの頃が、ピークだった。
ヨウイチは良く言うとクールな性格で、人や出来事やモノと一定の距離を置いていて、簡単に言うと、冷めた人だった。例えば、スタバでお茶しようと、店の前まで来たら、長蛇の列で
「どうする?」
と私が言うと、ヨウイチは、
「列に並んでまでコーヒー飲む奴はあほ」
と言って、マックに向かう。私に意見は聞かない。
当時私はそんなヨウイチをかっこいい、と思っていた。頼れる人、と思っていた。本当は並んででもスタバのラテが飲みたかったけど、ヨウイチの言う“あほ”の仲間になりたくなくて、言わなかった。そういえば、スタバに行ったのは、最初にお茶した1回きりだ。
ヨウイチとの会話は、バイトのことが多かった。ヨウイチはナカニシさんのことをよくしゃべった。いつも近くで働いているからか、いろいろ腹が立つらしい。
「そういえば、私が後ろ向くと、よく睨まれるなー」
と私が言うと、ヨウイチは、吹き出して笑った。
「やっぱ、あいつマジあほだわ」
あの楽しそうなヨウイチの顔。本当はナカニシさんと仲がいいじゃんって、思ったな。
♂9月13日
「方向一緒だったっけ?」
と、バイト終わりに俺はクミに声をかけた。クミが帰るのを見計らい、絶妙なタイミングでばったり出くわした感を必死に醸し出して。
「え?」
「あ、いや……帰る方向、一緒だったよね?」
聞き返されて、内心焦ったけど、1ミリも気づかせないように注意して話した。クミは、
「そうだっけ?」
と言いながらも、俺と横に来て、並んで歩いた。その反応いいな、と俺は思った。
『一緒に帰りませんか?』『はい、そうしましょう』なんて言葉で確認しなくても意思疎通できているような、この感じ。この時、あー俺、この子とつきあいたいって、心底思った……ってか、付き合うわ、たぶん、絶対。
歩きながら、好きなものは何かと聞いた。クミは少し考えて、スタバのカフェラテ、とこっちを見て言って微笑んだ。くっそかわいかった。いやマジで。
「俺も、たまに飲むよ、それ」
“それ”とはスタバではなく、コンビニで買うカフェラテだったが、嘘ではない。スタバはあんまり好きじゃない。150円で買えるものを、並んで400円も出して買うなんて、俺には考えられん。あほだ。でも、
「今度、一緒に行こうか、スタバ」
と、俺はクミに言った。デートするためなら、あほになってやる。
「うん。いいよ」
おー。神さま仏さまスタバさま、ありがとう!!
♀12月31日
脳は言葉の意味をそのまま受け入れる、というのを聞いたことがある。例えば、『好きです』って誰かに告ったとしても、脳は『好き』という言葉だけを受け取る。自分に言われていると思う。ピーマンを見て『嫌い』と言ったら、自分のことを『嫌い』と言ったと脳は思う。だから、いい言葉を使った方が自分のためになる。
私はこのことをずっと忘れていた。思い出させてくれたのは、ヨウイチだ。ヨウイチと話しをした後、いつもどんよりした気持ちになる。ヨウイチが発する、悪口のせいだ。ヨウイチは自分の周りの人、出来事、モノ全てが気に食わない。上から目線で“クール”に文句をつける。私も悪口くらい言うこともある。でも、ヨウイチはそれが長い。悪い部分を永遠と語ってしまう。私はそんな、ネガティブワードのシャワーをずっと浴びるたび、心の調子が悪くなる。
♂9月25日
俺ら、付き合ってるんよな? とクミに聞いてみたくなったけど、我慢した。そんなカッコわりーことできねえし。
バイト終わりに初めて一緒に帰って以来、毎回そうするようになった。早く支度を終えた方が待って、遅れた方が『お待たせ』と言って、2人で帰る。
休みの日にスタバも行った。いろいろしゃべって、でもまだ一緒に居たくて居酒屋行って飯を食った。シフトがほぼ同じだから、休みの日もほぼ同じで、休みのたびに2人で出かけるようにもなった。これは完全にデートだろ。だから俺たちは付き合ってる。言葉で確認するなんてダサい。
