騙す者が騙される
今日はクリスマスイブだ。
いつもの僕なら家にこもっている僕が外にいる。
あまりの人の多さにいつもの僕なら気を失っていた。
でも、今日の僕はいつもとは少し違う。
僕はこの売られた喧嘩を乗り切るために僕は戦う必要がある。
僕は、街-市内-の大きな樹の下でターゲット、いや、ターゲットは僕だ。
僕を騙そうとしている、僕を嵌めようとしている山田琴梨が来るのを待ち構える。
もちろん、騙されていることを知らないふりをして。
どこに行けばいい?
何をすればいい?
手はつないでいいのか?
キスは?
どこまでいいの?
嘘でもいいからこういうことを考えろって隆生に言われた。
よくよく考えると、生徒会長としての仕事が疎かになっていた。
「ふぅ、3学期はもっと気を引き締めよう…」
僕は反省をしつつ、時間を確認する。
「8時3分…か。」
寒い。
ま、女性はそんなもんだろ。
と思っていると、来た。
コート姿の山田が。
「ごめん、待った?」
彼女が言う。
そこから、会話がそこそこ続き、僕は何も知らないフリを続ける。
そして、佐藤さんから聞いた通り富士野ホテルへと着き、そこでバイキングを楽しむ。
正直、楽しくはない。
山田は僕を騙している。
僕は騙してる山田を騙している。
もしかしたら、バレてしまうかもしれない。
その恐怖心からか心の底から楽しめない。
隆生からは、思いっきり楽しむことが成功への近道と言われたが、守れそうにない。
しかし、なんとかバレずに部屋まで行くことができた。
そして、噂通りに山田は僕に風呂に入るように勧めてきた。
僕は罠とは分かっていたが、その罠にはワザとハマる必要がある。
僕は快諾し、風呂に入る。
「ふ、風呂に入った時点で終わりよ。坂元!!」
私は用意していた睡眠薬をジュースに混ぜる。
私のテンションは最高潮になった。
これを坂元が飲んで寝て私が写真を撮ればあとはあかりの権力でなんとでもなる。
そして、これが終われば私はあかりと関係を作るつもりでいる。
いつもは絶対に言えないこの気持ち…
好き
という気持ちを。
女同士の関係は変だ。
それは、私にもわかっている。
でも、この気持はもう止まらない。
坂元が風呂から出てきた。
「琴梨、いいよ。」
坂元が言う。
私は返事をして風呂に行く。
私はずっとドキドキしている。
それは坂元に対する気持ちではなくあかりに対してだ。
心が弾む。
急いで風呂から上がった私は坂元に近づいた。
翌日、僕は電話の音で目を覚ます。
初めて食らった睡眠薬は効果が抜群で、爆睡していた。
ぜひ、日常生活の中に取り入れたいと思ったほどだ。
そんなことを考えつつ、電話にでる。
相手は画面を見なくてもわかる。
隆生だ。
ここまでの流れはすでに計画済み。
1つ不安だったのは、藤野たちがどこまでこの騒ぎを大きくするかだ。
あまりにも大きいと、後々困ることになる。
いくら冤罪として片付けるにしても、少なからず生徒会長の支持率は大きく下がるだろう。
それらを考慮すると、あまり大きくはしたくない。
でも、その期待は大きく裏切られた。
隆生が言うには、時既に全校生徒の約半数以上が知っていて、関係各所から問い合わせの電話が鳴り止まないという。
「はぁ、後処理めんどくさそう。」
僕はため息混じりに言う。
『俺も手伝うから。』
隆生も多少落胆した声で言う。
「じゃ、そろそろお願いしますよ。鑑識さん。」
『待ってました!!』
刹那、ホテルのドアがノックされる。
僕は少しだけ警戒して除き窓から外の様子を伺う。
そこには、白衣を着た男が立っていた。
すぐにドアを開け中に通す。
それこそが、我が頼れる鑑識官の大野 隆生だ。
「じゃ、頼むぞ。」
「あぁ!!」
こうして、隆生は持ってきた試薬で調査を始めた。




