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プロローグとヒーローの仕事ってやつ





プロローグ


第三次世界大戦ってのはもう起っているのんだ。


 歴史の教科書には乗らないし、もし、今度戦争が起こればそれが第三次世界大戦になるだろう。

しかし、確かに戦争は起こった。

 みんなは、知らなくて当たり前だ。

なぜなら、お前ら人間同士は戦っていないんだから。


第一章

ヒーローの仕事



 俺は第三次世界大戦では、絶対で極悪非道に世界を救うヒーローだったと思う。

戦いしか知らなかった。気が付いたら戦っていた。そんな言葉じゃ生ぬるい。

俺は戦いの中で生まれ、戦いの中で死ぬ。

はずだった。


今では、誰も知らないようなマイナーなコンビニの、店員だ。

 俺は、戦いが終わった後、何も持ってはいなかった。

そもそも、生きていることさえ不確かだった。

本当に何も、戸籍すら用意されていなかったのだ。


 すべては俺の妄想かもしれない。

そうもとから俺はしがない平凡な人間で、

俺の誇りも苦悩も過去もすべては夢想かもしれない。


 俺の称号はスプラッター。戦車をカッターナイフで切り刻む様な生きる伝説。

まぁ平和は伝説なんて求めてない、つまり俺は必要ない存在だってこと。

それでもいいんだ、俺も平和は嫌いじゃない。


 平和は嫌いじゃないが、コンビニの仕事は難しい。

弁当はいつも潰してしまうし、レジで愛想よくすることはもっと難しい。

 

 この仕事に就こうと思った。というか、就くきっかけは簡単だ。

 店長に頼まれた。それだけ。


 他に特別な感情などない。

 論理的に考えてありえない。


 その言葉はまさに光のようだった。

 生きがいもなく、親もいない俺には、世界と自分を繋ぐたった一つのものだった。


 だが平和ってのはことごとく俺をないがしろにする。 


 店長にはもちろんだが、

 後輩で、しかもバイトの沙紀ちゃんにすら頭は上がらない。

「おい、会計まだかよ、おっせーなー」

 人がボーっとしている時に話しかけるような、空気を読めない奴は、

コンビニに来る資格はないと日々思っているのだが、

このことを話したら店長に叱られた。


 物覚えが悪い俺でも、こいつのことぐらいは覚えてる。

 この店の数少ない常連で、町生粋の不良だ。

まさにエリート、猫さえ道を開けるほどの。

 こんなやつ一昔前ならぼっこぼこだが、今の俺はスプラッターではないコンビニ店員だ。

対応としては、

「すいません、ただいま」

 これが正解なのだ。

 本当に嘆かれるべき時代になった。

 それとも、俺が嘆かれるべき存在なのか。

 決して叩き潰してはならない。こんなやつでもこの店の常連なのだ、

失礼は許されない。

 ささっとレジに缶コーヒー通す。

「あ、すいませーん。コーヒーホットにしてください。レンジで、」

 なんでアイスのコーヒーをレジまで持ってきたのだろうか。

こいつはバカか。

そもそも、レンジで缶コーヒーを温めたら俺はくびだろう。

 なにより、店長に怒られてしまう。

「はい、ホットですね。」

 ホットのコーナーからコーヒーを持って来て、替えてやる。

「ありがとうございました。」

 取り替えたコーヒーを渡して笑顔をサービスだ。


 不良がひきつった笑みを向けてくるが気のせいだろう。

 

