悪女
「ねぇ、琴梨。」
「なに?」
私は少しダルそうに答える。
私は趣味を遂行中なのに。
できれば集中したいけど親友が話しかければ無視とはいかない。
「坂元、たいしたことないよ。挨拶も普通だし、顔も普通だし。何もかもが普通。そんな奴に負けたと思うと本気でイライラする!!」
あかりが目の前の机を蹴り飛ばす。
珍しい。
いつもあかりはおとなしい女性を演じている。
本当のあかりを知っているのは私だけだと思う。
そう、私とあかりは特別な関係。
お互いの秘密を共有しあっている関係。
「落ち着いてあかり。私が何とかしてみるから。」
私は笑みをこぼしながら言う。
「いつも、ありがとう。あかり。」
そう言ってあかりは私を抱擁する。
私はあかりに抱擁されるのが嫌いじゃない。
なんか落ち着く。
『ブーブブ』
私の携帯がバイブで震える。
「ごめん、あかり。」
そう言ってあかりの体から離れる。
そして、携帯の方を見る。
通知の主は最近、連絡用のツールとして流行っているLINEだ。
相手は30代の若社長。
そこには「金の準備出来た。写真の件は黙認で。」と書かれていた。
私の趣味…
性欲に塗れた男から金をいただく。
ただ、それだけ…
「ね、あかり。」
放課後、生徒会定例会議に行こうとしていたあかりを呼び止めた。
「どうしたの、琴梨。」
不思議そうに見つめるあかり。
あかりに私の名前を呼ばれるたびにドキッとしてしまう。
「あ、あのさ。今日の定例会で坂元の情報を集めてくんない?それを参考に策を練るから。」
「うん。わかった。」
そう言ってあかりは生徒会室へと消えた。
「ね、私100万って言ったよね?なんで10万?」
放課後、私は近くの公園に来ていた。
そこには、さっきのLINEの相手であった若社長。
「あれぇ、10万じゃなかったっけ?聞き間違えちゃったっぽいね~」
チャラい。
こういう奴が社長と思うと本気で潰したくなる。
「いいよ、もう金は。」
私はその社長に言う。
その社長はラッキーと言わんばかりの表情をする。
刹那、私は携帯をいじる。
この操作も慣れた。
「はい、完了。」
私はその社長に携帯の画面を見せつける。
そこにはTwitterのタイムラインが表示。
そこに社長に襲われている私の姿が写っていた。
「お、おい…」
社長が青ざめる。
「お前が悪いんだよ?言ったのにさ。」
私は社長を睨みつける。
「糞ガキが!!」
刹那、私は社長に打たれる。
これも慣れた。
「今の、動画で撮ってるよ。」
私は、胸元にこっそり隠していたCCDカメラを見せる。
「…。」
返事がない。
人生終了を受け入れたようだ。
「ふぅ、今回は収入なしか。」
私は深い溜息と共に口に出ていた。
「さてと…」
次のターゲットは決まっている。
「坂元健志。覚悟しとけ。私の親友を泣かした罰だ。」
私はあかりからの連絡を待つことにした。




