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ファースター ギニアピッグ モルモル!  作者: もげもげ
第1章
1/3

モルちゃん死ぬ。

 なんか寝ている間に、隕石がOLのみよちゃんの家を直撃し、モルは死んだ。ぽてちん。

 なんかわからないけど、一匹のモルモットが死んだ。


 みよちゃんもそうだったが、何故自分が死んだことをこのモルモットは一切知らなかった。

 ただ、目の前にあった牧草のチモシーを一心不乱に食べ続け、食べ終わった後はお腹があんまりにも張りすぎたので、苦しんでケージの中を走り回ってうんうん唸って、ごへえ、としまいには天井に腹を向けて、それから白目をむいてプイと鳴いた後、真綿で体を締められるような感覚がして、それから、ゆっくりと意識が遠のいた。

 その間に隕石が降ってきたのだ。


 このアホなモルモットにとってはいつもの睡眠と変わらなかったに違いない。

 のんきなモルは明日も朝起きて飯を食わせろとぷいぷい鳴き、牧草をお腹いっぱい食べて、昼寝をする生活が続くと思っていたがそれももう終わりであった。


 モルは気が付くと、苦しそうな鳴き声を上げて、もるると覚醒した。

「ぐぼべえ。げはげは。たべかけのチモシーがのどにひっかかったもる。……ありょ、ここはどこもるね?」


 短い耳を立ててあたりを見渡せば、まばゆい光に包まれた空の上だった。

 柔らかな虹色の光が降ってきて、遥か下の方には雲がのんびりと動いていた。

 モルはどこかで見覚えがあった。

 夢だった。


「なんだこれ、ゆめだったのね。じゃあ、ねるもる。おやしみー。みんなおやしみー」


 夢の世界だと勝手に思い込んだモルは寝た。

 モルはいつも夢の中では寝ることにしている。

 以前に夢の中でチモシーをおなか一杯食べたとき、起きたら全然満腹じゃなかったことに腹を立てたからだ。


「ゆめはゆめだからね。そういうの、えにかいたおもちっていうの、モルちゃんしってるもんね。みよちゃんいってたもん」


 すると、上からグラサンだけを身に着けた全裸の人間が降ってきた。


「起きるでおます。私はこの世の神でおます」

「なんだ、このグラサン全裸マン。おまえがカミサマなはずないもる」

「神の姿は見るもの精神によって、変わるのでおま。見た目も口調も何もかも」

「あほくさ。モルはいそがしいからあっちいくもるよ、しっし。どうせ、ゆめなんだから、ねさせるもる。ぷー(寝息)」


 夢だから、変なものを見るに決まっていた。

 モルはそう思い込んで、やっぱりいつも通り寝た。


「そんなこと言わずに聞いておくんなはれ。私寝言で詠唱しちゃったせいでうっかりモルちゃんちに隕石落としちゃったのよ。まじごめんよ、ぷー」

「なにそれー。モルをばかにしてんのー?」


 モルモットには自称神のグラサン全裸マンのいうことはわからなかった。

 インセキだかインチキだか知らないけど、何を言っているかわからなかった。ぷーと言いたいのはこっちだった。モルがわかるのは空腹と満腹である。


『でも、こいつあやまってるから、つけこんでやるもる』


 しかし、卓越した洞察力(自称)により、上から降ってきた人はなんかすっごく偉い人で悪いことをしたことは分かった。全裸の人はどうやらモルに謝るようである。モルモットは事情が呑み込めなかったが、相手の方に非があるとみると付け上がった。モルは飼い主同様、天然でマウントを取りたがるのだ。


