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幻創の楽園 外伝シリーズ  作者: 士宇一
第3章外伝 sideA
8/13

3A-04b ロウの『お肉』 2

 

 +++

 

 

 炎天下の中、ツルハシを振るい続けて約30分。

 

 殻のように硬い外皮を持つ『王蜥蜴』を前に、人並みの体力しかない光輝がまずダウンした。

 

 続いてアギが。2人して砂地に倒れこむ。

 

「……おい。砂漠の民なんだろ? お前がヘバんなよ」

「……うるせぇ」

 

 当時アギの仕事は運び屋。力仕事は本職ではなく、不得手だった。

 

 外皮を剥ぐ作業は思いのほか捗っていない。アギは『王蜥蜴』の硬さに音を上げる。

 

「なんだよこいつ。ヒビ入ってても全然砕けねぇぞ」

「厄介だな。もっとベリベリいけると思ったんだが」

 

 光輝は楔に打ち込もうとしたツルハシやスコップを見て顔を顰める。アギ達から借りた年季物の工具は、その殆どが折れたり砕けたりして壊れてしまった。

 

「これ、どうすんだよ」

「あとで修理しておく。しまったな。先に硬化液に浸けて強度補強すべきだった」

 

 ツルハシなどに使われてる鉄は見たところ劣悪。柄も木製で折れやすい。光輝はアギ達砂漠の民の装備まで考えていなかった。

 

「どうする? 戦車のパーツで破砕機でも作るか? 120ミリ砲もあるが弾が……」

 

 このままでは解体に失敗して焼肉計画が頓挫してしまう。

 

 打開策を考えたところ、結局光輝は1番手っ取り早い方法を取ることにした。

 

 大和を呼んでくる。

 

 

「どうしたんだ?」

「ヒビは入れた。でも硬くて砕けない」

「わかった」

 

 短いやりとり。何がわかったのか知らないが、大和は尻尾に向かい「セッ!」と、気を吐いて鋭い回し蹴りを放った。

 

 ズシン! 重い衝撃が尻尾全体に浸透。たった1撃でヒビ割れた外皮が呆気無く、ボロボロと崩れ落ちる。

 

「これでいいか?」

「助かった。戻っていいぞ」

「ロウ! なな、なんだよ、今の、それ!?」

「何、って普通に蹴っただけじゃないか」

「まあ、いつもならこのくらい蹴り飛ばすからな」

「なっ……」

 

 『普通』の基準がどこかおかしい。アギは驚きから口をパクパクして光輝たちを見る。

 

「尻尾を千切ってきたのもロウだぞ。今更だろ? 諦めろ」

 

 納得できなくても受け入れろ。平然とアギに言う光輝。

 

 そうでなくとも、大和は彼等の前で《虎砲》も蹴り飛ばしてみせたのだ。本当に今更である。

 

 

「……どんな身体強化の術式を使えば、あんなことできるだよ?」

「さあな。尤も、あいつはあれで人間ノーマルなんだが。さて。皮も剥いたし次の工程に移るか」

 

 

 外皮を剥かれた尻尾は白くてぶよぶよしていて、まるで何かの幼虫みたいだった。

 

「これが肉なのか?」

「皮下脂肪だ。爬虫類らしく日光から得る熱を蓄熱して体温を維持するらしい」

「へぇ」

「あと衝撃を吸収する役割もあるな」

 

 光輝は『目』から得た薀蓄うんちくを披露。

 

「相撲取りの身体付きと同じだ。脂肪の鎧を纏って本体の筋肉を守っている。ロウの拳が『王蜥蜴こいつ』に効きづらかったのは、おそらく硬い外皮で弾いただけなく、この分厚い脂肪が打突の衝撃を受け止めていたんだろうな」

「だからか」

 

 納得するのは大和。アギは『スモウトリ』を新種の鳥かと勘違いして首を傾げている。

 

「脂肪を取り除いてやっと肉だ。流石にこいつの脂身は食いたくない」

「脂身はうまいぞ。この量はどうかと思うが」

「だから食うな。でも、燃料かなにかに使えるかもしれないな」

 

