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俺がほしいもの

 

三章 俺が欲しいもの



 俺はタクシーに乗って東京タワーの前まで来ていた。

タクシー代だけでかなりの出費だ。

次の給料日まで持つだろうか、

 店長のコンビニから拝借してきたカッターナイフをポケットの中でカチカチと鳴らす。

今日だけでかなりのサービス残業なんだから、このぐらい許されるだろう。

 はたして、本気を出すのはいつ以来だろうか。

呼吸するたびにすべての細胞が深い眠りから覚めていくようだ。

 力がたぎる。なんて爽快な気分なんだろうか。

きっと奴が求めていたのはこんな気分だろう。

 最高だ。

あの時は毎日こんな気分だった。

 だが俺は何をしてるんだろうか。

何もかもが自分にいい方向に動こうとしている時に、

協力するならまだ分かる。

 しかし俺はいったい何をしてるんだろうか。

考えるのは苦手じゃないが好きじゃない。

先ずは行動をしてから考える。本能のままに。昔のように。


 東京タワーの中に人がいるか確認し中にいた人全員を気絶させ外に放置する。

次にカッターナイフで鉄柱を切り、東京タワーを地面から切り離す。

地面から解放された東京タワーを、右手でよっと持ち上げる。

 中々に重い。なまっているのかもしれない。

 気配を消し手ごろなビルによじ登り、国会議事堂を遠くに見る。

 ここからが本番だ。

スプラッターの名は伊達じゃない。

矢は一発、必ず決める。

 標的は国会議事堂にいるあいつだ。そうあいつも同類ならこのぐらいしないと仕留めきれないだろう。

深呼吸する。刺すような緊張、なんて懐かしい。

 俺は国会議事堂に向けて東京タワーを思いっきり投げた。

 



 もう、コンビニはやめようと決めていた。

さすがに、やりすぎたからだ。

 荷物などないが、店長と夏祭りの時撮った写真は持っていこう。

どうせ客など日に2,3人だ。

 俺がいなくとも、何も困らないだろう。

今度はコンビニまで歩いて帰ってきた。

タクシーに乗る金がなかったからだ。

 コンビニのロッカーから、写真を取り出すと俺の持ち物が

他にないことに気付く。

 何かが飛んできてとっさにそれを受け止める。

缶ビールだ。それもこのコンビニで一番高いメーカーだ。

「一緒に飲むぞ。金はレジに入れとくように。」

 店長だった。


 店長は酒にものすごく弱い。

一口飲んでもう顔が赤くなっていた。

しかし、俺たちは黙々と飲み続けた。

ふと、店長は思い出したように、給料上げてやろうかと言い出した。

俺は、必要ないといったが、何か不満があるらしく不機嫌だ。

「なら、何が不満なんだ! 」

 やけくそ気味に言い放つ。

なにが気に入らないのかわからないが、酔っ払いとはそういうものだ。

「お前いなくなるだろ。」

 なぜかは分からないが、店長は俺がいなくなると思っているらしい。

勘がいいと誉めてやりたいが、しかし酔っぱらうと店長はいつもこれを言う。


「お前がいなくなったら、この店はどうなるんだ。

お前が弁当を握りつぶして、弁償してくれるから成り立っているのに。」


「6割だぞ6割、ひぐっ、どうしたらいいんだ。

一緒に、億万長者になってくれるって言っていたのに。」

 6割も俺の金だったのか、道理でバイトを掛け持ちしても金がたまらないはずだ。

 

 いつもならどこにも行かないと安心させてやるとこだが、

今回は嘘をつくことになってしまう。

 それをしたら、店長を裏切ることになるのではないか。

 そんなことを考えていると店長は眠りだした。

 どうやら酔いつぶれたようだ。


「俺にどうしろっていうんだ。」


 もうなんか馬鹿らしくなっていた。

もうどうでもいいか。


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