『学園のマドンナAliceは、俺の前だけ甘すぎる』
趣味で書いたオリジナルの学園ラブコメです。
学園のマドンナでモデルとしても活動するAliceと、恋人の正樹の甘々な日常を描いています。
よかったら最後まで読んでもらえると嬉しいです。
春、花びら舞う3月。
朝日の差し込むベッドで寝ていた俺、近藤正樹は、スマホのアラーム音で目を覚ました。
目を擦っていると、ふと暖かな温もりを感じる。
右腕の方を見ると、そこにはサファイアブルーの髪をしたグラマラス美女が、黒のランジェリードレス姿で寝ていたのだ。
「又か……」
そう思いながら、俺は美女の名前を呼んだ。
「Alice、起きて」
優しく声をかけるが、Aliceはまだスヤスヤと寝息を立てている。俺はその肩を揺すった。
「Alice」
もう一度呼ぶと、ようやくAliceは金色の瞳を開けた。俺を見つめながら、ベッドの上で上体を起こす。
「おはよう、正樹」
透き通った声で俺の名前を呼ぶと、Aliceは笑みを見せた。
「正樹。ねぇ……私の顔見た?」
見たも何も、朝日の眩しい光と、Aliceのわざとらしいアングルで顔が見えたのだ。
だが、それは言う訳にはいかず。
不意にAliceを見ると、サファイアブルーのロングヘアーが日差しの中で煌めいていた。
綺麗だなと思っていると、Aliceは金色の瞳で俺を凝視してくる。
「どうしたの、Alice」
そう聞くと、Aliceは俺との距離を縮めてきた。
その時、透き通った白い肌に目を奪われ、俺は目線を逸らした。
「何で逸らすの?」
そう聞かれた俺は、Aliceに優しく言った。
「今日も綺麗で可愛いね」
「ありがとう」
Aliceは俺のそばに座り直すと、そのまま抱きついてきた。
「近いよ」
やんわりと言う俺に、Aliceは甘えた声色で返す。
「近づいてるの」
更に寄り添ってくると、続けて言った。
「いいでしょ、私と正樹の仲だから」
どこか優越感のにじむ満面の笑みを見せるAlice。
確かに、いつもの事だし、いいよな。そう思うと、俺もそれ以上何も言えなかった。
そんなことをして数分経った頃、Aliceが甘く囁いた。
「私、正樹のこと好き。寝顔とかね」
「Aliceの事好きだよ」
その瞳を見つめながら言うと、Aliceも甘く返してくる。
「私も正樹の事好き」
「うん、それより着替えるから」
俺が少し頬を赤くしながら言うと、Aliceは満足したのか、俺から離れた。
ベッドから下りながら、俺に言う。
「分かった。愛情込めて朝ご飯作って待ってるね」
そう言って部屋を後にした。
「全く、Aliceは」
頬を赤くしたまま、俺もベッドから起き上がる。
「いつもの事だしな」
そう呟きながら制服に着替えて身だしなみを整え、部屋を出て1階のリビングに向かった。
リビングでは、Aliceが鼻歌混じりで朝ご飯を作っていた。
「何作ってるの?」
後ろから話しかけると、Aliceは俺の方を振り返った。
公立高校のセーラー服を身に纏い、その上にエプロンを着けている。
「正樹はリビングの椅子に座っていていいよ。もう出来るから」
フライパンでは、ウインナー6本と目玉焼きを焼いていた。
ウインナーの皮がパリッと音を立てると、Aliceは小声で言った。
「よし」
ウインナーと目玉焼きを二つのお皿に盛り、既に出来ている味噌汁を器に注ぎ入れる。
ご飯も俺の分をつぐと、慣れた手つきで持ってきてくれた。
Aliceがテーブルの向かいに座る。
美味しそうだなと俺が心の中で思っていると、声をかけられた。
「さぁ食べよ、正樹」
俺はAliceが作ってくれた朝ご飯を食べ始めた。
「美味いな」
ウインナーを食べながら言うと、Aliceは照れながら返した。
「そう、良かった」
そう言いながら、Aliceも食べる。
にしても、絶妙な焼き加減だな。塩コショウのバランスもいい。ホントAliceは料理上手だ。
「良かった、褒めてもらえて」
安堵した様子のAliceと、一緒にご飯を食べた。
食後、Aliceから感想を聞かれた。
「どうだった、朝ご飯足りた?」
「量も丁度いいし、Alice手作りのご飯、美味しかったよ」
俺が答えると、Aliceは頬を赤くした。
「ありがとう。昼ごはんも弁当用意してるから楽しみにしてね」
「楽しみにしてるよ」
そう言って、サファイアブルーの髪を撫で上げる。Aliceも頬を赤く染め、嬉しいのか小声で言った。
「ありがとう」
「なんか言った?」
俺が聞くと、Aliceは立ち上がった。
「何でもない。片付けるね」
食器を台所に運び、洗い始める。
その後、俺が時間までソファーでテレビを見ていると、皿洗いを終えたAliceが前触れなく右隣に座った。
そのまま俺の右腕に腕を絡ませてくる。
「どうしたの?」
「こうやって正樹と一緒に毎日過ごせるのが嬉しくて、それでね」
恥ずかしいのか、Aliceは耳までほんのり赤く染めた。
「これからもいっしょだよ」
俺は両腕を伸ばし、Aliceの背中に回した。