 光輝は大和を見る。

 

「そういえばロウ。そっちは終わったのか?」

「掘り出した。みんなには周囲の砂を掻き出して穴を広げてもらっている。あとはどうする?」

「俺もそっちに行く。というわけでアギ、あとは任せた。今度はスコップやナイフでいけるだろ? 脂身を取り除いて肉を適当にブロックで切り分けておいてくれ。持ち運びできるくらいのサイズで」

「お前はどうするんだよ。それに、ロウたちは何をしてるんだ?」

「水の準備だ」

 

 料理には美味い水が欲しいと光輝。

 

 +++

 

 

 集落に戻る光輝と大和。2人は穴掘り現場へと向かう。

 

 大和達B班が穴を掘っていた場所は、光輝が午前中に『遊び』と言って掘っていた場所に加えて数箇所。すべて光輝が指定した場所だった。

 

 

「しかしコウ。どうしてここに、あんなものがあるんだ?」

 

 不思議そうに光輝に訊ねる大和。掘り出しておいて今更だが、信じられないらしい。

 

 彼が尋常でないスピードで砂を掻き出し、地表より10メートル以上も掘り起こしてみつけたもの。それは、

 

「お前が言うにはこれ、水道管なんだろ?」

「遺跡なんだろうな。これも」

 

 砂漠の民が発掘するという遺跡がどんなものか知らないが、これこそ偉大な先人の遺産と言うべきだろう。光輝はそう思う。

 

 光輝には『目』があったから。地中に流れる魔力の残滓を『見る』ことができなければ、彼も気付かなかった。

 

 

 砂に埋もれてしまった《西の大帝国》。その地下水道は。

 

 

「正直すごいぞ。掘り出した管はほんの一部。水道網は見渡す限り、辺り一帯に敷かれている。それも俺達が最初にいた砂漠の、そのずっと先までだ」

「本当なのか?」

「ああ。しかもこれは400年以上昔から今日までずっと『稼働』している魔法陣、つまり《魔術回路》だ。水の流れを利用した、大規模な魔力の永続循環パーマネントシステム。こんなとんでもないものを創るなんて」

 

 流石は異世界、と珍しく興奮しているらしい光輝。彼にしかわからないような、もの凄いテクノロジーの産物らしい。

 

 別に技術テクノマニアでない大和は水道網の規模にこそ驚いたものの、そのあとは「ふーん」と相槌。

 

「どんな儀式を……いや、これはどんなモノの『器』に使ったんだろうか」

「コウ。調べるのはあとにしてくれ。それで、この水道水(?)は使えるのか?」

 

 もちろん、と光輝。だからすごいんだと力説する。

 

「でも水を出すのはあとだ。まずは……」

 

 集落の皆から絶大な信頼を得た焼肉の伝道師(大和)を経由して、光輝はB班に次々と作業の指示を送る。

 

 +++

 

 

 2時間後。集落に戻って来たアギは光輝マガヤンを探していた。彼は相当に怒っている。

 

 

 彼らA班の解体作業は粗方終わり、1度に運べないほどのブロック肉が山のようにできあがった。しかし、皮下脂肪を取り除く作業の際、アギたちは全身ベタベタの脂まみれになって散々な目にあったのだ。

 

 風で舞い上がった砂埃が、髪や服肌と全身に張り付いて気持ち悪い。A班の中で被害を免れたのは途中で抜けた光輝だけ。きっと彼は脂まみれになるのは予想していたに違いない。

 

 わかっていて逃げたのだ。そう思ったアギは光輝に腹を立て、文句の1つ言ってやろうと思っていたのだが。

 

 

「おいマガヤン! お前ら……何やってるんだよ?」

「見てわからないのか? 一仕事して汗をかいたからな」

 

 風呂だ、と言うのは半裸(下半身だけハーフパンツ型のインナー)で湯に浸かる光輝。彼だけでなく大和やB班の男たち、それに子供たちが湯を張った大きな窪地で思い思いに水浴びを楽しんでいる。

 

