プリンセスの拷問
「ね、坂元くんって彼女いるの?」
第1回生徒会定例会議が終わった後、藤野さんに呼び止められたと思うといきなり質問された。
「え、あ、居ないけど。」
僕は少し動揺した。
女子からこんな質問をされるのは過去に覚えがない。
「そうなんだ~良かった~」
刹那、隆生からの殺意を伴った視線に気付く。
僕は当然無視する。
関わると本気で殺られそう。
「ね、坂元くんのこともっと知りたいなぁ…アド交換しよう!!」
ワザとなのか知らないけど廊下にまで聞こえる声で言うのかな。
お陰で、中二病の畑中以外の男子が戻ってきたじゃないか。
しかも睨んでるし。
僕は早くこの場から逃げたほうがいいと悟り、急いでアドレスを交換すると猛ダッシュで生徒会室を後にした。
帰宅して一息入れているとメールが来た。
相手は案の定、藤野さんから。
『初メールしまぁ~す!!』
いかにも女子高生らしい文面だった。
僕はこういうメールの相手をするのは苦手だ。
『こんにちは。』
とだけ書いて送り返す。
すると瞬く間に、『つまんなっw』と返事が来た。
「どう返せばいいんだろう…」
僕が悩んでいると『2通目でシカメとは(泣)』
と帰ってくる。
あたふたしていると、『坂元くんってLINEしてないの?』って来た。
僕はこんどこそはと思い『してない。』と返す。
送信完了という文字を見て机に携帯を置こうとした時またメールが来た。
『やってよ♡』
誤解を招きかねない文面。
『でも、あれ韓国に情報が漏れているとか言わないけ?僕、そういうのが怖くて出来ない。』
僕はそういう情報系に疎い。
もちろん、パソコンはあまり使えないしタイピングも遅い。
携帯で文字を打つのも激遅。
フリック入力も1年かけてやっとできるようになった。
さっきの少々長いぶんを打つのは数分かかる。
その点、藤野さんは早い。
いや、早すぎる。
今どきの高校生はみんなあんな感じなんだろうか…
そんなことを考えているとメールが来た。
『その時はその時だよ(笑)LINEのほうが無料だし早いしかわいいよ♡』
僕は初めて知った。
メールってお金がかかっていることに。
『無料なら使ってみる。』
僕が返事をするとすぐに返事。
『http://www…』
そこにはURLが書かれていた。
それを恐る恐るクリックする。
すると、GooglePlayストアーへ移動した。
少し待つとLINEと大きく書かれたページに画面が切り替わった。
「インストールでいいのかな…」
そう呟きながらタップする。
電子機器を触る時が一番緊張する。
タップすると文字が沢山出てきて同意するかしないかを選択しないといけない。
以前、アプリを入れた時に同意しないと入れれないことを知っているのでそこは迷わず同意するを押す。
ダウンロードは一瞬で終わりインストールも完了。
そこから、LINEの初期設定を済ませる。
すると、いろいろな人の連絡先が表示されている。
その中には、隆生も入っているし藤野さんも。
他にも中学の友人とかも載っていて驚いた。
「どういう仕組なんだ…」
僕が悩んでいると今度はLINEの通知が来る。
『無事に入れれたんだね。』
僕は使い方を模索しながら返事をする。
『うん、でもまだ使い方がわからない…』
すると秒速で、『とか言って返事してるじゃん♡』と返ってくる。
相変わらず早い。
そこからは藤野さんが一方的に質問して来た。
趣味だの好きな人はいるのかとか…
正直、めんどくさくなってきて無視したが1分毎に『無視?寂しいよぉ…』とか送ってくるから返事をしないわけにはいかなかった。
「はぁ、畑中に代わって欲しい。」
藤野さんもあいつの中二病アタックを受ければ黙るだろう。
そして、気づけば12時を過ぎていた。
それでも質問攻めは終わらない。
「拷問かよ…」
そう思っていると、『最後の質問ね♡』と来た。
内心ほっとした。
寝れる…
そして、質問が来た。
『坂元くんのって大きい?』
「知るか!!!!!」
叫んでいた。
隣の親の部屋から「うるせーぞ」という怒号が聞こえた。
その声が一番うるさいです。
とりあえず『普通』と送って寝た。
その頃近所の公園で、
「ふ、我が漆黒火炎マスターを倒そうとは100億年早いわ!!」
という決め台詞を猫に向かって叫ぶ畑中がいた。




