じゅんぶら
前略。結婚式一週間前。
「あれ……おれ、どうなって」
ダーリンが女の子になりました。
「うわぁあああ!?」
布団から飛び起きたダーリン。その甲高い声を聞きながら、わたしは目玉焼きを焼き始める。
「おはよ、ダーリン」
「おはよう、ジュリ。相変わらずその呼び方恥ずかしい……じゃなくて! 俺、女の子になってるんだけど!?」
「そうね。かわいいわよダーリン」
「受け入れるの早すぎない!?」
甲高い少女の声で言われて、わたしは少しだけ押し黙り、彼……いや彼女の方を向く。
「な、なんだよ……」
一枚の布団の上。全裸で、女の子座りで、わたしを見つめる黒い髪の少女。歳はだいたい小学校の高学年くらいに見えるが、シルエットは女児と言うより少女というのが正しいような、小柄ながらも第二次性徴を迎えているような体躯。
その顔はこれまで見たどんな女の子よりも可愛く整っていて。
「だーりん、可愛いねぇ……」
「ちょっと待て、ジュリ。目玉焼きは——」
「大丈夫、火は消したわ」
「別の火がついてないか……?」
「ダーリンはダーリンだもの。別の姿になったって——わたしはあなたが大好きなのっ!」
そう言いながらわたしは彼女に飛びかかろうとして。
「ちょ、やめっ——」
じゅっと聞こえた。
冷や汗が出た。ダーリンの顔面は蒼白になって——それから涙をこぼし始めた。
「うぅ……急に来て……止められなかったんだよぉ……」
布団が徐々に黄色く濡れそぼっていく。……ごめん、ダーリン。ちょっとはしゃぎすぎちゃったみたい。
「……ひとまず、シャワー浴びましょ? それからご飯にしましょうよ」
「さいあくだぁ……」
ダーリンは泣きながら、裸のまま、水滴を滴らせながら風呂場に入り。
「……こんな長い髪洗ったことない……どーしよぉ……」
泣きべそが聞こえて、わたしは一気に服を脱ぎ、風呂場に突撃した。
こんな弱々しいダーリン、はじめて見た。……なんだか、ぞくぞくする。
*
わたしのダーリン——凛くんが女の子になった理由は、結局のところよくわからなかった。お医者さん曰くそういう病気があるらしく、数週間後にまた検査に来てくださいと予約を取った。
「……ジュリ。この服はなんだ……?」
で、病院からの帰り道。ダーリンはわたしを見上げて頬を膨らませた。
「子供服だけど?」
「こんなコテコテの女児服、きょうび見ないが?」
その服装は、一言で言えば「平成女児服」だった。
ツインテールを結ぶ髪留めはうさちゃんのキャラクター。ビビッドでピンクと白を基調としたトレーナーにデニムのミニスカート。裾にフリルがあしらわれてるのがめちゃくちゃキュートで萌える。靴もトレーナーと同じ色合いのキラキラした運動靴。めちゃかわだ。
「ダーリン。わたしのコーデ、気に入らなかった?」
「流石に恥ずかしいんだけど! センスが平成すぎて……っ」
「でも可愛いわよ?」
「そ、それとこれとは……じゃなくて! そもそも俺はお前の……ッ」
……確かに通りかかった周りの小学生に怪訝な目で見られてる。指差して笑ってこない辺りに令和女児のモラルの高さを感じる。
「じゃあ、あとで買いに行きましょうよ。一緒に可愛い服選びましょ? ——もちろん、ダーリン専用の、子供服をね」
「……わかった。ジュリといっしょなら……というか、俺たちはいまどこに向かっているんだ?」
照れて俯きながら聞いてくるかわいいダーリンを心の中で愛でつつも(帰ったら思いっきりなでなでしてやろう)、わたしはふふんと胸を張って答えた。
「チャペルよ!」
「……なんで?」
「結婚式のこと! 貸衣装のこととか……ほら、サイズとか変わっちゃったじゃない?」
「あー、そうだな……。このサイズのタキシードとかあるのかな」
身体をまさぐるように確かめる小柄な彼女。……わたしは少しだけ目をそらして。
「そうそう。だからね、それを確かめるのよ」
「それはそうだな。折角なら、しっかり似合った格好で迎えたいしな。……俺たちの、記念の日」
噛み締めるように口にして、ふたたびわたしを見上げたダーリン。なんだか心なしか嬉しそうだ。
……言質は取れた。わたしの予想通りなら、きっと面白いことになる。
期待しつつ、浮き足立って、わたしたちは結婚式場へと向かった。