俺からそうされるとは想定していなかったようで、Aliceは頬を赤く染める。それでも、お返しとばかりにおんなじ様にしてくれた。
そんなやりとりを数分したのち、俺から声をかけた。
「Alice、学校行くよ」
「ねぇー、もう少しだけ」
甘く言って袖を掴み、離してくれない。
だが、流石に学校に行く時間が迫っていた。
「Alice、この辺で」
「分かった」
ようやくAliceが離れると、お互いカバンを持った。
Aliceは二人分の弁当をカバンに仕舞い、一緒に玄関を開けて学校に向かうのだった。
通学路にはコンビニが何軒かあり、時折学生を見かける。
俺とAliceはコンビニには寄らず、横並びで歩いていた。
「正樹……朝だからかも知れないけど冷えてるね」
Aliceが冷たい手のひらを俺の頬に当てた。
「確かに冷えてるな」
「でしょう、もう春なのに寒いよね」
「手をつなぐ?」
俺が聞くと、Aliceは小首を傾げながら右手を伸ばした。互いに手を握り合い、俺は言った。
「これで寒くないね」
そんな俺たちに、周囲の学生達は三者三様の反応を見せた。
「朝からいちゃついて」
「あの子Aliceでしょ……誰なの、あの男子」
おんなじ学校の女子生徒からなのか、そんな声が聞こえ、男子からは、
「何でマドンナと登校してるんだ」
「ありえねー、何でなんだ」
といった声が聞こえた。
鋭い視線や嫉妬を感じるなか、俺はAliceに小声で言った。
「目立つな、やっぱり」
「いいじゃない、別に。それに私たちの関係は、濃厚で深いんだから」
Aliceは周囲を一瞥してから、俺の瞳を見つめて微笑んだ。握った手に優しく力を込める。
「本当、Aliceは」
俺も一瞬、優しく笑みを向けながら歩いた。
周りを気にせず歩き、校門前まで来ると、俺とAliceは握ってた手を解いた。
そのまま普通に校門を抜け、校舎内に入る。
教室に入ると、俺は1番後ろの窓ぎわの席に座った。Aliceも隣の席に座り、話しかけてくる。
「なんか話す?」
俺はふと窓から外の空を眺めながら、Aliceとの出会いを思い返すのだった。
それは俺が中学の頃。親の都合で、アメリカのミドルスクールに通っていた時の事だ。
中学1年の俺は、ある噂を聞いた。
どうもこの学校のチアガールに天才美少女がいるらしく、その子に告白する男子もいるらしい。
よくいるやつなのかな、とは思ったのだが気になり、その日から学校の中を探してみた。
3日経っても、見つからない。
普段人が集まらない場所はどうだろうと校舎裏を覗くと、そこにサファイアブルーの髪と金色の瞳の美少女がいた。
制服姿で振り付けを確認している。
「うん、今のはいいわね」
満足げなその美少女は、ふと言った。
「そろそろクラス戻らないとね」
その時、視線を感じたのか、こちらを見た美少女と目が合った。
「ごめん、覗きとかではなくてね」
誠心誠意謝る俺に、美少女は聞いてきた。
「分かったから。ならなんで声かけないの?」
つい見惚れてしまったとは言えず、俺は黙ってしまった。
それが悪かったのか、美少女の癇に障ったようだった。
「もう今後見に来ないで」
強い口調で言われ、まずいと思った俺は、つい口にしてしまった。
「その、あんまり綺麗だったから」
「何それ、それで許すと思うの?」
それは分かる。だが、俺は美少女に聞いた。
「ならなんでこんな場所で練習してるの?」
「別にいいんじゃない、どこでしようが」
強い口調で返される。
「なら俺が見ててもいいよね」
美少女は面食らったのか、ため息をついた。
「なにそれ、はぁー……もういいわよ。ただし条件付きね」
「分かった、それで条件は?」
俺が内容を聞くと、美少女は今更自己紹介していない事に気づいたのか、名乗った。
「私の名前はAlice。あなたの名前教えて?」
「俺は正樹、近藤正樹」
「分かった、正樹ね。覚えたから。私のことAliceでいいから」
そう言って、Aliceは条件の話に戻った。
「改めて条件ね。そう、客観的に私の振り付け見てくれる? その方が感想聞けるしね」
「分かったよ」
この日から、時折Aliceの振り付けを見るのが俺の習慣になったのだ。
そんなある日、Aliceは気分が落ち込んでいた。
「実はね、この間の練習で足を挫いて、監督にセンターから外されてね、それでショックでね」
俺は何も言えなかった。ただ、何かあれば相談して欲しいと思った。
「ただ、何かあったら相談してくれ」
「うん、そうする」
Aliceは早速、俺に聞いてきた。
「早速だけど、最近モチベが下がってるの。どうしたらいい?」
「そうだな、それなら前向きに考えてみたら」
俺は続けた。
「例えばさぁ、今の内に大会選手の動きを動画で見て、足りない所を確認したり、Aliceならこうするかなとか考えてみたら?」
「なるほどね、動画見てみるね。後、気になることあったら教えて」
俺はAliceの瞳を覗きながら言った。
「Aliceはさ、綺麗で可愛いから自信持ったら。そのサファイアブルーのロングヘアー好きだよ、金色の瞳もね」
