3-1
彰太は二階の自室に圭人を招き入れた。
勉強机の上には漫画が山積みになっていて、テレビにはゲームの配線が繋がれたままだ。
絨毯が敷かれた床に、じゃがりこの空き容器。
「チーズとサラダ、どっち食べる?」
彰太は赤と緑の容器を手にする。
じゃがりこだ。
圭人はチーズのを選んだ。
荷物を部屋の隅に置き、圭人は彰太の側に座った。
そして食べようとした時、不意に自分の手が臭った。
キャッチャーミットの革の匂い、というよりは、中で手汗と雑菌が混じった酸っぱい臭い。
今日は長時間キャッチャーミットを着けていたから臭いもひとしおだ。
「ちょっと、手洗ってくる」
「どうかしたの?」
「手、めっちゃ臭い」
その時、彰太の表情が僅かに変わった。
「ああ、下の廊下の一番奥に洗面所があるから、そこ使えよ」
「サンキュー」
圭人は部屋を出た。
階段を下りる音を確認すると、すぐさま彰太は圭人のキャッチャーミットを手にした。
手を入れるところを匂ってみる。
微かに酸っぱい臭いがして、彰太は興奮した。
でも足りない。
彰太はキャッチャーミットを手にはめた。
じっとり湿っているのは、圭人の手汗だろう。
彰太は移り香を求め、中で指を何度も擦った。
心拍数が上がる。
すると、階段を上ってくる音が聞こえた。
慌てて彰太は、キャッチャーミットを初めにあったように戻し、平静を装った。




