序章
…僕は地上へと、地獄へと落ちていった
この国は「肩書き」というものを求められる。
中高生や大学生なら「学生」、会社員なら「○○会社課長」、人妻なら「専業主婦」など誰にも肩書きというものはある。
これがあるから人々は社会で自分の居場所を見つけられ、安心して生きてゆける。
しかし、最近は学校に行かない学生や、働かないで家 にいる大人が増えている。
こんな人々に今まで肩書きなど無かったが、残念な事に世界はそんな奴らにも社会での居場所を作ってしまったのだ。
「引きこもり」、「ニート」、 「自宅警備員」などの立派な肩書きを。
そして引きこもりなどの親族は周りに堂々と宣言する。「うちの子、引きこもりなの。」 と。
その精神は尊敬に値する。僕の親も含めて。
ここまで引きこもりについて色々言っているが、僕も世に言う「引きこもり」だ。
母親とは三ヶ月ほど顔を合わせていない。
母は毎日、朝昼晩御飯を作ってくれているというのに、僕は長い間顔を合わせていないのだ。
我ながら親不孝だと思う。馬鹿だが優しい母親なのだ。
そんな母親は嫌いではない。むしろ好きだ。
だが、誰にでも親は二人いるものだ。僕が引きこもりになった理由。それは全て父親だ。父親さえいなければ僕は引きこもりになんてならなかった。
父親は人の気持ちが分からない。家族を大切にせずに 仕事ばかり。
そのおかげで皮肉にも少し裕福な生活が出来ている。でも、僕は金なんか望んでない。
父親からの愛情 が欲しかった。
父親は僕のことを金を食うだけの邪魔者扱いする。事実そうかもしれない。
だが、子供は親に縋って生きていくしかない。そんな事、大人も分かっているはずだ。
なのに何故邪魔者扱いされなければならないのか?
父親は僕が嫌いなのか?僕は父親に愛されていなくても好きにならなければならないのか。
昔は好きになろうと頑張った。だが、もう限界だ。
親だと思いたくない。しかし、父親が家族を放置し、会社から貪るように取ってきた金で僕は生きてきて、今も生きている。つまり父親のおかげで生きている。
残念だがそれは逃れようもない事実であり、たった一人の父親なのだ…。