Aliceは頬を赤く染めた。
「ありがとう」
それからいろんなことがあった。
特に2年生の頃、Aliceは大会優勝選手にも引けを取らない動きを見せるようになり、センターの座を勝ち取った。
そして、全国大会で優勝したのだ。
それに加えて、俺が、
「ミスコン出てみたら?」
と言ったら、その日の内にAliceは親を説得してミスコンに出た。
結果、ミスコンでも優勝してみせたAliceは、学園のマドンナだった。
そんな中、Aliceから呼び出され、俺は最初に会った場所へ向かった。
「来たのね」
Aliceは明るく元気に言った。
「少し待って」
その時、普段の制服ではなく、赤と白のチアガール衣装を身に纏っている事に気づいた。
「その赤と白のチアガール衣装、似合ってるよ」
「ありがとう、嬉しいわ、正樹」
頬を赤く染めながら、Aliceが返した。
「始めるね」
スマホから曲を流し、俺の前で踊り始める。
その振り付けも動きもAliceに合っていて、躍動的だった。何より、Alice自身の強い意志が感じ取れたのだ。
右足を上げたとき、衣装が揺れた。俺は一瞬、視線を逸らした。
Aliceには気づかれていたようだが、それを口には出さず、気にした様子もなく踊り続けていた。
数分間が数十分に感じられる中、チアガール衣装で踊り終えたAliceが聞いてきた。
「どうだった、正樹?」
「最高だったよ」
「正樹に褒めて貰えて嬉しい」
そう言って、俺に抱きついてきた。
Aliceの温もりを感じながらも、流石に驚きを隠せない。
「どうしたの?」
Aliceは俺の瞳を覗き込んだ。
「私、正樹の事好き。付き合って」
「いいのか、俺で」
「正樹だからいいの。それに卒業したら、もう会えないかも知れないでしょう、だから」
俺もAliceを見つめながら答えた。
「分かった、付き合ってくれ、Alice」
「こちらこそよろしくね、正樹」
その日から俺とAliceは恋人となり、一緒に過ごしていく内にお互いさらに好きになっていった。
そして卒業の日、俺はAliceに帰国する旨を伝えた。
「分かった」
Aliceは淡々と言った。
だが、その態度の意味に、俺はこの時気付けていなかったのだ。
日本に戻り、公立高校に1年生として通い始めた頃、それは起きた。
その日は転校生が来るらしく、学校中が騒いでいた。
俺はクラスの1番後ろの窓ぎわの席に着くと、呟いた。
「転校生ね、あんまり興味ないな」
ホームルームの予鈴が鳴ると、クラスの男子も女子も席についた。
すぐに担当教師が入り、ホームルームが始まる。
「では最初に、転校生の紹介だ」
うちのクラスの事だったのか、知らなかった。
そう思っていると、担当教師が短く言った。
「入れ」
ガラリと教室のドアが開き、サファイアブルーのロングヘアーと金色の瞳の美女が入ってきた。
周りを見渡すと、すぐに笑顔になった。
「初めまして、Aliceです。よろしくお願いします」
そう言って、頭を下げたのだった。
もうあれからしばらく経つな。
そう思っていると、隣のAliceが頬を膨らませていた。
「どうしたの?」
「だってさっきから上の空だったから」
「ごめん、Alice。つい昔思い出してね」
「いつのこと?」
俺が思い出していたことをそのまま伝えると、Aliceは頬を赤く染めた。
「もう、恥ずかしい」
「なぁー、Alice」
俺が声をかけると、Aliceはこちらを振り向いた。
「なに?」
今度の土曜日にデートしようと、恥ずかしさ混じりで伝えた。
Aliceは一瞬で沸騰したかのように顔を赤くした。
「いいよ、行こう」
その日の昼休み、俺とAliceは隣同士で座り、手作り弁当を食べながら、具体的にどこに行くか話していた。
「正樹、ご飯粒付いてるよ」
Aliceが俺に付いているご飯粒を指先で取る。
その仕草、可愛いな。そう思いながら、俺は提案した。
「定番のショッピングデートはどう?」
「いいよ、一緒に行こう」
楽しみなのか、Aliceは嬉しさ満開で答えた。
そして当日、俺とAliceは近くにある大手のショッピングモールに来ていた。
「暑いな、それに人が普段より多い」
「今日からリニューアルオープンしてるからね」
「そうなの? 知らなかったよ」
驚き混じりで返すと、俺達は目を合わせた。
思い切って恋人繋ぎすると、Aliceも嬉しいのか、二人して歩き出した。
にしても、今日の白のワンピース、Aliceに似合ってるよな。
「どう、私の服」
そう思っていると、Aliceが両腕を後ろに組み、俺を見つめて聞いてきた。ワンピースが風になびいている。
「うん、似合ってるよ」
「ありがとう」
俺は続けた。
「大人っぽさが引き立つね」
「このワンピース、デザインはいいんだけど、肩出しだから似合うかなと心配だったの。でも、正樹に褒めて貰えて嬉しい」
満面の笑みを俺に向けながら、Aliceは続けた。
「正樹の服、カッコいいよ。Tシャツとデニムのジーパン似合ってるよ」