「新郎さんが女の子に! やだーこれじゃあ新婦さんが二人じゃないですかー! おめでとうございます!」
「ありがとうございます!」
「なにがめでたいんだ……?」
ダーリンのツッコミを意に介さず、わたしはさっき連絡しておいたウエディングプランナーさんと話しながら式場の裏を歩く。
このプランナーさんはすごく親身でノリが良い。話してて楽しい。ダーリンとは違った意味で。
「着きましたよ! 衣装室!」
開けてくれた部屋。そこには。
「……ウエディングドレスが、いっぱい……どういうことだ?」
ダーリンの疑問に、プランナーさんはすっごいまばゆい笑顔で答えた。
「凛さんのドレスを選び直すんです!」
「ドレス……おい待て、俺は男で——」
「ジュリさん、とっても可愛らしい『奥さん』ですね!」
遮るように口にしたプランナーさんの言葉に。
「えへへ……これから『婦婦』になるんだもんねぇ。だったらダブルウエディングドレスははずせないですよねぇ……っ」
つい浮かれながら、ダーリンをギュッと抱きしめた。
「ちょっ、ジュリ……なに勝手に」
「いいでしょ? ダーリン!」
「……それでジュリが喜ぶんなら……」
わたしの胸に埋もれながら控えめに告げるダーリン。一見すれば無表情に見えるその顔は、実のところまんざらでもなさそうなのがよく分かる。愛おしい。
「それじゃあ、採寸しましょう! ——凛さん、お洋服を脱いでくれるかしら?」
少し子供に向けた口調になってしまっているプランナーさんの言葉に。
「っ……!」
ダーリンは顔を真っ赤に染めた。
カタカタと震えてわたしを見上げる彼女の頬を、軽く撫でて。
「大丈夫だから。——それとも、もう濡れちゃった?」
「ちょ——……っ、と……?」
待って、と言おうとしたのだろうけど、疑問形になってる。……まさか、とは思ったけど。
「だったらついでに替えちゃう?」
「…………出て、たら……うん」
ものすごく控えめに首を縦に振った彼女の頭を撫でると、少し安らいだかのように僅かに頬をほころばせる。
「じゃあ、脱ごっか。……自分で脱げる?」
尋ねると、ダーリンは首を縦に振ろうとして、それから少し固まって——緩慢に横に振った。
トレーナーを脱がし、ミニスカートのチャックを下げて。
あらわになった、下着のカップ付きキャミソール。そして、そのショーツは——それに似つかぬほど、幼稚な。
「……おむつ、外れてないのですね」
プランナーさんは、感嘆したかのように言葉を溢した。
——ピンクの、肌触りの良い不織布。その乳幼児向けのキャラクターがプリントされた前面。クロッチの部分は、薄黄色に膨らんでいた。
「……ドラッグストアで、お試しのニ枚入りが売ってて……」
「そう。ダーリンってば今朝おねしょしちゃって……不安だったから、はかせてみたの。……まさか本当に使っちゃうなんて思わなかったけど」
「濡れてるのもわからなかった。最近のおむつって、性能いいんだなぁ……」
現実逃避半分で言ってるダーリンの耳元で、わたしは囁いた。
「……これじゃあ、ダーリン専用のおむつ買わなきゃね」
「っ……!」
ふふ。やっぱりダーリンかわいい。ちょっとからかうとすぐに赤く恥ずかしそうにするのが、すっごくかわいい。——その嫌がる素振りに、ちょっとまんざらでもなさそうな雰囲気が見えるのが、たまらない。
「わたしの肩に手を置いて?」
「……こう?」
「そう!」
かがんだわたしの肩に手を置くダーリン。わたしは彼女の下着の横に走ったステッチをつまんで、丁寧に破った。
むわっと鼻をつくかぐわしい匂い。小麦のような蒸れた尿臭。普通なら悪臭であるはずのそれは、不思議と嫌に感じない。
あらわになった真っ白な肌。下腹にあったダーリンを『男』たらしめていたものは、やはり影も形もなく——代わりにあるのは、毛の一本も生えていない綺麗で無垢な素肌だけ。
「な、なんだよ」
「やっぱりダーリン、女の子になっちゃったんだなぁって」
「……やめろよ。受け止められてないのは、俺の方だっての」
唇を尖らすダーリン。わたしは少し目をそらしてから、カバンの中の道具を取り出す。
アルコールフリーのウェットティッシュと、換えのおむつ。ニ枚入りで助かった。
