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グラウンドで彰太と圭人は合流し、彰太の家へ向かった。
橋を越え、踏切を渡り、隣町に入った。
もう三十分は漕いでいる。
圭人の足は痛みを帯びていた。
「まだ?」
「あの坂登ってすぐ」
彰太の指差す先には、緩やかながらも坂がずっと続いている。
「一気にスピード出して登るんだ!」
彰太は立ち漕ぎでぐんぐん加速していく。
「あ、待って!」
少し遅れて圭人も懸命に付いていく。
自慢の六段階ギアの性能は上々で、圭人を抜いていく自動車がやけにのろく感じられた。
そうして坂を駆け上がると住宅街に入り、やがて彰太は自転車を停めた。
「ここ」
須田という表札が掲げられた、そこは大きくもなく小さくもない、至極普通の一軒家。
駐車場に車は無い。
「今夜は父さんも母さんもいないんだ」
彰太は鍵を開けながら言った。
「お邪魔します」
圭人は家の中へ入った。