俺は恥ずかしさに頬を赤くしながら、Aliceとショッピングモールに入った。
中は涼しくて快適だった。
「どこ見たい?」
「じゃあご飯食べたら服見よう」
Aliceは我先にと歩きながら、俺に聞いてきた。
「恋人繋ぎしない?」
「しようか」
お互い恋人繋ぎしながら、歩いていく。
2階のフードコートでは、定番のマックを食べた。
「何買ったの?」
俺が食べているのを見ながら、Aliceが聞く。
「照り焼きバーガーとコーラ」
「エビフィレオバーガーとコーヒー微糖にした」
お互い美味しそうに食べた後、服を見るために3階へ向かった。
周囲からの視線、特に男性からの嫉妬と思われる視線が気になり、二人して足取りを早める。
3階の服の店をブラブラしていると、ふとAliceが言った。
「ここ入ろう」
「Aliceがいいなら入ろうか。どんな店なの?」
「どうもね、新しく入った店みたい」
Aliceは続けた。
「気になっていたんだ。だからどうかな?」
「Aliceが気になるなら入ろうか」
二人で店の中に入ると、俺がカゴを持ち、Aliceはつないだ手を離して色々見始めた。
そんな中、Aliceはある服の前で足をとめた。
「ねぇ、この服どうかな」
「どの服?」
「コレ」
俺の方に服を差し出してくる。
「これって白のワンピースだよな」
「この服の方が大人っぽいと思うの。どうかな?」
Aliceは恥ずかしげに言った。
確かに、このワンピースは肩出しの上、背中も開いてるし、胸元だってV字ラインが入ってる。
流石にAliceでも着る勇気いるよな。
そう思いながら、Aliceがどうして欲しいのか考えた。
「試着したら?」
「うん、そうする」
Aliceは頷いた。
「感想聞かせてね」
そう言って試着室に入ると、カーテンを閉じて着替え始めた。
数分後、Aliceの声がした。
「いいよ」
カーテンが開く。
肩出しの白のワンピースは、やはり背中も開いていて、Vラインのデザインが特徴的だった。Aliceにとても似合っている。
「どうかな?」
「似合ってるよ」
素直に言うと、Aliceは頬を赤くした。
「そう言ってもらえて嬉しい」
その場でクルリと回り、両腕を前で組む。俺にだけポーズをしてくれたのだった。
本当、最高の恋人だよな。
そう思う中、Aliceが言った。
「コレ買うね」
Aliceは一度カーテンを閉じ、その後レジに並んだ。
「お待たせ」
戻ってきたAliceは、俺の右手を握り、恋人繋ぎをした。
「行きましょ」
そう言って歩き出す。
「次どこ行くの?」
「次行く店はね、お楽しみ」
二人でショッピングモール内を歩き、数分後、Aliceは立ち止まった。
「ランジェリーショップなんだけどどうかな?」
不安そうに聞くAliceに、俺は答えた。
「Alice、俺はここで待っててもいいか?」
「ならここで待ってて」
俺はAliceの耳元で答えた。
「分かった」
Aliceは照れた表情を見せた。
「買ってくるね」
買いに行って数十分後、Aliceは満足そうに俺の元に戻ってきた。
「待たせた?」
「大丈夫だよ、それよりいいのあった?」
Aliceは「うん」と首を縦にふった。
再びお互い恋人繋ぎをして、店を後にする。
その後もいくつかお店を回ったが、Aliceは終始満足そうだった。
日も傾いた夕方、俺とAliceはバスに乗って家に帰った。
「今日楽しかったから夕飯大奮発するね。楽しみにしててね」
Aliceは先に2階へ上がり、自分の部屋に入っていった。
それを見た俺も、自分の部屋で一休みする事にした。
どれくらい寝たのだろう。
そう思いながら起き上がると、ドアの前からAliceの声がした。
「正樹、部屋に入っていい?」
「いいよ」
ドアノブが回り、Aliceが部屋に入ってきた。
店で買った白のワンピースを着ている。
「どう、正樹?」
「うん、似合ってるよ」
Aliceは俺の元に来ると、躊躇なく両手を伸ばし、身を寄せてきた。
「どうした?」
「嬉しくてつい」
白のワンピース、似合い過ぎだろう。
そう心の中で思いながら、俺も両腕を伸ばし、Aliceの背中に回した。
「素敵だよ」
「正樹もね」
お互い離れる気がしなかった。
だが、俺のお腹がグウーと鳴ると、Aliceは言った。
「夕食の支度するね」
そう言って部屋を後にした。
その日の夕飯は、Alice特製の唐揚げだった。
美味そうだなと思いながらテーブルにつくと、出来立ての唐揚げとサラダ、味噌汁、ご飯がお盆にのせられて運ばれてきた。
Aliceの服は、お店で買った白のワンピースのままだ。
「似合ってるけど着替えないの?」
「この服、正樹と一緒の時の部屋着だから着てるの」
俺が一瞬目線を外すと、Aliceが言った。
「正樹、なに目線外してるの、こっち見て」
目線を戻すと、Aliceはお盆をテーブルに置き、俺の前に夕飯を並べた。自分の前にもおんなじ様に置く。
「さぁ食べましょう」
嬉しいのか、明るい声だった。
