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君が戴く世界の明日2

ラブラブが書きたかっただけです。

「レティシア様、お誕生日おめでと!」

「わ、綺麗な花、ありがとう」


 魔族の子どもから花束をもらい、お礼に頭をなでなでする。はにかみながら手を振って街へと戻るその子に手を振り返す。


 椅子に座る私の前には、私への誕生日プレゼントを抱えた皆さんが並んでいる。


「女王様、これお好きだと聞いたので、どうぞ」

「これは……有名老舗店のマドレーヌ!」


 女性からもらったプレゼントのパッケージを見て、興奮する私。


「あれ?ネーデルファウスト様?」

「あ、ほんとだ」


 並んでいた皆さんが、私の椅子の横の床に体育座りをしているレイにようやく気付いた。


「………ふん、今気付いたのか」


 膝の間に顔を埋めた状態で、ぶつぶつ言っている。


「帰ってらしたんですか?いやあ、ネーデルファウスト様はいない時の方が多いから気付きませんでした」


 正直に言われて、レイは更に拗ねたようだ。


「はは、そうか、そうだよな。俺なんかよりレティの方が王に向いてるもんな。いいんだ、俺は目立たないし役立たずなんだ。俺がいない間に、国名が変わろうが、王が変わろうが、人間共と友好条約を結ぼうがいいんだ。うん、この世界に戻って来れてレティといちゃつけるだけで俺は十分満足だ」

「レイ君、なんかごめん」


 仕方なく、その黒髪をよしよしと撫でると、レイが両手で私の手を握ってきた。その手に指が二本足りないのに、きゅっと胸が痛む。


「レイ」

「いいんだ。俺はもうレティのイヌでいい。お前の足を舐め回しながら生きていくさ」


 言いながら、私の手に顔をすりすりと擦り付け、甲をペロペロと舐めて、指先をハムハム甘噛みする。

 その感触にゾクゾクしてしまい、体が勝手に震える。


「やあ、んんっ………あ、はあ、ワンコ、めっ」


 息が上がって堕犬を睨むが、形のいい唇を舌舐めずりして薄く笑う彼は、ヒト前だというのに気にもしていないようだ。

 祭りだというので、レイも普段より豪奢な装いで、観賞するなら最高にカッコいいはずなのに……もうなんかこんな感じで全てゼロにしてる。


 白を基調にして、胸元や裾に赤の差し色のあるドレスを着た私を物欲しそうに見上げて、ドレスの裾に今度は頬擦りしている。そんな彼の衣装は、下は黒で上も黒だけど襟元や袖には白が入っているし、上着の金ボタンや腰に付けた赤い飾り紐、肩に掛かる膝下までの黒い羽織り着は豪奢でいかにも魔王って感じ。


「………仲がよろしいのですねえ」

「まあ、ネーデルファウスト様のあの顔ったら」


 そんな私達を微笑ましく見守る皆さん。

 目が合わせられない。


「ネーデルファウスト様には、イヌであることより重要な役目があるよな?」

「だよなあ」


 私にワインをプレゼントしてくれた魔族のおじさん?が二人で話してる。


「何だ?教えてくれ」


 レイが彼等に割って入る。


「いやあ、そりゃあ……この国の跡継ぎ様を作らんとなあ」

「だな、レティシア様一人では子は作れないしなあ」


「よく言ったお前達……って、俺は種馬か」


 複雑な表情をしてドレスの裾をいじくる彼を置いて、私は皆さんからのプレゼントをありがたく受け取っていた。


 ***************

 ようやく私の前に並んでいた列も無くなり落ち着いたので、私は椅子からドレスを持ち上げて立ち上がると、立てた膝に肘をついて不満げなレイの腕を軽く引っ張った。


「レイ」

「んー?」

「挨拶も済んだし、プレゼントももらったし、今日の王様のお仕事終わったよ」

「そうか」

「だから街のお祭り行こうよ」


 わざと甘えた声で言うと、レイは悪戯っぽい顔を一瞬して立ち上がると私の頬をふにっと摘まんだ。


「………言ってなかったから言うけど」

「ん?なあに?」


 まだ拗ねてるかなとレイを見上げていたら、素早くキスをされた。


「誕生日おめでとな」

「う、うん。ありがと」

「よし、プレゼントを買ってやろう。何がいいかな」


 私の手を欠けた指で握り、レイはやっぱり照れ臭いようだ。

 少し笑って、一緒に街へと下りていった。


「ね、私も後でレイにプレゼントあるんだ」

「何?レティ自身がプレゼント?」

「そうじゃなくて、後の楽しみだよ」


 こんなふうにまた一緒にいられるのが不思議な感じで、お互いを意識すると、なんだかこそばゆくて恥ずかしくて嬉しい。


「なあレティ、俺は……レティといるだけで十分だ。だからお前が王をかってでるなら、俺が助けるまでだ」

「レイ君……」


 握られた手を持ち上げて、そんな彼に感謝を込めて欠けた指にそっと唇を付けた。


「あ、レティ」


 慌てたように声を上げる彼の手を握り直す。


 私には王なんて、これからも続ける自信はない。でもこんな大変な仕事をまた彼だけに押し付けるのも嫌だ。


 共同統治でいいんじゃないかな。

 後で話し合おうと思う。


「そのドレス、歩きにくそうだな」


 赤い顔をしながら私を見ていたレイが、いきなり私を抱き上げた。


「ひゃあ、レイ君?!いやあ、恥ずかしいよ、皆見てるからさあ!」

「別にいい。俺がこうしていたい気分なの」


 そう言って、レイは私の髪に顔を埋めた。





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