「ひやっとするよ?」
「んっ……ん」
敏感な部分を丁寧に拭き取られて声を漏らすダーリン。拭き残しがないことを祈りつつ、新しいおむつを広げ。
「右足上げて?」
「その、一人ではけるからっ」
「だめっ。お世話させて? おねがい、ダーリン」
「……仕方ないな……これでいい?」
「そう!」
上げた片足に、おむつの足の部分を通し。
「つぎは左足ね」
「その、恥ずかしいんだけど……」
いいながらももう片足を上げてくれる辺り、素直で愛おしい。
両足を通して、おむつを腰まで引き上げると、彼女はほうっと息をついて——わたしにもたれかかってきた。
「……ぎゅーして」
「ふふ。えらいぞ、ダーリン」
「えへへぇ……」
嬉しそうに微笑んだ彼女を、わたしは優しく撫でた。
「……そのー、お二人さん? 採寸——」
「あっ」
プランナーさんの言葉に引き戻されるまで、わたしたちはずっと抱きしめ合っていた。
*
「……その、ジュリ」
赤面するダーリン。それを見てわたしは少しにやけながら
「なに? ダーリンっ」
「恥ずかしいんだけど……そろそろ離してよ……」
「はなすって、なにを?」
「お、俺をっ! ——その、手ぇ繋がれるの……はずかしい……」
ふふっ。顔がトマトのように真っ赤になってるダーリン、かわいいっ。
そんなかわいいダーリンに、わたしはより一層体を押し付けた。
「ちょっ、なんで……」
「わたしたち、もう夫婦なのよ? ——このくらいいちゃついてたって、誰も文句は言わないわっ!」
「わぁっ! ……その、胸があたってぇ……」
「いまは女の子同士だからセーフ!」
「アウトだよっ! あと歩きにくいし……」
キョロキョロと目を泳がせるダーリン。口ではあーだこーだいいつつ突き放そうとはしてこないあたり、素直じゃないなぁとか思ったり。
しかしそんなダーリンの視線が一つのところに固まったように見えた。
「どうしたの?」
尋ねてみると、彼女は首を軽く横に振って……それでもそれをじっと見るのをやめられずに、よだれを垂らした。
「……あれ、食べたいの?」
ダーリンはビクッとした。図星だ。
彼女が見ていたのは、喫茶店のケーキだった。
逡巡するダーリン。目をそらして、俯いて、もじもじして、それからわたしの目を見て、か細く鳴くように告げた。
「だめぇ……?」
こんな顔されたら断れるわけないじゃない。もともと断るつもりなんてなかったけど。
ダーリンは、甘いものを食べるときだけはすごく幸せそうな顔をする。
「このケーキ美味しい……今度取材に来てもいいかもな」
喫茶店。ボックス席。顔をほころばせたダーリンを対面から眺める。
「グルメルポ? いいじゃない」
「ほとんどブログのようなものだけど……少しでも収入は多いほうがいいもんな」
「ダーリンは仕事なんてしなくていいのに。わたしの収入で十分暮らしていけるでしょ?」
わたしはデザイナーをしている。在宅メインだけどありがたいことに仕事をたくさんもらってて、食べるには困らない。
けど、ダーリンはアイスティーをストローで吸ってから告げる。
「でも……ジュリにしてもらってばっかじゃ、なんか恥ずかしいから」
「男として?」
「人として。……この姿になっても、きっと変わらないこと」
そう言ってケーキをまた一口頬張って、「おいしい」と目を輝かせるダーリンを横目に、わたしはくすりと笑った。
——こんなぶっきらぼうで優しいダーリンだから、わたしは好きになったのだ。
「……正直さ、ジュリがいなきゃ、俺はもう俺じゃなくなってたんだと思う」
ダーリンはぽつりと口にした。ストローをくわえながら、グラスの氷に目を落として。
「だってさ今朝いきなりこんな体になって……びっくりするだろ? 普通なら……俺みたいに」
わたしだって、びっくりしなかったわけじゃない。けど、きっと彼女が言ってるのはそういうことじゃない。
「でもジュリは……俺自身でも受け止めきれなかったことを、笑って受け入れて、いつものように明るく楽しく接してくれた。……それが、なによりも……俺を『俺』であり続けさせてくれた」
グラスの氷は彼女の可憐な姿を反射する。彼女はそれを見つめて。
「それが、うれしくて……うれしくて……っ。だから、ジュリ」