 そういえば、俺が笑うとみんなこんな顔をする。

何かおかしなところがあるのだろうか。

「またお越しくださいー。」



 む、探偵が青ざめた顔をしてはいってきた。

探偵とはこいつの職業であり名前である。本名は大喜多 探偵、


 しかし俺は名前以外は、こいつは探偵の職業には向いていないと思っている。

事件を依頼されればうちの店長に依頼してくる、ヘたれ野郎だ。

「やあ、て、店長どこかな」

 別に今のは、俺が笑顔の練習をしていたからどもったわけじゃない。

いつも俺に対しては、この調子なのだ。

 もう長い付き合いなのに、本当に失礼な奴だ。


 店長なら休憩室で売り物のロールケーキを頬張っていることだろう。

しかし探偵にいつも頼られてはいるが、われらが店長が名探偵という事実はない。

 確かに人より運はいいだろう、しかしそれだけだ。

 彼女が動けば勝手に事件のほうから解決に向かって動き始めると探偵は勘違いしている。

「探偵か、どんな事件だ店長に任せなさい。」

 冷静を装いながらも内心ワクワクしているのだろう。

 少し早口になっている。

 今、小走りで休憩室から出てきた彼女こそが、

推定24歳、本名不明の店長だ。

 ケーキのクリームが口についているがいつものことなのであえて指摘はしない。

 今は髪の毛をポニーテイルにしている。

 いつもは、肩まである髪を縛ったりはしないので、ケーキを食べるために縛ったに違いない。

 なかなか見れないが、横で縛っているのが最も似合っていると俺は思う。


 探偵から事件の内容を聞かされる。

 それはいちばん店長の気を引きそうな、絶対来てはいけないような類の事件だった。

 この24時間営業のはずのコンビニは不定期に休業する。

closeの看板が用意されているコンビニは、この広い東京を捜してもここだけだろう。

 俺は、電話でバイトの沙紀ちゃんを呼びつける。

「もしもしー、えっ、今日は非番ですけどー。あ、もしかしてあれですか」

 そうあれだ。休日出勤だが来てもらわないと店長がすねる。


 事件の概要はこうだ。

明日の夜12時ちょうど、国会議事堂を破壊するという怪文書が、

探偵の探偵事務所に送られてきたらしい。

なるほど明らかに悪戯である。だが店長は信じるだろうそれが店長だ。

「なぬ、それは大変だ、私の出番というわけだな。

この美少女名探偵がズバッと解決してやる。」

 なぜそんなに自信満々なのか。


 確かに猫さがしや下着泥棒しか最近事件はなかった。

平和ってのは、人に事件や波瀾を求めさせる。

 それがどんな人間であっても。

 まぁ、店長がワクワクするのも解らなくはない。


 それは悪戯なんじゃないかと俺が探偵にこっそり問いかけると、

あながちそうも言いきれないらしい。どうやら探偵も初めは疑っていたらしいが

それはそうだろう、こんなものが本物だとは考えにくい。

 だがその怪文書には、我々の本気を知らせるためハチ公を爆破すると書いてあったらしく、

そしてハチ公は爆破された。


 だが今から警察にこれを見せても信じてはもらえない、

警察はハチ公の爆発を見てから作ったと思うだろうからだ。

それで困り果てここに来たらしい。

 正直、店長の手には負えないだろう。しかしこれはどうするべきか、

なにせ、いまだに悪戯とも考えられる。

それに悪戯でないにしろ、ハチ公を爆破したからって国会議事堂を爆破するとは限らないのだ。

 しかしもう店長はやる気を出してしまっただろう。

こうなったらおれたちは巻き込まれるしかないのだ。

 正確には俺は、だが。


 まず俺たちは店長の命令で聞き込みに出た。

店長いわく、何事もまず聞き込みから始まるらしい。

 刑事は足だといっていた。店長は刑事ドラマが好きなのだ。

なら行くしかないだろう。

 俺は刑事になりきってやる。

 俺は爆破されたばかりのハチ公像の前に来ていた。

 ハチ公も主人の帰りを待っていたら、爆破されるなど思いもよらなかっただろうに。

可愛そうなやつだと同情した。


 まだ警察もちらほら見られるが大体の聞き込みなども終わっているらしく、数は少ない。

警官の数は見えているだけで3人、多く見ても6人程度か、

この程度の数なら一瞬で沈められる自信がある。

まぁ、だからなんだという話だ。

 俺は近くにあったタバコ屋のおばちゃんに話を聞くことにした。

聞くことなどないが、形だけでもやっておかないと店長に怒られるからだ。

「おばちゃん、ハチ公が爆破されたとき人はいたか教えてくれ。」

 これは意外と様になっている質問じゃないか。

 おばちゃんは無言でたばこを指さす。

どうやら煙草を買わないとしゃべってくれないらしい。

 たばこは吸わないのだが、店長が好きな刑事ドラマの主人公は、

いつも煙草をくわえていたな。

 たばこを三ダースほど適当に買うと、満足そうにうなずいた後に話し始めた。

「ありがとよ、おばちゃんに何でも聞きな。いくらでも話してやるさ。」

 俺は同じことをおばちゃんに聞いた。

「変なこときくね、たしかおっさん一人とホームレスの人がいたはずだよ。

あと高校生くらいの餓鬼もいたね。」

 そうか、と答えて俺はコンビニに帰ることにした。

おばちゃんがもういいのかいと言っているが、いいのだ。

 俺は別に犯人に興味はない。

情報を持って帰るという形さえあれば、店長に怒られずに済む、

それに警察が捕まえられない犯人を、俺たちがどうやって捕まえるというのだろうか。


 国会議事堂のほうや、探偵事務所のほうに行っていた奴らも返ってきた。

といっても、店長はテレビを見ていただろうし、探偵は使い物にならないだろう。

 自分で、何か成果をあげられるなら、ここには来ないからだ。

あとは沙紀ちゃんだ。根が真面目な沙紀ちゃんは常に一番の働きをしてくる。

 店長に今日のことをそれぞれ報告する。

沙紀ちゃんはやはり真面目に聞き込みをしたらしく、爆弾が仕掛けられたという国会議事堂に行ったらしい。 

もちろん怪しい人物は国会議事堂に出入りしていないし、

当然だが、そんなものは持ち込めないようになっていると言われたといっている。

 探偵も怪文書を送りつけた奴を割り出そうとしたらしいが、

外国から送られてきているということしか、解らなかったらしい。

そんなのはどうにでもごまかせるのではないだろうか。

 やはりヘたれはヘたれでしかない。

 何か考え込んでいるような店長だったが、閃いた! と叫んで机の上に立つ。

ふわっとスカートが揺らめく。

 まるで、新しいおもちゃをもらった子供のような顔をしている。

 まぁ、子供におもちゃを買ってやったことなどないが。


「謎は解けた。犯人は予告状を送りつけようと思ったが、

怖くなり、当初の予定の政府ではなく探偵のところに送りつけたのだよ。

つまりこれはもはや国の危機だ。我々は断固立ち向かわなくてはならない!! 」


 どの謎が解けたのかわからないが、店長が満足ならそれでいい。

 俺はcloseの看板を閉まってこようと、席を立った。

「というわけで。」

 嫌な予感がする。

「国会議事堂に行くぞー。」

 そんな馬鹿な

 謎は解けたんだろ?

 なぜそんなことをするのだ。

 俺には理解できない、彼女がよく使う正義ってやつを。

 



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