二人で夕食を取り始めた。唐揚げを食べながら、うん、美味いなと思っていると、Aliceが聞いてきた。
「どう、唐揚げは」
「衣サクサク、中ジューシーで美味いよ」
「実は唐揚げには自信あったの。良かった、喜んでもらえて」
俺も恥ずかしさ混じりで言った。
「こうやって一緒にいられて嬉しいよ」
Aliceは頬を赤く染めた。
「私も」
その後も雑談しながら食事を終えると、Aliceが言った。
「お皿運ぶね」
俺の分も含めてキッチンへ運び、洗い始める。
「手伝おうか」
「いいよ、正樹はソファーでゆっくりしていて」
俺はソファーに座り、テレビを見ながらAliceが来るのを待った。
数分後、Aliceが声をかけてきた。
「隣いい?」
ソファーに座ると、当然の様に俺の右腕に腕を絡ませる。
「どう、私」
「まるで女神だね」
Aliceは頬を赤く染めた。
「ありがとう」
絡めた両腕に、さらに力を込めてくる。
近い。いや、Aliceのことだから、近づいてるよな。
そう考えながら口にはせずにいると、耳元で囁かれた。
「私が甘えてるの分かってるでしょ」
俺は耳を赤く染めながら答えた。
「うん、分かってるよ」
「こんな事するの、正樹にだけだから。だから浮気ダメよ」
Aliceを見つめながら、俺は心の中で思った。
何を言ってるんだ。俺がAlice以外の女性と話す訳ないだろ。
「分かってるよ」
その後も時折じゃれあいながら、二人でゆっくり過ごした。
「そろそろ風呂に入るね」
俺は自分の部屋に戻って部屋着を取り、風呂に入った。
ゆっくりしながら、本当、Aliceは何言ってんだ、と考えていた。
* * *
一方、当のAliceはソファーに座り、頬を赤くしていた。
「何言ってるの、私。これじゃ重たい女性だと思われちゃう」
でも、抑えられないしどうしよう。
そう悩みながらふとスマホを触ると、一通の通知が入っていた。
「又か」
呟いてメールを読み返し、Aliceは悩んだ。
正樹に話した方がいいかな?
* * *
「風呂上がったよ」
風呂から上がった俺は、部屋着姿でAliceの元に戻った。
Aliceの雰囲気が変わっていた事に気づき、優しく聞いた。
「どうしたの」
「座って」
小声で言われ、横に座る。俺はもう一度聞いた。
「どうしたの」
Aliceは真面目な声で話し始めた。
「実はね、近い内にモデル撮影あって、それで正樹の元を離れないといけないの」
てっきり海外でのモデル撮影なのかと思ったが、Aliceは続けた。
「東京某所でモデル撮影なの」
「それってそんなに離れないよね」
Aliceは俺の方を振り向いた。
「私は少しでも離れたくはないの」
強い口調だった。
どうしたもんかと悩みながら、俺はAliceを見つめた。
「Aliceの事好きだから、それは変わらないよ」
「それは私もよ、だから正樹と離れたくはないの」
「なら俺も一緒にモデル撮影に行こうか」
そう提案してみた。
「うん、分かった。マネージャーに言っとくね」
一緒に来てくれる事が嬉しいのか、Aliceはより一層、俺に両腕を絡ませてきた。
「風呂入ってきたら」
「分かった、入ってくるね」
Aliceはソファーから立ち上がり、風呂へ向かった。
俺は1人ソファーに残り、これからの事を考えるのだった。
* * *
「正樹ったら、もうあんな事言われたら好きになっちゃう」
Aliceはそんな事を呟きながら、風呂に入った。
* * *
「上がったわよ」
風呂から上がったAliceは、パジャマ姿で俺の隣に座った。
「マネージャーに連絡しとくね。多分すぐに返信くるから」
そう言ってから、俺に聞いてくる。
「正樹、私がモデルしてるの、どう思う?」
「いいと思うよ、Aliceがしたい事なら応援するよ」
「ありがとう、正樹。愛してる」
その後、二人でテレビを見ている内に、寝る時間になった。
「お休み」
俺はソファーから立ち上がり、一人で寝室に向かった。
Aliceも返してくれる。
「お休み」
* * *
翌朝、正樹がベッドから起きて制服に着替えている頃、Aliceはキッチンで朝食を作っていた。
「もうすぐ正樹起きるわね」
制服にエプロンを着けた姿で、味噌汁を味見する。
「うん、いい感じ」
味噌汁が出来上がったので、コンロの火を止めた。
「次ね」
冷蔵庫からベーコン2つと卵4つ、溶けるチーズ2つを取り出す。
フライパンにサラダ油を少し入れ、慣れた動作でベーコンを焼き始めた。
そろそろかな。
焼き色がついたベーコンを一度皿に移すと、卵2つをボウルに入れ、隠し味としてマヨネーズも加える。
はしで手早く混ぜ、火にかけたフライパンに注ぎ込んだ。
軽く混ぜてからベーコンを入れ、先ほど出した溶けるチーズを真ん中に入れる。
Aliceはプロ顔負けの手つきで、オムレツを作り上げた。
「よし、上手くいった」
小さくガッツポーズをして、皿にオムレツを移す。
そろそろかなと思った頃、階段から音がした。正樹があくびをしながら降りてきたのだ。
「おはよう」
Aliceは振り返り、満面の笑みで返した。
「おはよう」