だけど、クミがぼーっとしていることが多くなったのは気のせいか? 普通まだアツアツな時期なんじゃねえの? だけどクミはどこか上の空で俺の話を聞いている。マックの窓側の席に座っていたりすると、外ばっかり見ている。
「人間観察、好きなのかよ」
「え?」
「いや、通行人ばっか見てっから」
「そ? ちょっとだけだよ」
「いやいや。まるで新人刑事が人物の特徴を覚える訓練みたいに見てたよ」
「じゃあ、警察官になろーかな」
「超テキトーじゃね? その返事」
俺は努めて明るく言ったから、クミも「そんなことないよー」と笑って返した。本当は、腹が立った。きつく言いそうなのを、頑張って抑えたのだ。
俺の話、面白くないのか? バイトの話つまらんか? でも俺らが共通していることと言えばバイトしかないだろ? 特にナカニシに対するストレスはクミも感じてるはず。なのに何で盛り上がれないんだ。
ナカニシのせいで俺は日々ムカついている。それが許せない。そんなナカニシを雇った店長も腹が立つ。あいつがもっと見る目があれば、こんな嫌な思いをしなくてすむのに。俺の言ってることは間違ってない。だからどうしても言いたいし、聞いてもらいたい。彼女には、俺をわかっていてほしい。俺は、正しいことを言っている。
♀12月31日
「もうその話、やめない?」
聞き流すのがさすがに疲れてきて、思い切ってヨウイチに言ってみたことがある。付き合い始めて1ヶ月くらいたった頃だ。ヨウイチは「え?」と不機嫌そうに聞き返したっけ。あれは、ガストでだったかな。いつものマックじゃなかったのは、ヨウイチがアプリで割引券をゲットしたからだった。
ヨウイチが女だったら、いい奥さんになると思う。やりくり上手の、公園で近所のママ友と旦那の悪口に花咲かせるタイプ。
「もうちょっと楽しいこと話そうよ」
「楽しくねーのかよ」
「う~ん。私、ナカニシさんのことそんなに興味ないし」
「そうなの?」
「そうだよ」
なんで私がナカニシさんに興味があるって思ってたんだろ? そっちの方が不思議だった。
「でもさ、クミにしか話せねーから話してんだよ」
「だけどただの悪口じゃん。彼女に悪口聞かせて楽しいの?」
言ってしまってから、あ、と思った。自分の気持ちをストレートに表現してしまった。当たり障りのない言葉を使うように、いつも心がけていたのに。言い争いとか、修羅場とか、面倒くさいことにならないように、気をつけてたのに、言ってしまった。ヨウイチの顔があからさまに、ムッとした形相に変わっていく。
「じゃあ、こっちも言うけどさ、それだって悪口じゃねぇーの?」
「え? どこが?」
「悪口を言うなという悪口を、本人に言った。俺を傷つけた」
「……」
反論したい気持ちはあったが、納得する部分もないではなかった。確かに、『悪口言わないでくれ』と本人に強要するのは、こちらの一方的な意見を相手に押し付けるわけだから、ナカニシさんの話を聞けというヨウイチと同じなのかもと一瞬思った。でも、私が納得したことをヨウイチに伝えるのは、癪にさわった。だから、私は何も答えないという選択をした。目の前にあった食べ終わったパスタの皿の残ったソースを、アート系の絵だと思って、ただ観察し、沈黙に耐えた。
ちらっとヨウイチを見ると、スマホを眺めていた。何してんの?!って、呆れた。私が頑張ってこのしんどい時間を耐えてるのに、あんたは何してんの?って。
私、ここで何やってんだろ、って、本気で考えたんだよね、あの時。
♂10月20日
結婚してもいいって、思ったあと、早い早い早いって、自分にツッコミいれた。
やっと、クミとセックスできた。付き合って、1ヶ月以上経った今日! 誘おうと思えば、すぐに誘えたけど、遊びだと思われたくなくて、我慢した。それくらい、クミのこと大事に思ってたから。俺は俺を褒めるぞ。ヨウイチ、お前はナイスガイだ!
