第十章の登場人物と単語帳
*こちらは第十章のネタバレを含んだ紹介となっています。一読する時は注意してください。また、少しでも綴られた世界に目を通して頂く上で、補足となれば幸いです*
~登場人物~
【タネボタル】
・花牟礼 彩音
雲天グループ株式会社の令嬢。幼少期よりボランティアを通じて人助けを始め、良いことをする立場の人間だと思っていた少女。省吾との出会いをキッカケにその良いことにも程度があり、自分は無力であることを知る一方で、そんな現実を教えてくれた省吾に新鮮な出会いということもあり惹かれる。それは徐々に省吾が内に抱えている闇を察しつつも尽くすほどの愛へと変わった。そして自身の愛を受け入れてもらおうと必死になった所へマサミチと出会い突出した力を手に入れる。結果、世宝級の一人として再生の分野の第一人者にまでなる。そんな中、彩音の支えであって省吾が交通事故で亡くなってしまう。
彩音は省吾の喪失から自身の研究である再生の分野から蘇生を試みようと意を決してその研究に専念するため失踪する。マサミチを始め多くの助力を経て箱庭を完成させ、その創り出した世界で死者が蘇生された瞬間を観測し、死者の蘇生は出来ると自身の世界に刻み込む。その集大成として省吾を遺骨から蘇生させることに成功するが、同時に、省吾の抱える闇の元、即座に心臓を一突きされる。しかし、彩音は省吾を愛していたため自身の手に入れた蘇生の全てを省吾に譲渡し、何かその先を見据えているように愛を囁き死亡するのだった。
・法華津 省吾
チライハ砂漠の集落にいた男。彩音との出会いをキッカケに砂漠の緑化計画を始動する。全ては妹の璃子のためである。
他人の善意にとても敏感で、省吾にとっては指標がある。それは手を差し伸べる人間がどこから差し伸べているか、である。なぜなら善意を向けられても解決しない現実を知っているからである。そこに差し伸べられる側は愛玩動物と差はないと感じている。そのため自身が手を差し伸べる側に回るとなっても食い物にされないかと疑いつつ、対処療法ではなく原因療法となるような緑化計画を進めていた。
そんな中、研究のため離れていた集落周辺で感染症が流行する。その際、妹との接触を文善から契約違反だと阻止される。彩音の助力を得て会いに行くことに成功はするもののすでに璃子は亡くなっていた。そして璃子の喪失から自暴自棄になるものの彩音に支えられるが、そこで突如、想造の目覚ましい活躍からいつか彩音ならば再生という分野から人の蘇生も達成できるのではないかと考えるようになる。一縷の望みにかける、すでに捨てる気であった命をかけることを決めた省吾はその後、彩音の愛情に応えるように結婚し、愛を育む演出をする。その絶頂の最中で意図的に死ぬことで彩音に自身を蘇生させる意思を傾けさせる。また、愛さない、憎悪を抱くことで自身が蘇生された時に彩音によって良いように作り変えられていないことを証明しようと、その結婚生活に魚拓にしていた。
蘇生させられると役目を終えた彩音を殺害し、妹の璃子を蘇生。さらに、妹のためにと今後いい暮らしをしていく上で障害となりそうな人間を箱庭内で死んだ人間に恩を着せるように蘇生させ排除しようと動き出す。
・法華津 璃子
省吾の妹。感染症で死亡する。後に蘇生される。
・花牟礼 文善
現雲天グループ株式会社代表取締役兼社長であり、彩音の父。ボランティア、支援と評して自身のブランドを貧困の地域や緑化活動に提供している。しかし、全ては会社の心象を良くすること、自社製品の宣伝が目的であり、むしろそれらが解決することを望んでいない。
・花牟礼 篤詞
雲天グループ株式会社の創設者にして彩音の祖父。
・マサミチ
彩音に対価をすでにもらっていると言いながら己の力を貸す視えざる存在。彩音にこの世界における自身の名前をつけてもらった。その力は彩音の蘇生を確立する全てに関与している点からもこの世界の理を凌駕している節すら感じさせる。しかし、その実態は謎に包まれたままである。
【フオディア】
・壱崎 唯一
十家の一つであり御三家に数えられる壱崎家当主の男。盤外戦力の一人でもある。骨と皮だけに見える枯れた老人を連想させる見た目だが戦闘において人類の頂点と謳われている。強さのためにあらゆるものを切り捨ててきた男、と評される通り想造を始め、ありとあらゆる己の身一つで完結しない武に通じないものを排除してきた。その極みとして最近では言葉すら発しなくなっている。その理由に自身の肉体が筋肉をつかせにくいということもあり、速度に特化したという背景がある。とはいえ、その力も決して磨かなかったわけではなくリンゴ程度であれば余裕を持って片手で潰せる。一方、ありとあらゆるものを捨ててきたと評したものの中に想造があるが、実際のところは意識している範疇には、でありその実力は剣技において底が知れない。刈穫・虎爪、熄・龍爪と呼ばれる二種類の刀を所持している。
一樹の元になった人間でもあり、彩音の研究に力を貸している。その見返りに筋肉を身にまとった自分と戦わせるという条件を出し、達成された。勝敗は不明。
・札辻 冴
十家の一つであり御三家に数えられる札辻家当主の女。単純な力比べならば十家内最強である。その特徴から一樹は箱庭で冴を元にした人間に心当たりがあるようだった。
唯一と一度本気で手合わせをした時に左目を斬られ失明している。普段は眼帯でその切り傷を隠していたが、雑貨屋に対価として払うことになる。唯一とは本気の手合わせ以降手を抜かれている。その戦うに値しないという評価を覆すための戒めとしての眼帯だった。
・伊都代 鉄平
十家の一つであり伊都代家当主の男。若き新星でもある。
【ザラキフド】
・?
