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クルアシア帝国滅亡記  作者: ネムイデブネコ
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流血帝

視点がクルアシア帝国、流血帝カルミアのものになります。ヤンデレなので近づかないほうがいいです。

目を覚まし、何度も顔を洗い覚醒した状態で侍女に聞く。自分が57代クルアシア帝国皇帝カルミア・クルアシアだと。ただの奴隷にすぎなかった自分が皇帝。だめだ泣くな、アーメリーはもういない。困ったとき助けてくれた最愛の皇帝かれはもういないのだ。


風呂で寝汗を流し、着替え、幹部の待つ会議室に向かう。扉の向こうの彼らはにたにたと笑いたくなる感情を抑えて私に顔を向けてきているように感じられた。陛下が死んで利権を得たいのだろう、それに私は最高の笑顔で返したい。

「先ほど、カーミラ将軍、ボルディア将軍、アーベル将軍を処刑しました」

私の言葉に会議場の温度が氷点下まで下がる。

「ダニエル将軍」

「はっ」

先ほどまでの生ぬるい笑顔がひきつった真顔になっている男が一人立った。

「あなたの罪状について何か言うことはありますか?」

「罪状ですか……申し訳ございません。なにもありません。わたしの祖国に対する愛は」

長くなりそうなので私は証人を出し、黙らせる。

「連れていけ!」

兵士が入り無理やりダニエルを連れていく。ダニエルの悲鳴はちょうどいい警告になった。

「皆の者、裏切り者はすべて処刑しました」

冬将軍を春の女神が包み込む。これ以上惨劇が続かないことにみんなが安堵する。

「陛下がお隠れになったことで属国になったばかりのカキ王国は、スモー帝国は!動き出すでしょう。またライティア王国にも不審な動きがあります。神君であられた陛下がいない今、これに対応することは極めて困難なものになるでしょう。もともとクルアシア帝国はこの大国で最も強大な帝国でした。だからこそ流民の受け入れが多く、さまざまな人種が、さまざまな国を生まれに持つ人間の住む国で治めにくいものでした。しかし陛下は太陽のようなお心でやさしく民を平和に導かれ治めてまいりました」


陛下はつねに民の事を考えておられた。陛下が導入したシステムのもっとも感動したのが法律である。根本的な考えとして人を殺したら死刑。人を傷つけたらその傷がいえるまで投獄(強制労働)。人の物を盗めばそれを金額に査定して払わせる、払えなければ強制労働させてその額を賠償に充てる。法律はできる限り民に干渉してはならないと陛下は言われ、それまでは国が法によって民に税金と労働を命令していたが、それをなくしていった。理想は国民が法律を知らなくても気にせずに生きていける世界だと言われた。


税金は納めなければならないが年収の3割程度とほかの国より安い。それ以上収めると名誉税と言われ貴族になれる。貴族といっても名誉職であり、権限はない。しかし商売で成功を収めると次は地位が欲しくなるのかみんな喜んで税金を納めていく、魔法のようだ。ほかの国では民に労働を命令し、期限通りにできないと罰を与える法律があるがクルアシア帝国にそれはない。基本的に国は国民に干渉しないのだ。


皇法>法律>領主法。この三段階を陛下は法の支配と呼ばれた。領主法は皇法と法律に反してなければ自由に領主が作ることができる。広大な国土を誇るクルアシア帝国には上と下で同じ法を適用しては不具合が生じる可能性があるのだ。どれもこれもすばらしい、陛下こそクルアシア帝国なのだ。


もともと私は死ぬはずだった。私の父親はクルアシア帝国の臣下だったが先帝陛下に殺されると思い謀反を起こしたのだ。明日にでも数万の大軍が私の城を囲み殺される。そう思っていた時に来たのが陛下だった。たった一人で、皇太子という身分でありながら城に来たのだ。陛下は怖くなかったのだろうか?数千の兵の中に飛び込むなんて……私の父はその行動に感動し、降ったが先帝の怒りは凄まじく陛下がかばってくださらなかったらみんな死刑にされていただろう。私も奴隷になったが自分直属にしてくださり、先帝崩御の際にすぐに奴隷の身分を外してくださった。


「戦争はできる限り回避し、まずは国力を充実させます」

すべての国を属国にしたため、戦争がなくなった。アーメリー・クルアシアが困っていたのが兵士の処分だ。戦争が終わった以上、兵士はいらないし、かといって有事の際に兵士はいる。そこで考えたのが境界線までの農地である。襲われるかもしれないからすることのできなかったカキ王国の境界線まで農地を作る。スモー帝国の境界線まで農地を作る。農具を置く建物を作らないといけない、砦では断じてない。


そう考えながらも政治は苦手だ。早く戦争になれ、私はそう思うのであった。

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