緊急集会
事件が発生した。
それは、本校始まって以来の大きい事件が。
しかも、その犯人が現役の生徒会長。
本校に通う生徒はこのように捉えていた。
しかし、実際は違う。
この事件の犯人とされている生徒会長-坂元 健志-は被害者。
いや、ワザと被害者になっている。
こうすることで、真犯人を捕まえようと…
事件から3日後、生徒会掲示板に1枚の紙が掲示された。
『緊急生徒会役員会議を今日の放課後に行います。なお、通常はこの会議は非公開なのですが、今回はことの重大さにより公開いたします。』
そして、放課後。
体育館に緊急会議用の設備が置かれた。
「明らかにおかしいよな。」
「うん。まさか公開会議になるとはね。」
「橘木先生が加担してるのか?」
「いや、緊急会議の集会権は校長しか持たない。だから、藤野が遠回しの圧力をかけたと考えるのが普通だろう。」
僕は冷静に判断をする。
隆生はまさかの公開会議ですこし戸惑っている。
無理もない。
僕の無実、そして、真犯人を突き出すためには隆生の証言が重要になるのだ。
その証言次第で僕の運命は変わる。
「ヤバっ、緊張のあまり膀胱が破裂しそうだ。」
「いってらっしゃい。まだ時間はあるから。」
「おぅ!!」
そう言うと、隆生は体育館近くのトイレへと向かった。
同時刻。
体育館の袖に私達は居た。
「いよいよね。」
あかりが少し緊張した声で言う。
「なんか、嫌な予感がする。」
私は思ったことをハッキリという。
「え?」
あかりが不思議そうに言う。
「だって、あの坂元がこんな簡単に罠に掛かるかな?」
そう、坂元はこんな単純なミスをするとは思えない。
あれでも、生徒会長だしその辺の警戒はするだろう。
普通、ホテルに入った瞬間に逃げ出すはず。
そして、睡眠薬にも気付くだろう。
でも、なんで?
逆に不思議だ。
嫌な予感がする。
胸の鼓動が高まる。
これは横にあかりがいるからではない。
何かに恐れている。
なんかしないと…
「琴梨、大丈夫?」
ふと、あかりが声を掛ける。
それで、我に返る。
「すごい汗ね…そんなに緊張してるの?」
確かに私はすごい汗をかいていた。
「ちょっと、涼んでくる。」
私は体育館近くのトイレへと向かった。
「あっ。」
私はそこに大野がいることに気づいた。
「どうも。」
大野が素っ気なく頭を下げる。
「…何を握ってるんだ?」
私は何気なく言ってみた。
大野はずっと坂元と一緒にいる。
何か握っていてもおかしくないと思ったのだ。
「さあな。俺もいきなりのことで驚いている。お前こそ何か企んでんじゃないのか?」
いきなり、図星をつかれる。
しかし、ここで漏らすわけにはいかない。
「な、大野。お前何か握ってんだろ?言えよ。言えばお前を気持ち良くしてやるよ。」
「ほ、いいね。」
大野が食いついてきた。
これだから性欲満載の男どもは。
「でも、断る。」
「は?」
「俺は確かに童貞だし出来ることならヤりたい。でもな、健志を売ることは出来ねぇ-よ。俺は親友は大事にする。それに、お前みたいなヤリマンとはしたくないんだ。」
「私は処女だ!!!」
私は叫んでいた。
「そーなの?ならヤろっかな~」
大野がニヤけながら言う。
私は自分の発言に恥ずかしくなってきた。
私は大慌てであかりの元へと走りだした。
「格好いいな、隆生。」
僕はトイレから戻ってきた隆生に声を掛ける。
「は、健志、お前…見てたのか…?」
「全部。」
隆生は恥ずかしくなったのか、顔を赤くする。
「くそっ、大人しくあいつとヤっとけば良かった。」
「お前らしいな。」
僕らは笑った。
正直、僕はすごく嬉しかった。
隆生とはかなりの仲だとは思っていた。
ただ、それは僕が一方的に思っているだけかなぁ…と思っていた。
でも、今日、隆生の本音を聞けた気がする。
嬉しかった…
「さて、いよいよだな。」
隆生が真顔で言う。
「あぁ!!」
僕らは体育館の扉をくぐった。