この日はお互いバイトが休みで、クミの授業が終わる頃に待ち合わせていた。俺は授業をさぼった。今日はホテルへ行くぞと、決めてたから、授業なんか出てられっかい、なんも頭に入らんわい、という感じでさぼった。
俺たちは人気のあるイタリアンに行った。俺が店を調べて、予約していたのだ。こんなことしたのは初めてだったから、クミは驚いていた。俺は、今日はいつもと違うってことを感じ取って欲しかった。今日だけは窓の外をぼーっと眺めないで欲しかった。
イタリアンの店での、会話の内容はあまり覚えていない。唯一覚えているのは、ナカニシのことは話さなかったということ。俺は、この後どうホテルへ誘うかで頭がいっぱいだったから、俺はクミの話にうんうんと頷くだけだった。
食事が終わって、店を出た時、素直にホテルに誘った。クミは照れた顔で頷いてくれた。この日のクミはいつもよりニコニコしてかわいかった。
♀12月31日
初めてセックスしてから、3週間目くらい経った頃からかな。会ったら、すぐホテルに行くようになった。なんとなくそうなった。ヨウイチがそうしたかったんじゃない。私がそうしたかった。だって、セックスしてる間は話さなくていいから。ヨウイチは、待ち合わせているマックで、もっと愚痴を聞いて欲しそうだったけど、私はそれに気づかないふりをした。でももう、セックスする前後の会話もうっとうしくなってきた。そのうち、待ち合わせがホテルの前ということになるかもしれないな、さすがにそれはやばいなと感じて、よく自問自答を繰り返していた。
『これっていわゆる、セフレってやつでは?』
『いや、ただの都合のいい女?』
『いいや違う。私の方が都合よく使ってるんだ。ヨウイチを』
『会話をせず、体だけがほしいのだから』
『私、最低だな』
そういう結論が出てから、急激に冷めたんだよね。ヨウイチとの関係に。
♂12月5日
デートの当日、『ごめん、行けなくなった。体調悪くなっちゃって』と、ラインが入った。キャンセルをラインで済ますって……雑じゃね? そういえば、前回もキャンセルだったな。その時は電話だったけど。でもその前にクミの体の心配しなきゃいけないのか。てか、たぶん生理だろ。会えないくらいしんどいって、どんなだよ。しんどいなら、会って話してるだけでもいいのに。座ってるのがしんどいなら、ホテルのベッドで寝っ転がってるだけでも、俺は幸せなのに。
あー、今日はとっておきのネタがあったのに。ナカニシが、客にキレられて、ビビッて何回も謝り、店長にフォローされて、泣いた話。言いたかったな。超笑えるのに。
そう言えば、クミとバイトのシフトが全然合わなくなったな。前はあんなに一緒だったのに。
♀12月31日
12月23日のクリスマスイブイブに、デートしようって私からヨウイチに提案した。前回ラインでドタキャンして、悪いとさすがに思った。ヨウイチも喜んでOKしてくれた。なんかすごくワクワクした。久しぶりの感覚だった。
私は意気込んでおめかしして、待ち合わせの場所に立っていた。ヨウイチに会うのがしんどいってのは、相変わらずあったけど、やっぱり私たち付き合ってるんだから、彼女として、彼氏を幸せにしなくちゃ、と思った。
クリスマスツリーがめちゃくちゃきれいな駅前。人があふれていて、みんな楽しそうに、みんな幸せそうに見えた。私たちもあの“みんな”に紛れよう。何も考えず、あの仲間に入ろう、と思いながら、ヨウイチを待っていた。
結論を言うと、ヨウイチは来なかった。
時間にはきっちりとした人だったから、なんかあったのかと心配になり、10分経った時、ラインした。『今どこ?』返事もなく、既読にもならない。次は電話した。出ない。15分20分25分……と5分置きに電話した。出なかった。心配が無気力に変わってきた。1時間後、私は帰った。
悲しいとかムカつくとかよりも、寒さの方がきつかったことを覚えている。
♂12月23日
やべぇ……。俺、どうかしちまったのか……。クミと会う日をクリスマスイブだと間違えて覚えていた。クミが駅でイライラして待っている時、俺は部屋でゲームしていた。スマホは機内モードになっていた。機内モードになんて、滅多にしないのに、なぜか勝手に……いやいや俺が設定したんだろうけど、記憶にないままそうなってた。で、ゲームに飽きて、そのまま寝てしまった。寝たのは2時間くらいだったけど、約束の時間からは3時間経っていた。機内モードに気づいて、解除した途端、電話とラインの着信のアラームがピロピロと鳴りやまず、クミの怒りの度数を知らせるかのようだった。俺は、慌ててクミに電話して、謝り倒した。
今までこんなどんくさいことやらかしたことないのに。痛恨の凡ミス……信じられねえ。
♀12月31日
