歪んだ愛情
時間の都合上無理ですが…これの連載版もあります。読みたい人は、どこかにコメントください。
学校の校門で、またいつものように、南居 犬司が私を待っていた。名前通り、犬みたいなやつだな。
「あっ!西先輩!」
私に気付いた犬司は、嬉しそうに手をブンブンと振る。
「犬司、お前が通う中等部と、私が通う高等部は遠い。だから別に来なくてもいい。それに、ネコサークルでも会えるだろ」
「僕が西先輩に会いに行きたいんです~。さて、ネコサークルに行きますか」
犬司が差し出した手を、私は少し照れくさそうに掴み、私たちは町へ行く。
「ねぇ、あの男の子可愛くない?」
「本当だ~。でも、隣の人は…ね」
女性たちは犬司を愛玩の眼差しで見て、私を同情の目で見る。
それに耐えられなくなった私は、繋いでいた手を放す。
「先輩?どうしたんですか?」
「少し…離れて歩こう」
「よくわかんないけど…先輩がそうしたいならそうします」
「…ありがとう」
半年前に放火事件が起き、私は家と両親、それから…顔の左半分を火傷の傷で失った。
そして、高等部の人たちも、私を同情の目で見ている…。
しかし、ネコサークルの人は違う。障害者もいるからか、私を普通の人として見てくれる。
ネコサークルは人とネコ、両方に触れ合え、私の心を癒してくれるんだ…。
「あっ、今日はネコサークルが始まる時間、いつもより遅いんだった。だから…ちょっと僕の行きたいとこに行ってもいいですか?」
「私もヒマだし、お前に付き合うよ」
「ありがとうございます!」
犬司の行きたいところは、病院だった。
「今日はこれないと思っていたから、嬉しいです。美春も喜びますよ」
……美春?
「ここが美春の病室です」
病室には、人工呼吸器をつけた女性が眠っていた。かなり綺麗だ。
「改めて紹介します。僕の…恋人の美春です。今は眠っていて起きないんですけどね…」
そう言って、犬司は苦笑いする。
……恋人がいたのか。まぁ、中学生なら当たり前か。
「…なぁ、犬司。私……」
『お前の事が好きなんだ』
「ん?どうしました?」
「……飲み物買ってくるけど、お前、何か飲むか?」
「じゃあ、苺ミルクでお願いします。お金は…」
「私が出す」
「あっ、ありがとうございます」
ネェ、スキッテイイナヨ。
嫌だ。
アノオンナガシンダラ、ケンシハユナノモノダヨ?
それは違う。
ユガンダワタシノカオヲ、キレイトイッタノハケンシダケ。
…………。
デモ、ユナハケンシノショウタイニキヅキカケテ…。
うるさい!お前(私の心の声)は黙ってろ!
飲み物を買った私、足早に犬司がいる病室に向かった。
「犬司、飲み物買ってき…」
「違う!美春は生きてる!」
どうやら、犬司は医者と口論しているようだ。
「いえ、林さんはもう死んでいるのです。これは延命装置ではなく、林さんを生きているように見せかける装置なんです」
「っ!」
「もう、これ以上は続けられません」
「……じゃあ、1度だけ目を閉じてくれませんか?」
「…わかりました」
医者が目を閉じたのを確認した犬司は、美春の頭に優しくキスをした。
私はそれを、ドアからこっそり見る。
不謹慎だが…美春が羨ましいな。
「もう…いいです。ありがとうございます」
犬司は私に気付かず、どこかに行ってしまった。
私は犬司を追いかけたが見失い、ナースステーションに着いた。
「…ねぇ、美春さんって可哀想よね」
ナースたちが何かを話している。
「ああ、中学生なのに、両親いないし、意識不明になるし、下半身や背中に火傷の傷が残っちゃってるし、不幸よね~」
言いたい放題だな…。
「あの1か月前の放火事件さえなければね…」
「最近放火事件が多いわよね…」
そう、このナースたちが言うように、最近この町では放火事件が増えている。そして…。
「そういえば、あの放火事件で美春さんを助けたのは犬司君だったわよね」
「そうね。犬司君が美春さんを助けなければ、美春さんは死んでいたからね~。それに…」
…私の放火事件の時も、渡すを助けてくれたのは犬司だった。いや、それだけじゃない。
最近よくある放火事件で…犬司は何度か目撃されている。
じゃあ…やっぱり犬司は、あの放火事件の犯人なのか?
デモ、ユガンダカオノワタシヲミテクレルノハ、ケンシダケ。
タトエ、コロサレテモケンシガスキ。
イママダシンユウデイタイカラ、コクハクハシナイケド…。
ワタシガ…ケンシヲマモラナキャ。
ケンシガハンニンデモ、ゼッタイツウホウシナイ。
アイシテル。
モウ、ハナレタクナイ…。
みんなは火傷を、消えない傷や醜い傷だと思っている。でも、それは間違えている。
火傷は地味な人間の肉体に、美しい模様をつける芸術だ。
美春と言う作品は死んでしまったけど、僕の作品はまだたくさんいる。
特に…西先輩は最高だ。西先輩の両親が死んでしまったのは誤算だったが…それはどうでもいい。
彼女の火傷は、まるで仮面をつけているように見え、とても美しい。
絶対に手放さない…っ!
「先輩?どうしたんですか?なんかぐったりしちゃってますけど?」
「…お前を探すために歩き回って、疲れたんだよ」
「そうだったんですか…先輩、見てたんでしょ。美春の事は悲しいですが…僕はもう大丈夫です」
「……」
「先輩、大好きですよ♡」
犬司は怪しく笑う。




