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君が戴く世界の明日

本編のラストで十分な方。または律子の物語でしんみりしている方は読まないで下さい。


また変態が出ます。ラストで淋しさを感じた方にはオススメ。

「…く、は、放して」


 私は部屋から出ようともがいていた。

 早朝の魔王の部屋の前。

 私は扉にしがみつき、部屋の中へと両足を引っ張られるのに抵抗していた。


 私の足を魔力で巻き付けた変態の息が荒い。


「はあはあ、離さないからな。まだレティが足りない。久し振りなんだ、今日は1日俺とイチャイチャしよう」


 なんとか気付かれないように、眠っている彼を置いて部屋を出たところで、いきなり魔力によって足を掴まれたのだ。何このホラー!


「や、やだ!ダメだって!今日は大事な日で」

「俺よりも大事なことがあるのか?いやだ、ずっと一緒にいるって言ったじゃないか!」

「いやいや、だからってホントにべったり一緒じゃなくても」


 ズルズルと部屋に連れ込まれかけて、そういえばこういうシーンって本なんかじゃ、引きずり込まれたらお仕舞いなんだよなと思った。


「ぎゃあ、助けて、喰われるう!!」

「うん、間違いじゃない、観念して俺の元へ来い!」

「うきゃあああ」


 次第にやり取りに楽しくなってきた頃、顔を上げると直ぐ前にギル兄が立っていた。


「は、ぎ、ギルさん!」

「…………何やってんですか。朝からイチャイチャと騒がしい」


 冷たい眼差しが、私に降り注ぐ。


「いや、あの、放してくれなくて」

「……気持ちは分かりますよ。ようやく再会して1日しか経っていませんからね………ですがレイ様、レティシア様を放して差し上げて下さい」


 扉の向こうから、不服そうな唸り声がした。


「イヤだ、なぜだ?」

「今日は忙しい日なんです。主役がいなければ始まらないでしょう?」

「何のことだ?」


 レイの問いに、ギル兄が私を睨む。


「説明してないんですか?」

「……………それどころじゃなくて」


 私は羞恥で目を反らした。

 ギル兄は呆れた顔をして私を跨いで部屋へと入り、バコっ、とレイの頭を叩いた。


「目を覚ましなさい!彼女を放しなさい!ついでに服を着なさい!」


 驚いたのか、緩んだレイの魔力から抜け出すと、私はギル兄の背後に回った。


「あ、レティ!ちっ、ギル、この俺に楯突くのか?!」


 偉そうに言ってるけど、レイ君、あんた下にシーツ巻き付けただけの姿だかんね。


「ええ、私は魔王に従いますからね。今日は魔王様生誕19年の祝いの日、レティシア様は忙しいのですから邪魔をなさらずに」

「…………………………………んな?」


 ぽかんとしたレイが私をじっと見ている。


「え、ええと、レイ君、あのね……」


 ギル兄がくいっと顔を上げて、私の手を恭しく支えた。

 こ、これは、出るか、厨二が!


「こちらにおわす方をどなたと心得る?先の魔王にして、魔界改めレイ・レティシア国女王レティシア陛下であらせられるぞ!」

「ひゃああ!それ印篭出すやつ!」


 いたたまれずに悲鳴を上げている私を見たまま、レイは固まった。


「……………………………………………………………………は?」



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