すっぽかされ家に帰ると、ヨウイチから電話があった。必死に謝るヨウイチの声を聞きながら、なんか嘘つかれてると思った。だって、すっぽかしの理由が、日にちを間違えて、知らないうちにスマホが機内モードになってて、ゲームに疲れて寝てしまったなんて、そんな都合のいい状況あるの? って、疑いたくもなる。
これの少し前に、ナカニシさんが、ヨウイチが新しいバイトの女の子と仲良さげにしてるって、言ってたことを思い出し、その子と会ってたんじゃない? と思った。
電話を切ってから、“ヨウイチ、他に女作ってデートすっぽかしちゃった説”が私の中でじわじわと確信になっていった。なんの証拠もなかったし、問い詰めもしなかったけど、女の直感に間違いはない、と思い込んでしまった。
♂12月24日
クリスマスイブの当日の朝に、クミから急に、『会いたい』とラインがきた。俺は本能的にゾッとした。昨日のすっぽかしのことで責められる……という不安の重りが腹の中にどしんと落ちた。それは勘弁してほしい。もうめちゃくちゃ謝ったし。これ以上俺をどんなに絞っても、謝罪の言葉は出てこねー。
……いやいや。会いたいって言ってんだから、素直に会えばいいだけだ。考えすぎだ。あ、聞いてみたらいいんだよ、と俺は自分で自分を励まし、『どこ行く? イブだから、どこも混んでね?』と返信した。
♀12月31日
『どこ行く?』ってラインがきた時は、は? って思った。デート気分出してんじゃねーよ。『イブだから』とか気にしてんじゃねーよ……とムカついた。でも、“ムカついた”ってことは、まだあの時はヨウイチのこと、好きだったんだな。すっぽかされたことも本当は傷ついていたんだな。
私は、『スタバ。ちょっと話したいから』と、“ムカついてます”モードが伝わるであろう最短文で返信した。しかもマックじゃなくて、スタバ。並んでもスタバ。どうしてもスタバ。理由は、私が行きたいから。主導権を握って、新しいバイトの子と、何かあるのか聞き出したかったんだ。
♂12月24日
話したいって、何を? この短い文の中に、殺気を感じる……。こえー。会いたくねー。
と、思っていると、電話がかかってきた……。
♀12月31日
“ムカついてます”モードが、伝わりすぎた。24日。ヨウイチはまた来なかった。今度は本当にすっぽかされた。会いたくないなら、そう言えよ! と、ドタキャン繰り返していた自分を棚上げして私は怒った。『イブだから』とか気にしてんじゃねーよ、と思っていたのに、いざ、イブにすっぽかされると、真っ暗な部屋に閉じ込められたみたいな最悪な気分になった。
この最低な気持ちと、昨日と同じ場所で待ちぼうけを食らっている時間がホント無駄だと身に沁みた。返せ、私の時間。他に好きな子ができたんだったら、そう言え。きっぱりさっぱり別れてやるよ!
なーんて。キレてたなーあの時、私。笑。
♂12月24日
電話は、応募していた新しいバイト先からだった。面接するのに都合の良い日を聞かれ、今から! と答えた。クミとの待ち合わせの時間に、俺はバイトの面接をしていた。
『行けなくなった』くらいは連絡できた。実際は、『自ら行けなくした』んだけど。でも連絡はしなかった。“まあ、いいや。めんどくせー”という心の声に従った。
面接は、合格した。今のバイトは辞める。これでクミとの接点がなくなった。
♀12月31日
イブにすっぽかされてから、連絡するのをやめた。ヨウイチからも来なくなった。しかもバイトも辞めていた。それ聞いた時、私は『そうか』と思っただけだった。『やっぱり』とも思った。これで自然消滅が確定したんだな、と少しだけしんみりした。たった3ヶ月の短い恋愛だった。恋愛と言えるかどうかも怪しいけど。
ちなみにヨウイチとの浮気を疑っていた新しいバイトの女の子には彼氏がいた。ヨウイチとは何もなかった。
バイトが一緒になって、好きかもって思えて、付き合って、セックスして、楽しくなくなってきて、すれ違って疑って、さよならも言わないまま、別れる……。
これって、お互いがお互いのいない世界に移動したようなものだ。私は、ヨウイチがいない世界の住人になった。
パラレルワールドって、こういうことかもって、私は思う。だとすれば、パラレルワールドは、私たちのごくごく身近に存在する。もうそれは日常茶飯事的に存在するのだ。
大晦日だから、今年の出来事を振り返ってみた。はい、これでおしまい。
来年は、同じ世界に住む男と付き合うぞ。
おわり
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
『こんなこと、昔あったな』と思ってもらって、『あの頃より、今の自分だいぶん成長してるやん!』と感じてもらえたら、幸せです!
これからも短編小説を投稿し続けますので、次回も読んでいただけると、嬉しいです!!
本当にありがとうございました!!!