第二章
何故僕は引きこもりになったのか。
何故僕はここまで父の事が嫌いなのか。その理由は僕の過去、小学校六年生の頃の出来事が原因だ。
僕の人生はある日から崩壊していった。健全な精神で健全な生活を送れなくなった。そんな僕は………………だ。
二月一日から始まる中学受験戦争。
自分の志望校目指して早い人は三年前から、遅くとも一年程前から勉強を始め、毎日塾に通い、夜遅くまで勉強してから寝る。
翌日、早朝に起きて眠たい目をこすりながら勉強してから小学校に行く。
小学校でも勉強して、家に帰っても勉強。
そんな生活を送ってきた。並大抵の覚悟では受験に合格できない。
親は受験日まで多額の金と大きなプレッシャーを子供にかける。子供はそのプレッシャーに堪えながら勉強する。
一生懸命努力する。なのに模試などで悪い結果だと怒鳴って怒られる。やりたくもないのにやらされる。強制的に勉強させられる。
僕はこんな生活を強いられていた。母は応援してくれた。ほぼ毎日夜食を作って部屋まで持ってきてくれた。持ってきてくれない時。それは家に父がいる時だけだった。
母は父に逆らえない。一度父が家にいる時に持ってきてくれたことがあったが、その時しばらくしてから居間で大きな音がした。恐る恐る居間を覗きにいった。中ではとても酷い事が行なわれていた。
母が正座をさせられ、その向かいで父が椅子に座って怒鳴っていた。
母は何度も、何度も頭を下げて土下座して謝罪していたが、父には許してもらえず、終いには暴力を振るわれていた。
助けたいと思った。でも体が動かなかった。父に対する恐怖が僕を束縛していた。
子供は親の操り人形なのか。親の奴隷なのか。子供は親の言いなりになるしかないのか。
親は子に言う。
「嫌なら辞めて良い。」
「自分のやりたい事をやって良い。」
子供にとってこれはただの脅しだ。
「嫌と言ったらどうなるか分かってるな、」
「言うこと聞かないとどうなるか分かってるな。」
まるでそう言われている感覚だ。
事実、僕が習い事を自分から「辞めたい」と言って辞めさせてもらった。その後しばらく日が経ってから言われたのだ。
「まだ続けていれば……。」
「辞めて得は無かったな。」
習い事でここまで言われるんだ。
「受験を辞めさせてください。」
なんて口が裂けても言えない。
親の言う事は絶対。受験しろと言われたらしなければならない。辞めたらこの家から追い出される。最悪殺される。
今すぐ辞めたい。別に地元の中学で良い。でもそんな事は言えない。父親が怖いから。
言う事を聞いていれば怒られはするが殺されることは無い。生命の安全がある。嫌嫌だが勉強を頑張った。この命を守る為に、生き続ける為に……。