 B班の作業は地下水道の発掘と、そこから水を引いて水を溜めるプール作りだった。

 

 プールは一見して岩盤風呂。10人ほど中に入れる、浅く掘った大きな穴が3つ。そこに岩や石、砕いた『王蜥蜴』の外皮を敷き詰めて作ったものだ。

 

 細かな隙間は、光輝が気密保持の修繕に使うコーティングスプレーで膜を張り処理している。お湯も光輝が炎系の魔法を保存していた《回路紙トランプ》を使って沸かした。

 

 温泉ではないが露天風呂だ。開放感が格別で気持ちいい。水風呂も用意している。

 

 

「ご苦労さん。解体が終わったならA班の奴らも呼んで一風呂どうだ? 代わるぞ」

「おまっ、なん、水……?」

「アギ?」

「あー!!]

 

 絶叫。アギは状況についていけずパニックに陥った。プールを指さしながら怒鳴る。

 

「なんでだよ! ここ何もなかっただろ? なのにこんなにも水が!」

「掘ったんだよ。ほら。あっただろ?」

 

 お宝、宝探し。

 

 その一言でアギは、ここが午前中に光輝が穴を掘っていた場所だと思い出して絶句。

 

 とうとう「がくっ」といった感じで膝をついた。

 

「……さっきのロウといい、お前ら本当に何者だよ」

「さあな。俺が聞きたい」

 

 今まで生きてきた18年間を振り返り、光輝はしみじみと言う。

 

 異世界で露天風呂作るくらいのこと、彼にすればそんなに珍しくない。シチュエーションとしてはマシな方だと、そう断言できる自分がどこか虚しい。

 

「まあ、風呂はお前らが汚れて帰ってくることがわかっていたから用意したんだ。細かいことは気にせずさっぱりしろ」

「あ、ああ……」

 

 誰を相手に張り合おうとしていたんだろう?

 

 納得できなくても受け入れろ。もう何度目かわからない展開にアギも諦めがついてきた。

 

 何より風呂なんて、贅沢な水の使い方をするのは魅力的だ。体中がギタギタのドロドロだし、普段も汗を拭うだけのアギは水浴び自体が久しぶりだった。

 

「……入っていいのか? 俺、泳げないぜ」

「お前、他の奴らと同じ事言ってるぞ」

 

 砂漠の民に風呂に入るという習慣がないからだろう。おおきな水たまりを前に遠慮がちというか、尻込みしたといった感じのアギ。光輝はそれを見て呆れてしまう。

 

「いいから入れよ。深さも腰よりずっと下だ。悪ふざけしなければ溺れはしない」

「そ、そうか? じゃあ……」

「待て。ちゃんと着替えを用意してこい。それと入浴の前に体の砂や脂は洗い流せよ。湯をなるべく汚さないようにな。髪が長いなら束ねるかタオルを巻いて、ああ。タオルを湯に浸けるのも駄目だぞ」

「細けぇよ!」

 

 公衆浴場でのマナーである。

 

 

 さっぱりしたB班とギタドロのA班は交代。光輝の小言のようなレクチャーを受けて、ようやくアギも風呂だ。

 

 早速体の汚れを落とそうと服を脱いでいたところで。

 

 

「マガヤンさん。こっちはかまどとか、色々準備できたよー」

 

 

 バッドタイミングでリュッケがこちらへやって来る。C班こと集落の女たちは、今晩の焼肉大会に備えて細細とした準備をしていた。

 

「あとは何するの……って」

「リュッケ!?」

 

 光輝に指示を仰ぎにきた彼女(15の乙女)は、そこで全裸で水に戯れる野郎共という刺激の強い光景を見てしまった。

 

 あと服を脱ぎかけて半ケツ状態のアギも。

 

「きゃあーーーーっ!! アギ兄のへんたーーーーい!!」

「ちょっ、待て! ぐふぅっ!?」

 

 突き飛ばされたアギはプールに落ちた。

 

 水風呂だった。

 

 

 アギの悲鳴を他所に、さっぱりした光輝は『事故』だと割りきって最後の行程に移ろうとする。

 