* * *
俺はテーブルでAliceと向かい合わせに座った。朝食のオムレツを食べ始めると、Aliceが聞いてきた。
「どう? 自慢の出来なの」
俺は食べる手を止め、少し照れながら答えた。
「うん、美味しいね。特に卵のふわトロ感いいね、美味しいよ」
Aliceも恥ずかしいのか、頬を赤く染めた。
「うん、嬉しい」
俺の瞳を見つめながら、そう言ってくれた。
朝食後は、一緒にお皿を洗った。
それが終わり、ソファーに並んで座ってテレビを見ていると、不意にAliceが甘えた声で囁いた。
「ねぇ」
俺がそちらを向くと、Aliceは聞いてきた。
「して欲しい事ある?」
「今はAliceと一緒にいるだけで充分だよ。そういうAliceはどうなの」
「私も正樹とおんなじ」
Aliceはそう前置きした。
「でもね、たまに思うの。私、近いうちにモデルやるでしょ。だから正樹がどう思ってるのか気になってね」
「Aliceがしたい事なら応援するって言ったと思うんだけど」
「そうじゃなくて、その」
恥ずかしそうに、Aliceは仕事内容を話した。
「グラビアモデルの仕事なの」
なるほどな。
Aliceはモデルを再開する上で、撮影で着る服装を気にしているのだろう。
本人がそう言った訳ではないから、あくまで推測なのだが、俺は答えた。
「どんな服装でも似合うと思うよ」
「ありがとう」
Aliceは照れながら返し、何か察したのか言った。
「分かった」
そして俺を見つめる。
「モデル撮影、一緒に行きましょう」
「どういう事?」
俺が聞くと、Aliceは今回の撮影にあたって、モデル事務所に対してある条件を出していたと話した。
それは、俺をAliceの専属マネージャーにするという提案だった。
もちろん、最初は事務所も反対したらしい。それを受けてAliceは、グラビアモデルとして撮影に応じると提案したのだ。
モデル事務所からしてみれば、良案だったのだろう。Aliceの人気は、世界でも通用するレベルなのだ。
大手のモデル事務所でファッションモデルをする話もあったのだが、Aliceはスケジュールの都合で断りを入れて、今のモデル事務所に入っている。
しかも学生の為、出演料が割安なのだ。
その上、グラビアモデルもするとなれば、事務所としては願ったり叶ったりであり、Aliceの提案を断りきれなかったらしい。
そんな事を話した上で、Aliceは聞いてきた。
「どうかな」
交渉能力の高さに内心驚きながら、俺は返した。
「いいよ」
「分かった、なら今度の土曜日にするね」
Aliceはその場でモデル事務所に連絡を入れた。
Aliceがグラビアか。
どんな服装や格好をするのか、楽しみであったのは言うまでもない。俺はAliceに言った。
「楽しみだね」
そして当日。
その日は朝早くから晴れていて、俺とAliceは横並びで撮影スタジオへ向かっていた。
「なぁ、Alice」
「何?」
Aliceが首を傾げる。
「Alice、体調どうなの?」
「体調いいよ、むしろ絶好調だよ」
明るく返してくれた。
「そうなら良かったよ」
そのまま二人でスタジオへ向かった。
スタジオに入ると、Aliceは撮影スタッフ1人1人に挨拶を済ませ、俺の紹介をしてくれた。
「正樹は隅で見ててね」
俺を見つめながら言うと、小走りで待合室へ向かう。
時間は9:00過ぎ。Aliceのモデル撮影が始まった。
普段着る服とは違い、今は白のワンピースで清楚系な感じだった。
「いいね」
カメラマンに言われ、Aliceは透き通る声で返した。
「ありがとう」
俺にウインクする可愛い仕草を見せてから、再び撮影に応じる。
可愛いなと思うと同時に、モデルとしてのAliceは凄いなと感心した。
カメラマンが次々にポーズの指示を出す中、Aliceはどうすれば可愛く見えるか分かっているようだった。
サファイアブルーのロングヘアーをなびかせ、金色の瞳をキリッとさせる。Vネックの白いワンピースを綺麗に見せながら、撮影に応じていった。
カメラマンさえも少し驚き、撮影に熱が入るのだった。
午前中の撮影が終わると、すぐさまチェックが入った。Aliceも「うん」と納得して言った。
「これでいいです」
それから俺の方に向き直る。
「どうだった?」
「Aliceは普段も可愛いけどモデル姿も可愛いよ」
「ありがとう」
Aliceは頬を紅色に染めた。
撮影で着ていた服を数枚もらったのか、紙袋を持っている。
「それ、俺が持とうか」
「いいよ」
可愛い仕草で返すAliceと、俺は帰る事にした。
帰る道中、Aliceが俺にだけ聞こえる声で言った。
「後で楽しみにしててね」
満面の笑みに、俺も返す。
「楽しみにするね」
家に帰ってリビングのソファーに座ると、Aliceは仕事モードから普段の調子に戻った。
俺の手に右手を絡ませ、甘えた声で話しかけてくる。
「どうした?」
隣から頭を優しく撫で上げると、Aliceは何も言わず、ただ満面の笑みを浮かべた。
夕食の時間になった頃、Aliceに聞かれた。