友香の虐殺を後悔しないようにと食い止めるために突如友香の眼の前に現れた顔の見えない存在。どことなく友香に似たような雰囲気を纏っているが、その確認は当人が友香に殺されてしまったことで出来ずに終わっている。どこか死に場所を探していたようにも見える。
【その他】
・桐生 ケイ
断流会のボス。予言書を代々引き継いできた末裔。楽しいこと、予言書で今後起こるであろう事態に参加するために断流会を結成する。そのため秤外戦力を止め世界の崩壊を防ぐという組織の目的を純粋に達成しようとしているわけではない。もちろん、最終的な目的は崩壊の阻止だが、その過程も楽しむために幹部にすら予言書の一部を秘匿している。
・サミュ
ケイからそう呼ばれる女。側近。
・ベンノ・ギンスター
元ヒミンサ王国に潜入していた断流会の構成員の男。
・雑貨屋
情報を始め多くを知り、それらを提供する存在。おしゃべりが好きな男であることは判明している。しかしその姿を実際に見たものはいない。必要なものを提供し、対価を求めるが直接的な干渉をしてくることはない謎多き存在。
【箱庭】
・天堂 一樹
紘和の祖父。箱庭では八角柱の七つの大罪として席を起き、日本の剣の剣心として最強に座していた。紘和との死闘を経て天寿をまっとうする。その後、省吾によってハーナイムで愛刀である骨刀破軍星と共に蘇生される。唯一を元にして生み出されたことが判明し、その唯一と戦ってくるように命じられるも、端から腕試しの相手として不足なしと了承している。唯一との勝敗は不明。
・今久留主 達也
箱庭では日本の剣の剣聖にして嫉妬の名を冠していた。剣の舞計画を阻止しにきた紘和の前に立ちはだかり殺された。省吾に蘇生された後、一樹と行動を共にする。
・浅葱 刹那
箱庭では日本の剣の剣将にして色欲の名を冠していた。剣の舞計画を阻止しにきた紘和の前に立ちはだかり殺された。省吾に蘇生された後、一樹と行動を共にする。
・チャールズ・アンダーソン
箱庭では八角柱にアメリカの正義として席をおき、サイキョウの一人として蝋翼物【夢想の勝握】を所持していた。箱庭内のリセット機能として存在し、繰り返される時間全ての経験を記憶し続けたまま生活していた。箱庭が崩壊する直前に純に助けを求めており、無事死ぬという願いを達成した。【夢想の勝握】の所有権を紘和から奪取するという目的で省吾に蘇生させられる。しかし、本人が精神崩壊を起こしており使い物にならない状態となっていた。
・ボブ・ハワード
箱庭ではアンダーソン・フォースで一位二位を争う戦闘力を持っていた。第四次世界大戦中に得意な無名の演者、怪鳥に殺される。省吾に蘇生された後はチャールズの快復手段を模索する上でも合わなければという理由で省吾に提示された純の妨害をするために一人捜索を開始する。
・桜峰 友香
箱庭で蘇生された実例の第一号。神格呪者としての力【想造の観測】、【雨喜びの幻覚】、【環状の手負蛇】を全て獲得した規格外の存在にもなった。ハーナイムに来てからはザラキフド大陸全土で虐殺の限りを繰り返し、自身の存在意義、愛の経験を疑いによる精神崩壊を彩音への憎しみで上書きしていた。途中、謎の存在に止めるように言われるが、そのことがキッカケとなり復讐しなければ収まらない自身の怒りをより明確に定めた。
優紀には初めての異性との交友、なによりそもそも人とおしゃべりする機会が少なかったという点で友香にとってたくさんの初めてをくれた良き隣人であり、その感覚は段々と恋へと変質し結ばれる。
・菅原 優紀
箱庭での友香の恋人。友香との出会いのキッカケは陸による計略だったが、一目惚れした。態度で示し、様々な言葉を投げかけ無事ゴールインしたのが中学一年生初頭だった。元【想造の観測】の神格呪者。
・九十九 陸
【雨喜びの幻覚】を手に入れるため友香を【想造の観測】を持った優紀と巡り合わせた恋のキューピット。元【環状の手負蛇】の神格呪者。
・中之郷 智
箱庭では日本の剣の剣王にして怠惰の名を冠していた。その実力が日の目を浴びたことはないが、純が一目置くほどではある。マイケルと合流をしようとした最中ケイと接敵する。