「ロウ。A班は水浴びしてしばらく休憩。B班には天幕の布でも使って岩盤プールの周囲に間仕切りを設置するよう指示してくれ。女たちも入れるように」

「お前は?」

「調理に入る」

 

 +++

 

 

 光輝はリュッケ以下数名の女たちを連れ、アギたちが切り分けた『王蜥蜴』のブロック肉のスライスにとりかかった。

 

 まずは下ごしらえ。ブロック肉を塩水に漬けて、揉み込んで血抜きを何度も繰り返す。スライスした肉もよく洗う。

 

「わっ。水の色がすぐ変わっちゃう」

「どんどん水を替えろ。肉の臭みってのは結局血生臭さだ。生肉で魔獣の肉だから血抜きはしっかりしないとな」

「こんなにたくさんのお水……なんだかもったいないね」

「このために水を掘り出したんだ。遠慮無く使え」

 

 ブロック肉は山ほどある。下ごしらえだけで日が暮れそうだ。

 

 下ごしらえは手の空いた男たちにも手伝わせ、光輝は別の作業に入る。ここからは大和が持参していた調味料の出番だ。

 

 

 まずは血抜きしたブロック肉の表面に塩を振り、しばらく置いて余分な水分を抜く。その間に味噌、味醂……がない。

 

「大和め。味醂がないじゃないか」

 

 大和にすれば調味料なんてソース(味付けにかけるもの)でしかない。仕方ないので味噌と砂糖を醤油、大和が狩った『蠍蜂』の蜜で伸ばして味噌生地を作る。これをブロック肉に塗り込み布や大葉で包めば味噌漬けの完成。

 

 焼肉は塩で焼いてもいいが、ここは味のバリエーションを増やして醤油や味噌ベースのつけダレ、粉末出汁を使ったしゃぶしゃぶ、大和が採ってきたナツメヤシの実を使ったデーツ(果実)ジャムソースも作ってみる。

 

 大和が『王蜥蜴』以外に狩ってきた魔獣の内、食べられたのは『蠍蜂』の尾に蓄えられた蜜に『砂鮫』。あと動くサボテンだけ。

 

 蜜はそのまま使い、『砂鮫』は背ビレを煮込んでフカヒレスープに。サボテンは果肉を刻み下茹でしたあと、水で冷ましてドレッシング。サラダとした。

 

 並べられるソースの数々に感心するのは、調理を手伝っているリュッケや女たち。光輝が味付けのことで砂漠の民の口に合うか味見を頼んだところ、どれも初めての味だと絶賛された。

 

「カレー粉とか香辛料もいくつかあるが、野菜がないとバリエーションが少ないな。肉だけだと胸焼けしそうだ」

「マガヤンさん、なんかすごいよ! 実は料理人なの?」

「それなりできると言っただろ。料理も知識と技術の産物だ。味付けくらい調味料の比率を覚えておけば応用でなんとでもなる」

「これで『それなり』なの?」

 

 へこむリュッケ。「料理は女の仕事」と光輝に言った彼女も、実力差を見せつけられて女のプライドが傷ついた。

 

「……だってこんなにたくさんのお肉とか、お塩とかもいっぱい使ったことないもん」

「何をいじけている? いいからロウと兄貴を呼んできてくれ」

 

 

 という訳で呼ばれて来た大和とアギ。2人とも体からほかほかと湯気を出して、どこか小奇麗。

 

 そんな2人におつかいを頼みたいと光輝は言った。

 

「近くに市場のある集落があるんだろ? 野菜と、それに塩をもっと買って来きてくれ。燻製も作りたいから茶葉か香りのあるものもあるといいが」

「今からか? 無茶言うなよ」

 

 無理だと言うアギ。

 

 近くと言っても市場は、砂漠渡りに馴れたアギでさえ半日もかかる距離にある。

 

「それに余計な金なんて、俺達にはねぇよ」

「金はなくても肉はあるだろ?」

「あ? こいつは」

 

 手渡されるたくさんのブロック肉と鉄板。光輝は2人で売って来いと言う。

 

