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圭人は手の臭いを嗅ぎながら来た。
「取れたと思うけど、どう?」
彰太は急に差し出された圭人の左手にドキッとする。
「え、ああ……」
両手でそっと掴み、鼻先へ持ってくる。
柔らかい手から石鹸の香りがした。
「臭くないよ」
「よかった。ちゃんと手入れしてたんだけどなー、最近臭うようになっちゃった」
圭人はじゃがりこをつまんだ。
「下手くそだからだろ。俺のは全然そうならないもん」
彰太はテレビゲームを起動した。
「コントローラー、兄貴のと合わせて二個あるけど、やる?」
「何のゲーム?」
「いろいろ」
彰太は段ボール箱を引っ張り出した。
中には数十種類のゲームソフトが入っていた。
RPGからカーレース、プロレスまで幅広い。
圭人はやはり、野球のゲームを選んだ。
オープニングも飛ばさずにしっかりと見て、二人はそれで遊び始めた。