生徒会組織
ついにその日が来た。
昨日、立会演説会があった。
その結果が今日発表される。
正確に言えば今日の昼休み。
朝、開票結果をもとに職員会議で話し合いが行われる。
とは言っても、だいたいが開票結果通りらしい。
「そろそろだな。」
「うん…。」
「そんなに緊張するなよな。」
「うん…。」
僕に話しかけてくれた男、大野隆生が言う。
隆生は中学からの親友だ。
親が鑑識関係の人で彼も科学に興味があるらしくかなり深い知識を持っている。
ちなみに、隆生も生徒会選挙戦に出馬している。
「ま、会長じゃなくても2人で一緒に生徒会に入れたらいいね。」
「あぁ…」
僕は会長を諦めていた。
最悪、隆生と一緒に仕事ができればいいなと思っている。
『ピンポンパンポーン』
校内放送が始まった。
『先日、行われた生徒会選挙の結果がでました。』
僕は息を呑んだ。
隣にいる隆生を見ると彼も緊張しているのか微動だにしない。
『新生徒会長は2年3組の坂元健志くんです。』
え?
正直、僕は驚いた。
しかし、声を出さずに続きを聞く。
『新生徒会副会長は2年5組の藤野あかりさんと2年3組の大野隆生くんです。』
ここで、歓声をあげた。
僕と隆生の2人で。
ホモではないけど抱き合った。
それだけ嬉しかった。
そのせいで続きの放送は聞いていない。
同時刻…
2年5組は静寂で包まれていた。
「なんで坂元が会長なの?」
藤野あかりが泣き顔で言う。
「ほんとわかんない。コネでも使ったの?」
横に居た山田琴梨が言う。
「あぁ、負けたってことか…なりたかったな会長に。」
藤野が本気で泣き出した。
すると教室の空気は増々重くなった。
「あぁ、気がすまねぇ。坂元に仕返ししたいわ。」
山田が言う。
「仕返し…?」
藤野が不思議そうに首を傾けて言う。
「アイツを退学、いや自殺に追い込むの。そしたら副会長であるあかりかもう一方が会長になれるでしょ。だから、恨みを晴らして会長就任という一石二鳥ルートなの。」
山田が楽しそうに言う。
「じゃあ、お願いしてもいい?」
藤野が言う。
「任せて。あかりのためならなんでもするよ。」
「ありがと。」
すっかり泣き止んだ藤野が山田を抱擁する。
もちろん、2人はレズではない。
その時の山田の表情は悪魔だった。
放課後、新生徒会役員で集会があった。
僕と隆生は4階にある生徒会室に向かった。
集合時間より15分前に着いたのだがもうすでに全員揃っていた。
「じゃ、全員揃ったから臨時生徒会役員集会を始めます。」
顧問の先生の橘木 美和子が言う。
40歳ぐらいの女性だ。
「では、まずは会長より挨拶をお願いします。」
先生が言う。
僕はこういうアドリブが好きだ。
いきなり来た質問や振りにあっさりと返す。
その時が一番能力を表現できる場面である。
「はい、生徒会長になりました坂元健志です。本校の生徒会の権限はとても大きく影響力があります。先輩方が築いてくださった伝統を保守しつつ、僕達独自の風を吹き込ませたいと思っています。皆さんで協力して盛り上げていきましょう。」
僕は普通の挨拶で締めた。
すると、微妙な空気が流れる。
やらかした感があったが気にしないことにした。
「では、次に副会長の藤野さん。」
「はい。」
美声が響く。
聞くだけで心身が癒やされる。
「副会長になりました藤野あかりです。会長の坂元くんのサポートをしていきたいと思います。よろしくお願いします。」
少し短めの挨拶だった。
でも、僕の時より拍手が大きい。
うん、わかってる。
そして、次々と挨拶を進めていく。
もう1人の副会長は僕の親友である隆生。
彼も手短に挨拶を済ませる。
次に書記長。
選ばれたのは藤林 菜那子。
まさかの後輩だった。
先生方も1年生が長になるのは予想外だったとか。
1年生がこの選挙を勝ち抜くだけでも大変なのにまさか4位になるとは…
噂ではクラスが一丸となって活動したとか。
彼女はとてもおとなしい性格でまさしく書記って感じがした。
次の書記に内田 享と小泉 純輝が当選。
内田は2年生で野球部だ。
野球部といえばリア充の塊だが彼には彼女は居ない。
彼自身、作る気もないそうだ。
小泉は1年生。
名前が某政治家に似ているという理由で本気で国会議員を目指しているらしい。
ま、頑張って欲しい。
次に会計長。
会計長には畑中 稜平が就任した。
彼の自己紹介で理解できたのは名前と最後の『よろしく』だけだった。後は爆ぜろリアルとかシナプスとか邪王真眼とか訳の分からないことを言っていた。
隆生いわく中二病らしい。
怖い病気だ。
しかし、マニフェストとかは素晴らしくなんで早くこの病を治さないのかがわからない。
会計には西田 果歩と佐藤 英梨が就任。
あの会計長には勿体無いほどの美女だ。
真面目な西田さんと帰国子女の佐藤さん。
うん、会計長がどんどんクズに見えてくる。
いっそ、畑中には会計長の座を降りて欲しいね。
この9人が今年度の生徒会役員となった。
「しかし、藤野さん激カワだったな~」
生徒会室を出るとすぐに隆生が鼻の下を伸ばしながら言う。
「うん。可愛いけど怖い。」
「なんでよぉ~」
「終始僕のことを睨んでた。」
「は?」
「気付かなかったの、隆生は?」
「うーん。あんまり見てないから分かんね。」
「そっか…」
帰宅後、さっきの会議風景を思い出す。
思いに覚えているのは睨まれたこと。
あの睨み方は、明らかに恨みや殺意を伴っていた。
背筋に冷や汗を掻くレベルだ。
「やっぱ、僕が会長になったことを恨んでるのかな…」
ある程度は覚悟していたけど現実になると苦しい。
「でも、決まったものは受け入れてほしいね。」
僕はいつもの癖、独り言を呟く。
だいぶグダグダしました…
そろそろ展開させます。




