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悪魔達、玩具を呼び出す (1)


あの強烈な入学式の日を一通り思い返したところで我に帰ると、ゆうちゃんは窓の方に顔を向け、ぼんやりとしていた。


泣きすがって愚痴を聞いてもらったのにも関わらず、勝手に思い出に沈みこんで今までゆうちゃんをほったらかしにしていたことに気が付き、慌てて謝ろうとした瞬間、明け放たれた教室の窓から一陣の春の風が迷いこんで来た。


その風は窓にかかっていた真っ白なカーテンを揺らすと、次いで背中まで伸びた真黒なゆうちゃんの髪を揺らした。

淡い午後の日差しを受けたゆうちゃんの長い黒い髪は、驚くほど艶やかな光沢を放ちながら宙を泳ぎ、眩しいほど輝いて見えた。


眩しい長い黒髪を風にそよがせ、切れ長の目を気持ちよさそうに細めているゆうちゃんの横顔は何とも言えず美しく、思わず見惚れてしまった。

あの入学式の日以来、ゆうちゃんは私の天使となっただけでなく、憧れともなったのである。


ああ、私に少しでもゆうちゃんのような美しさと悪魔達に立ち向かえる強さと賢さがあったならどんなに良かっただろうか。

あの美しく性悪な悪魔達と毎日やり合わなければならないのは私なのに、神様はどうして私に人並みのものしか与えてくれなかったのだろうか。

ゆうちゃんのようであったなら、どんなに良かったことか…。



「…どうしたの?」



風が止み、こちらに顔を向けたゆうちゃんの顔が怪訝な表情で曇った。

綺麗な弧を描いた眉を顰めた顔を近づけ、覗き込むようにこちらを窺がう。

そうされて初めて、私の顔がゆうちゃんに見惚れるあまりに、いかに面白いことになっていたかに気付かされた。



「え?!ああ、何でもないよ!!」



まさか、見惚れていたなんて言えるわけがない。

恥ずかしすぎる。



「本当に?何だかすごいアホな顔してたよ」



大げさに手を振って否定する私に向かってそう言うと、ゆうちゃんは悪戯っぽく笑った。

その笑い方はあの入学式の日に見たものと似ていて、また懐古の念が湧いた。



「本当に何でもないから」



あはは、と何とか笑って誤魔化していると、ピンポンパンポーンと呼び出しの放送音が教室の隅に設置されているスピーカーから聞こえてきた。



「生徒会より、呼び出しです。2年A組、安藤結衣さん。至急、生徒会室へ来てください。繰り返します…」



放送はまだ続いていたが、私は耳を塞いだ。

何故ならスピーカーから流れ出ている、いかにも優等生らしいその声は…。



「この声…生徒会長か」



完全に放送が終わったと思えるだけ、充分に時間をとってから耳をふさいでいた手をどかすと、何気ないゆうちゃんの呟きが聞こえた。

次いで、女子の異常なまでのラブコールが各地で上がった。

ゆうちゃんの呟きと女子のラブコールが指し示す人物を思い浮かべると、春だというのに寒気がした。



「ど、ど、どうしよう、ゆうちゃん!龍司からの呼び出しなんてろくな呼び出しじゃないよ!!」


「そうだねぇ。なんてたって、悪魔さんだもんね」


「お願いだから、そんなにのほほんとしないで、もうちょっと親身になってぇ!」



あまりの動揺で半泣きの私に対し、相変わらずゆうちゃんはのんびりとしていた。

そののんびりさが今の私にとっては心底羨ましい。



「うーん…。じゃあ、行きたくないなら行かなければいいんじゃない?」


「それはそうなんだけど、行かなきゃ行かないで後が怖いんだって!今までのあいつらの私に対する嫌がらせの数々…話したでしょ?」


「そうだねぇ」


「ああ!どうしよう!!」



もはやパニック状態の私がゆうちゃんにあたりつつ、ごちゃごちゃと考えていると、教室の扉が勢いよく開かれ、十人ほどの体格の良い男たちがものすごい勢いで私めがけてやって来た。




はじめまして、桐龍朱音です。

今まで悪魔達が活躍する場がありませんでしたが、これから先は増える予定です。

悪魔達が結衣を「玩具」にして「遊ぶ」話もちょいちょい入れていくと思うので、もしも読んでみたい「遊び」のネタがありましたらお聞かせください。

亀の歩みの如く遅く、稚拙な文章ですが最後までお付き合いしてくださると嬉しいです。

良ければ感想などもお聞かせください。

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