「何がぷーだ、このやろう! モルちゃんをころしやがって! これじゃ、チモシーがくえないもるよ。おろろーん。シャザイとベンショーをヨーキューするもる」

「ごめんなさーい。でも、生き返らせてあげるから許してぴょん」

「え、マジ?」

「まじまじ。みよちゃんの家も元通りにするし、モルちゃんも元通り也よ」


 しかし、モルモットは渋ちんな顔をした。


「えー、あそこにはもどりたくないなあ。みよちゃん、モルのこと、閉じ込めておばかおばかっていじめるもん。べつのところにしてもる」

「じゃあ、別のところにする? どこでもいいし、どうでもいいよ」

「セツメーしづらいもる。カミサマなんだから、モルのかんがえてるのわかって。すっげえところにいきたいもるよー」

「んもう、わがままねえ。いいわよ」


 グラサン全裸マンは背中からバーコードリーダーを取り出すとモルの頭をスキャンした。


「おがが! まぶしいもる。あやまれ」

「はい、これで、思い通りのところに行けますからね。んじゃ、今から飛ばすからよろぴく」

「ちょっとまつもる。さっきのあかいピカってやつもあやまるもる。モルはかんたんにはゆるさないもるよ」


 モルは調子に乗って謝罪を要求した。漬け込む主義である。グラサン全裸マンはイラっとした。


「謝るも何も、自分がしろっていったやんけ」

「じゃあ、いいふらしてやるもる。むこうに行ったらカミサマはちんちんちっちゃいっていってやるもる」

「そそそ、それはまずい。神の沽券にかかわる」

「じゃあね。ばいばい。カミサマはキンタマもちっちゃい。エンドウ豆」

「それはならん! くっそ、上からの指令じゃなかったら下手に出ねえのに」

「なにかいったもるか? モルちゃんはデビルイヤーもるよ。まるぎこえもる。なんかおまけしてよ」

「なに、おまけって?」

「モルちゃん、むこうでもおバカにされるのイヤもるよ~。だから、モルを100まんばいぐらいカシコクしてもるー」

「それぐらいなら」


 こんなモルモットに施してやるなんて腹がたったが、「どうせアホだ。ゼロに何掛けてもゼロだろ」と、神はどこからともなく「謝罪賄賂セット」と書かれたアタッシュケースを取り出して、中を開けた。すると、そこには光の玉が並んでいた。


「それ、なにもる? きんたま? おっちゃん、こっちのほうがおおきいからこっちにかえたら? こっちのほうがかっこいいもるよ。ぴかぴかにひかってるし。もひょもひょもひょひょ」


 モルモットはグラサン全裸マンのものと光の玉を見比べて爆笑した。


「ちがわい! これはわたすの能力をコピーしたやつ。空から食べ物降らせたり、歩くときに邪魔な海を真っ二つにしたり、いろんな能力があるよ。そのなかから一つだけ特別に賢くなる力をちょびっとだけモルちゃんにあげよう」

「へー。すっげえ」


 神はそのうちの一つをモルモットにあげると光の玉がたちまちモルモットに吸い込まれた。すると、どうだろうか、このあほの極みのモルモットの目が0.1°くらいキリッとなったではないか。


「おほー、なんだか賢くなったモル。脳みそがムキムキになった感じー。100万倍賢くなったの? モルちゃんどれくらい賢くなったもるー?」

「IQだと30くらいかな」


 グラサン全裸マンの思った通り、どうせあほだった。


「ほほー。それはずいぶん賢くなったモルねえ。みよちゃんとどっちが偉い?」

「モルモットと人間は比べるべきもないよ」

「ほほほ、じゃあみよちゃんめっちゃアホだったんだね。ざまあみろー」

 モルモットはモヒョヒョヒョと機嫌よさそうに笑った。グラサン全裸マンはすっかりとくたびれ切った。アホの相手は疲れるのだ。


「じゃ、もういいね。さっさとあっち側に行ってくれ」

「むむっ、おろろ、ちょっと待つもるよ」

「何を」

「モルちゃん賢くなって気づいちゃったもる。もっとその光の玉をよこすモル。なんか、いっぱい便利そうなのが乗っていたもる。全部くれ」

「駄目でーす。一つだけでーす。はい、上げるもの上げたから、さっさと飛ばしまーす。わたす忙しいねん」

「馬鹿かもる。それをもっと食べたらもっと強くなるもるー。神とやらはおバカもるね。モルのためにもっとよこすもるー。えい」


 モルモットは神にまとわりついて、あちこちがりがりかじりついた。


「光のたまたま寄こすもるー」

「ぐわ、くすぐったい。やめろ。いてえ! あちこちまさぐるんじゃない。えい、転送!」

「あ、どべー!」


 ずびびびと謎の光線を放たれてモルモットはどこかに吹き飛ばされた。


「ふう、なんてめんどくさいモルモットだ。飼い主はあんなに簡単に生き返ってくれたのに……あれ?」


 グラサン全裸マンは自分のアタッシュケースが異様に軽い気がした。中を確かめてみると中にあるすべての光の玉がなくなっていることに気が付いた。


「あ、やべ」


 光の玉の行方を捜すためにグラサン全裸マンは光の玉を追跡するためテレパシーを使ったが、どこにも落ちていないことに気が付いた。


「あ、これはあのモルモットに全部吸われたわ。おれの能力のコピー」


 モルモットはすでに別の世界に吹き飛ばされた後だ。そして、その世界は自分の管轄外だった。


「しまったなあ。モルモット一匹だと思ってあっちに行かせてしまった。もうわたすの手が届かねえぞ」


 鼠一匹なら、向こう側の神も大目に見てくれるだろうが、すごいやつを生かせてしまった。グラサン全裸マンはありとあらゆることに気をまわしていたが、考えるのをやめた。


「……しーらね! どうせ、あほだからなんもできないだろ」


 グラサン全裸マンはそう決めつけると、仕事仕事と別の仕事に向かっていった。

 だが、この時の彼は知るはずもないだろう。このあとのこの一匹の無知全能の鼠によって、その世界がやべーことになるとは、グラサン全裸マンも、モルモットも、これを書いているアホすらも知らなかったのだ。

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