「今日撮影どうだった?」
「Aliceのモデル姿かっこよかったよ」
落ち着いた声色で答えると、Aliceは照れた表情を見せた。
「うん」
明るく甘えた声色に、気付けば俺は聞き惚れていた。
反応に困っていると、Aliceが聞いてきた。
「夕食は何にする?」
「ならハンバーグで」
目線を合わせて言うと、Aliceも「うん」と返し、はにかんだ笑顔を見せた。
夕食作りの準備の為なのか、一人で自室へ戻っていく。
数分後、Aliceはカジュアルな外着に着替えてきた。白いTシャツにデニムの短パンという服装だった。
「似合ってるよ」
俺がはっきりと言うと、Aliceも聞いてくる。
「正樹の好みに合わせてみたの、どう?」
「最高だよ」
満足したのか、Aliceは言った。
「じゃ買い物行ってくるね」
そう言って、1人で買い物に出かけた。
俺の考えでは、1人で夕飯の買い物に行くのは本気のときなんだよな。
それだけAliceにとって俺の存在が大きいのかと思うけど、いやいや、Aliceは好きな事には熱中するからな。
そう考え直し、ほかに誰もいない部屋で呟いた。
「夕飯楽しみだな」
* * *
一方その頃、Aliceは鼻歌混じりで買い物へ向かっていた。
すると、正面から来た若い男性数人と出くわした。
「ねぇ、そこの子可愛いね、遊ばない?」
その一人から声をかけられたが、Aliceは無視した。
それでも、声をかけた男性は近づいてくる。
身の危険を感じたAliceは、咄嗟にスマホの連絡先から正樹に電話をかけた。
* * *
ソファーに座っていると、電話が鳴った。
どうしたのかなと思いながらAliceからの電話に出ると、異変に気がついた。
小さく聞こえる声のやり取りから、ナンパだと分かった。
今回は迎えに行くかと判断し、Tシャツとジャージズボン姿のまま、急いで家を出た。
はぁはぁと息を切らしながらAliceがいそうな所を探すと、人の少ない路地で見つけた。
若い男性から何度も遊ぼうと言われ、どうしようかと困っている様子だった。
「Alice」
声を荒らげながら近づくと、Aliceは後ろを振り向いた。
「正樹」
俺の元まで来ると、背後に隠れる。
「なんだよ」
若い男性が言った。
「そちらこそ何ですか、Aliceをこんな所でナンパして」
男性は俺につかみかかってきた。
「迷惑してるんで帰ってもらっていいですか」
俺が言うと、流石に状況を判断したのか、男性はチッと舌打ちして踵を返した。
「大丈夫?」
「大丈夫、ありがとう、正樹」
Aliceが後ろから抱きついてきた。
その温もりを感じながら、俺は言った。
「一緒に買い物行こう」
「うん」
Aliceは抱きつくのを止めると、俺の右隣を歩き始めた。俺の右腕に自身の腕を絡ませ、恋人繋ぎしてくる。
「Alice、嬉しいよ」
柔らかい声で言うと、Aliceも可愛い声で返した。
「正樹が助けに来てくれて嬉しいよ」
「Alice、今度から買い物いっしょに行こうね」
「うん」
明るくはずんだ声を聞きながら、一緒に買い物へ向かった。
道中、Aliceが声をかけてきた。
「ねぇ、正樹」
「なに?」
「今日ね、正樹かっこよかったですから、正樹の好きなもの作ろうと思うの。何がいい?」
恥ずかしげに聞くAliceに、俺は答えた。
「唐揚げとご飯とサラダで」
「分かった、美味しく作るね、楽しみにしてね」
恋人繋ぎしたまま歩くAliceは、楽しげな表情をしていた。
満面の笑みを浮かべる彼女と、一緒に買い物へ向かうのだった。
涼しいスーパーの店内に入り、一度恋人繋ぎを解いた。
二人で食材を買っていると、Aliceが甘えた仕草で聞いてきた。
「ねぇ、このアイス食後に食べるのどうかな」
持っているのは、某ブランドの高いアイスだった。
普段は買わないはずなのだが、Aliceからの提案に俺は答えた。
「じゃ、提案にのるね。食後のアイスも含めてAliceの夕食、楽しみだよ」
買い物を済ませて自宅に帰ると、Aliceが言った。
「夕食作る前に着替える」
部屋に戻り、数分したのち出てきたAliceは、黒のエプロンを着けていた。
白の刺繍が入っていて、ハートマークもあった。そのエプロン姿に、俺は照れながら言った。
「似合ってるよ」
「似合ってるなら良かった。この前買ってみたんだけど、似合ってる?」
「うん、似合ってるよ、可愛いよ」
真面目に言うと、Aliceは頬を赤く染めた。
「正樹はソファーに座っていてね、料理作るから」
楽しげな声だった。
夕食時、Aliceの作った唐揚げを食べていると、モデルの仕事について聞かれた。
「今度さ、モデルの仕事あるんだけど、それがね、気が早いんだけど水着なの。正樹としてはどうなの? 彼女が水着撮影するのアリなの?」
「Aliceの水着なら似合うと思うよ」
「ならどんなのが正樹の好みなの」
今日のAliceはグイグイくるな。
そう思いながら、似合いそうだがハードル高めのものを提案してみた。
「そうだな、黒のビキニとかは」