・イザベラ・シルヴァ
箱庭では八角柱にブラジルの勇気として座していた。智と共にケイとの来る激戦に身構える。
・ニック・バンス
箱庭ではアメリカ軍所属の一般兵。ひょんなことからやたらと目立つ場面に居合わせることになる。
~単語帳~
・創子
頭で理解していることであれば、それに該当する材料が手元にある前提の元、完成までの工程を無視してその場に製造、発生させることのできるエネルギーの名称。
・想造
創子を使って想像を現実に反映する行為の名称。
・世宝級
想造を扱う人間の中でも世界各国が認めた技術、知識共に実力を兼ね備えた人間に与えられる称号であり総称。選定基準は国宝級が曖昧なのに対して明確にあるらしい。現在、レーナと彩音、マヌエルが登場している。
・盤外戦力
想造の使い手としての実力は世宝級ほどないが、それを補って余りある規格外の何かを有しているものにその危険性を啓蒙する意味でも与えられた称号。世宝級ではなく、世宝級の様に序列として数字を持たないという意味も込められ盤外としノーナンバーズと読ませる。現在、鋼女、唯一、雑貨屋が該当者として登場している。
・ハーナイム
六つの大陸を有している惑星の名称。紘和たちのいるコートリープ大陸、友香のいるザラギフド大陸、アリスたちのいるソレクチルス大陸、彩音たちのいるルケタ大陸、そしてモアポリティカ大陸の計五大陸が登場している。
・タネボタル
ルケタ大陸北東部にある国。首都をサタキカ、他にカンアナやチライハ砂漠を有する。
・フオディア
ルケタ大陸南部にある国。首都をルミゼンといい別名ジッカチュウという。
・マイアチネ
モアポリティカ大陸にある機械都市という俗称を持つ国。
・モワオプリ連合国
ソレクチルス大陸南部にあり隣国にニムロー共和国が挙げられ、国境にツルラネ山脈という東西に伸びた山脈を抱える。
・箱庭
彩音とマヌエルなど多くの人間の手を借り、マサミチの何らかの力を借りて完成させた異人こと第一部登場人物たちの住んでいた地球と呼ばれた世界の正式名称。ハーナイムという惑星、その住人を元に創られた第二のハーナイムでもある。蘇生の想造を実行するためにハーナイム内で観測できるモノに落とし込み創子が反応するようにするための必要十分装置として存在する。チャールズをスイッチに特定の期間を繰り返させ、成功の試行回数を稼いでいた。
・異人
ハーナイムに来た箱庭出身の人間をハーナイムの住民と区別するための総称。
・雲天グループ株式会社
彩音の祖父である篤詞が創設した企業。国内では政治に影響力があるほどに大規模に成長を遂げている。
・断流会
ケイが中心となり、名目上は秤外戦力関与により世界が崩壊することを未然に防ぐために発足された組織。世界の崩壊に結びつく出来事が予言書としてまとめられてそれを参照し活動を行っている。組織に在籍が判明している人間はケイ、サミュ、レーナ、エディット、マヌエル、ベンノ。
・秤外戦力
ハーナイムを崩壊まで導くとされる六人の危険人物。現在、紘和のみ紹介されている。
・十家
フオディアに存在する十個の武術に精通した名家の俗称。御三家の壱崎家、札辻家、観上家の他に伊都代家、志知枝家、一塚家が登場している。
・蝋翼物
神に並ぼうとして創られたとされる三つの兵器の総称。またこれを所持するものは付随してサイキョウの称号を得る。
・【統率兵器:夢想の勝握】
様々な刻印の施された左右のガントレット。一度装着すると所有者が死ぬまで外す事ができない。ただし、ガントレット自体は様々に形状を変えて装者の腕に絡みつくように装備できる。チャールズの死と同時に紘和に譲渡されたがチャールズが蘇生されたことで所有権がチャールズに戻る。
・神格呪者
神に愛された、または呪われたとされる異能を持つ人間のこと。【想造の観測】、【雨喜びの幻覚】、【環状の手負蛇】の三つの能力が存在する。所有者が死亡すると能力は譲渡される。そして能力を全て一人が手にするとその人間が蘇る。