「物々交換でも焼肉して商売してもいい。腕の見せ所だ、未来の大商人」

「……リュッケか? 余計なこと言いやがって」

「誰でもいいだろ。ロウ。お前はアギを担いで一走りだ。日没までに帰ってこい」

「俺は馬代わりか?」

 

 帰ったら焼き肉だと言えば、大和はそれ以上文句を言わず「わかった」と一言。

 

「わかったってロウ、日没まであと何時間だと……」

「尚更急ごう。道案内を頼む」

「待てって、どわっ、ちょ、まっ……ぎゃあーーーーっ!?」

 

 アギと荷物を担いだ大和はリミッター解除。全速力で走り出す。

 

 あまりのスピードに2人は、アギの絶叫だけを残して集落から一瞬で姿を消した。

 

「大和のあれ、キツイんだよな。長距離走なら特急車両とタメ張れるし。……まあ、いい。あとは残った肉だが……」

 

 焼肉は50数名の集落の民に対して6、70人前ほど用意したが、それでもブロック肉の山は崩れない。だけど調味料が殆ど残っていない。

 

「塩漬けは無理だな。冷凍って手段もあるが、冷凍庫もなければ長持ちしないか。ここは油漬けして保存だな。確か低温で油茹でするんだったよな?」

 

 どのみち味付けに塩で揉み込む必要があったが、油漬けには取り除いた脂身を使おうと光輝は考える。

 

 それから茹でるのに大きい鍋が必要なので、装甲板で自作しようと「つまみ食い禁止」と厳命してからこの場をあとにした。

 

 

「あれ? マガヤンさん休憩? このあとはどうするの?」

「残りは買い出し組待ちだ。そうだな。プールの湯を張り直しておくから、今の内にお前たちも風呂に入るといい」

「ええっ!? お風呂なんてわたし、泳げないよ」

「……どうして風呂と聞いて泳ごうとする」

 

 これが異世界の異文化か?

 

 何度目かわからない砂漠の民の反応に光輝は訝しむ。

 

「体洗って、湯に浸かるだけでいいんだよ。今度は覗き防止の間仕切りも作ったからもう『事故』はないだろ。遠慮せず裸になって、女同士で戯れろ」

「その言い方なんか嫌!」

 

 リュッケは先ほど見てしまった、集落の男たちの裸を思い出してしまい真っ赤。

 

「でも。お風呂とか焼肉とか、なんか楽しいね。みんなでこうやって楽しそうなことするのはじめて」

「そうか?」

「うん! 他所の国でやってるお祭りってこんな感じなのかな?」

「かもな」

 

 それでふと『日常』を思い出す。夏休みが明ければ高校は文化祭だ。

 

 今年もきっと、準備段階からあらゆる方面で裏方としてこき使われるに違いない。こんなときばかり頼りにされるのもどうかと思う。

 

 だけど。

 

「楽しんでもらえて何よりだ。焼肉しようと言ったのはロウだから、礼ならあいつに言ってくれ」

「マガヤンさん?」

「祭りなんだろ? だったら焼肉は盛大にやってやる。今晩は俺達に付き合わされて後悔するくらいに思いっきり楽しめ」

「……うん!」

「食いに食いまくって、お前らみんな、ぶくぶくと太るんだ」

「それは嫌!」

 

 リュッケを適当に弄って楽しむ光輝。弄られるリュッケも楽しそうに笑う。

 

 

 こうして焼肉大会改め、焼肉大祭の準備は光輝主導(表向きは大和とアギ)で進められていく。

 

 このあと光輝は「風呂に入る女たちを覗こう」と言っては男たちを煽り、その上で覗き防止に仕掛けた罠に次々とかけるという1人タチの悪い遊びをしたり、『乗り物酔い』したアギと大和が、沢山の野菜や食べ物を持って帰ってきて皆を驚かせたりと大騒ぎした。

 

 

 そして夜。『王蜥蜴』の脂を利用した松明をふんだんに使った炎の明かりの中で、集落ではじめてのお祭りがはじまった。

 

 +++

 

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