収集
「あかり、おはよ!!」
私はいつも以上にテンションが高い。
なんせ、20万の臨時収入が入った。
しかも、私にとって大切なあかりのために使うお金。
多分、今までで手にしたお金の中で一番価値がある。
「でもさ、さすがに同じ学校の人から騙し取るのはまずいんじゃない?」
あかりが少し不安そうな顔で答える。
確かにバレたら一気に計画は崩れるだろうし私も退学などの生ぬるい処分じゃすまないだろう。
「ま、大丈夫でしょ。畑中のことを思いっきり脅してあるから。」
「そ、そう…」
あかりが引きつった笑みを見せる。
なんで?
私、そんなに怖かった?
「さて、次はホテル取らないと…」
あかりがいう。
「確か、4組の佐藤さんって帰国子女だよね?」
私は言う。
「うん。」
「ならさ、金もち?」
「もー琴梨ったらお金の話をしないの。」
「いや、お金じゃなくてさ、そういう人なら良いホテルとか知ってるんじゃないかなぁって思ってさ。」
「お、琴梨にしては良い提案。」
「それどういう意味~」
私達は笑う。
私は元々こんな風に笑うことなどしなかった。
いや、できなかった。
両親からの暴力や、いじめ。
過去の私には色々な『傷』があった。
たとえその傷は原因が途絶えても癒えることは無い。
しかも、その傷のせいで私は笑顔を失った。
そして、高校に入り、そこであかりに会った。
そして、少しずつ会話をすることによってあかりには心を開くことが出来た。
そして今では誰が見ても納得するような親友になった。
私としては親友以上の関係を望んでいる。
「さて、早速4組に行きますか。」
あかりが言う。
「うん!!」
私が小学生のように明るい声を出しながら右手を挙げた。
「何もなかったのか昨日は?」
「あ、あ、あ、あ、あたり前だ。我のような高貴な者がその辺の凡人となど契約を結ぶはずがないのだ。」
そう言って畑中は決めポーズをとる。
こいつ、面倒くせぇ…
僕は心のなかで本音を零しつつ、話を続ける。
「そういえば、フィギュア買うとか言ってたよね?」
僕はコッチ方面の知識はなかったが、畑中の好きな話から始めれば攻略できるかなと思い、以前生徒会室でフィギュア買うという話を利用してみた。
「うぅ…」
急に畑中の顔が渋る。
何かフィギュアに関してヤバいことでもあったのか?
「どうした?何かあった?」
僕は聞く。
絶対に何かある。
そう、確信した。
「何もない!!!」
珍しく畑中が叫ぶ。
「畑中が叫ぶねんて珍しいね。絶対なんかあったよね?推測なんだけど、君が色々とやられた相手に僕もやられそうなんだ。でもね、僕はそいつらを潰す。絶対に潰す。そのためにも、畑中の持っている貴重な情報が欲しい。口で言うとマズイならLINEででもいい。お願い!!」
僕もいつもより口調がキツくなる。
でも、これくらいしないと情報は手に入らないだろう。
「…承知した。でも、もし言ったことがバレると俺がヤバイことになる。だから、内密に頼む。」
「わかった。畑中のためにも秘密厳守で行くよ。そして、絶対に解決する。」
「…ありがとう。」
畑中が少し瞳を濡らしながらそう言った。
僕は畑中に電話番号を教えてから教室を後にした。
「ね、佐藤さん。この学校に比較的近い場所に良いホテルとか無い?」
私は生徒会の仕事以外であまり話すことのない佐藤さんに話しかけた。
佐藤さんも、いきなり過ぎて動揺する。
「あ、あまり深く考えないでね~私、親友の琴梨と一緒に過ごそうと思って。どこか良いホテル無いかな…」
私は嘘をついた。
琴梨…
山田 琴梨…
私の親友。
でも、最近は少しおかしい。
なんか、私のために一生懸命すぎる。
まるで、彼女が彼氏のために必死に何でもする感じ。
私は腹黒だ。
今回も無理矢理生徒会長の座を奪おうとしている。
しかも、親友である琴梨の力を借りて…
今までも、人を使って自分のなりたいようにことを進めてきた。
中学の生徒会選挙でも実際負けた。
今回と同じ2位だった。
先生に聞くと、若干の差だった。
そして、会長になったやつを蹴落とすためにいろいろな手を使った。
一番簡単な男女関係。
イジメて精神的にも肉体的にもズタボロにしてやった。
でも、それに私は手を貸すことはない。
実際にやるのは私と親友や友達となった少し危険な女子たち。
今回、そのポジションに着くのは…琴梨。
でも、今までとは少し違うタイプ。
なんか、私のことを……好きみたい。
ゆ、百合ってやつかな?
恥ずかしい…
でも、そっちのほうが動いてくれるからいいや。
「ね、藤野さん?聞いてた?」
急に現実へと戻る。
「あ、ごめん。ちょっと考え事してた。」
私はあたふたしながら答える。
「もーちゃんと聞いててよ…」
「は~い」
「この学校近くには無いから、市内の方に行って…」
その後、佐藤さんから詳しい話を聞く。
毎年、市内で行われるクリスマスイベントで大きなツリーが飾られる。
そこの近くにあるらしい。
その日限定で食べ放題があるとか色々聞いた。
それを、メモする私。
「こんな感じでよかった?」
藤野さんが言う。
「うん、ありがと!!」
私はお礼を良い、4組を後にした。
5組に戻ると琴梨が退屈そうに待っていた。
「ただいま。」
私が言うと、琴梨は大はしゃぎ。
彼氏の帰りを待つ彼女かって。
「どうだった??」
琴梨が聞いてくる。
私は説明するのが面倒臭かったから書いたメモを渡す。
それを、読む琴梨。
しばらくして、琴梨は携帯を取り出しどこかへと電話をかける。
そして、何分か会話をして電話を切った。
「どこに電話?」
「ホテル。予約しといた。」
「はやっ!!」
私が驚くとドヤ顔を決める琴梨。
私達は声を上げて笑った。
でも、きっと…
今回の計画が終わったらこの関係も終わるんだろうな…
私はなぜかそんな予感がした。