「なるほどね、正樹の好み分かった」
Aliceは続けた。
「なら黒のビキニで撮影するわね」
「え?」
思わず声が出た。
「冗談よ、正樹の前だけにするわね。撮影では可愛い系の白のビキニにするけど、正樹に見せるのは黒のビキニにするわね」
Aliceが爆弾発言をかましてきた。
「Alice、それはそれで嬉しいけどね、恥ずかしくないの?」
「恥ずかしいけどね、モデルの仕事だと思えばね、大丈夫だと思うわよ。もちろん正樹もモデルの仕事に来るでしょ」
「もちろん行くよ、楽しみにするね」
それから数日経った朝。
差し込む朝日を浴びながら、モデル撮影へ向かうAliceと待ち合わせしていた。
「待った?」
Aliceが水色のワンピース姿でやって来た。
「似合ってるよ」
「ありがとう」
明るい声が返ってきた。
二人で恋人繋ぎしながら電車を乗り継ぎ、某所のスタジオへ向かう。
道中、俺はある事を聞いた。
「なぁ、Alice」
「どうしたの」
「なんで送迎とかしてもらってないの」
Aliceはこう答えた。
「それはね、正樹と一緒にいたいから、そう無理言ったの。そうじゃないと正樹と一緒にいられないでしょ」
可愛げに言われ、俺は短く返した。
「うん、嬉しいよ」
そんな反応に納得したのか、Aliceは繋いでいる右手に、より一層力を込めた。
スタジオでは、照明スタッフやカメラマンをはじめ、複数人がバタバタと動いていた。
俺とAliceはスタッフの案内で中に入った。
「正樹、ここの端にいてね」
そう言われて待機する事、数十分。
Aliceが白のビキニ姿で、スタッフと共に来た。
「どう?」
「似合ってるよ」
答えると、Aliceは頬を赤く染めた。
「ありがとう、頑張るね、見ててね」
Aliceが俺にそう言うと、モデル撮影が始まった。
Aliceはカメラマンの撮影に合わせてポーズを変えていく。どれも様になっていた。
そんな中、奥からある女性が来た。
「今日のモデル、様になってるわね」
スタッフに耳打ちをした後、女性は俺の元にやって来た。
「貴方ね」
声の方を向くと、そこにはスーツ姿の30歳過ぎの女性が立っていた。
「どうも」
俺が会釈すると、女性は名乗った。
「私はAliceの事務所の社長、木下というの」
「近藤正樹です。今日はAliceのマネージャーとして来てます」
社長の木下は俺を一瞥した。
「Aliceからマネージャーに男性を付けると聞いて、どんな人なのか見に来てみたけど、好青年なのね。これからもAliceをよろしくね」
「どうもよろしくお願いします」
そんなやり取りのなか、Aliceも社長がわざわざ来ているのを見て、より一層気を引き締めたようだった。
撮影が終わると、Aliceは着替えに戻った。数分後には俺の元に来て、開口一番に聞く。
「どうだった?」
「Aliceの頑張りが伝わったよ、綺麗だよ」
「ありがとう、正樹」
Aliceは続けた。
「それとね、社長来てたけど何か話したの?」
「挨拶だけね」
「そう」
そう言ってから、Aliceは俺に声をかけた。
「今日の撮影終わったから帰ろ」
二人で帰ろうとした所、声をかけられた。
女性社長の木下だった。
「どうしましたか、木下さん」
Aliceが聞くと、社長は励ましてくれた。
「今日の撮影良かったわね、これからも精進する事ね、頑張りなさい」
そう言って去っていく。
「Alice、帰ろうか」
「うん」
Aliceは声色を変えてそう答え、俺と一緒に帰るのだった。
家に帰ると、Aliceが言った。
「夕食前に見せたいのがあるの」
自室に入って数分後、黒のビキニ姿で来た。
俺はつい言った。
「可愛いよ」
「嬉しい」
Aliceは俺の所まで来た。
「ねぇ、写真撮って」
俺は自分のスマホをかざし、数枚撮った。
「どうかなぁ」
Aliceに見せると、嬉しそうに言った。
「うん、嬉しい。正樹に撮って貰って嬉しい」
「Aliceの事好きだよ」
頭を撫でながら言うと、Aliceはうつむき、そのまま撫でられていた。
「ねぇ、正樹、私の水着姿どう」
「似合っていて可愛いよ」
「具体的にはどう?」
Aliceはその場でポーズを取った。
「Alice、それ似合ってるよ」
俺は素直に言った。
Aliceはからかい半分、俺に甘えたい気持ち半分といった様子だった。俺の返しが嬉しいのか、そのまま近づいてくる。
「Alice、着替えておいで」
Aliceにも恥ずかしさがあったのか、頷いた。
「うん」
自室に戻り、数分後には白のTシャツと短パンというラフな格好で来た。
「夕飯作るわね」
この日は、Aliceがハンバーグを作ってくれた。
夕食後、俺とAliceはソファーに座った。
俺が抱きつくと、Aliceも抱きついてくれる。
「これからもいっしょにいようね」
「Aliceの為により一層頑張るよ」
そう言って、その夜も二人で仲良く過ごすのだった。
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