——泣き出しそうな笑顔で、わたしに向き直った。
「だいすきだ。……愛してる」
強がらなくてもいいのに。
ボックス席の対面——ダーリンの隣に移って、わたしは彼女を抱き寄せた。
少女は少し震えながら、しかしわたしを見上げて——目を細めたわたしを見て。
「……ん」
安心したように息を吐いて、わたしに身を寄せた。
結婚式まで、あと一週間。
*
その日は雨だった。
「えーっと、新郎……だった方の方。準備はよろしいですね?」
戸惑いつつ尋ねる神父さん。その声に頷いて、ダーリンは目を細めた。
「ジュリ。先、行ってくるよ」
「新婦の入場です」
パパはわたしを見て、それからその手を優しく握った。
チャペルのドアが開く。パイプオルガンの音が、一気に響いた。
広い空間。幾多の人々。ダーリンとわたしの、家族、友人、会社の同僚。——縁のある人々が並び。
その中央に、彼女はいた。
純白のドレス。その意匠は、わたしのそれと似通っている。しかし胸をフリルで覆い、スカート部分を短くしたような少し子供らしい可愛さを持った衣装。
真っ白なベール越しに、彼女はわたしに天使のような微笑みを向けていた。
一歩一歩、パパと足を合わせて彼女に向かうわたし。けど。
「ダーリンっ」
抑えられず、つい一歩先に踏み出してしまった。
「わっ……」
ちょっと前のめりになったわたしを、けどダーリンは受け止めようとして。
ずべしゃっと倒れてしまった。
ざわつく会場。式場のスタッフさんが駆け寄ってきた。けど——わたしは自分で立ち上がって。
「……ダーリン、立てる?」
「うぅ……」
ちょっとだけうつむくダーリンに手を伸ばして。
ダーリンはその手を取って、重そうなドレスを引きずって立ち上がった。
讃美歌を歌う。ダーリンのか細くて高い声に聞き惚れつつ、わたしは小さく歌う。音痴だから、あんまり聞かせたくなくて。
……ダーリンは「その歌も素敵だよ」って褒めてくれるけど……ダーリン以外に聞かせるのは、やっぱり恥ずかしいや。
神父さんが聖書や式辞を読み上げ。
「——新婦、凛。あなたはここにいる新婦、樹里を、悲しみ深い時も、喜びに充ちた時も、共に過ごし——愛をもって互いに支えあうことを、誓いますか?」
隣りにいる少女は、その問いかけに、真っ直ぐな目で。
「はい。誓います」
答える。
新婦はそれに頷いて——わたしに目を向けた。
「——新婦、樹里。あなたもまた、ここにいる新婦、凛を、悲しみ深い時も、喜びに充ちた時も、共に過ごし——愛をもって互いに支えあうことを、誓いますか?」
その答えは。
「はい。……誓いますっ」
淀みなかった。
神父の合図で、わたしたちは向かい合う。指輪の交換だ。
向き合って、改めて見る互いの顔。——ダーリンは少しだけ険しい顔だった。頬を染めて、荒くなりそうな息を抑えながら、しっかりとわたしを——そっと薬指を差し出すわたしを、見つめていた。
左手の薬指に、そっと指輪をはめられる。
そっとはめられた銀色のリング。その頂点に収まる宝石は——わたしの手の中にあるものと、同じ。
ダーリンはそっとその細い左手を差し出して。
わたしは指輪をそっとつまんで、彼女の細くて真っ白な薬指にそっと通した。
荘厳な讃美歌が鳴り響く中、わたしたちは互いに純白の薄いベールを上げる。
隔てるものがなくなったわたしたち。綺麗に化粧されたその顔は、少しの緊張の色と——それよりも大きな歓喜で埋め尽くさていていて。
「……ジュリ」
ダーリンはその可憐な瞳でわたしを見つめて、呼んだ。
緊張してるのはわたしも同じだ。でも——きっと、喜びも嬉しさも鏡写しなのだろう。
見つめ合った瞳。目を細めて、近づく彼女の頬。
そのツヤツヤとした薄紅色の唇に、わたしはそっと口づけした。
*
披露宴の後半に向けて、お色直し。わたしたちは並んで一緒にドレスを着替えさせてもらっていた。
純白のウェディングドレスを脱ぐわたし。ダーリンは俯いて、黙りこくっていた。
「どうしたの?」
「……その、おれたち、結婚したんだなって」
「いまさらだ」
「そうだな。いまさらだ」
他愛のない会話も楽しくて。
小さくなったダーリンの変わらない微笑が、さっきまでの緊張を解きほぐしてくれた。
「……恥ずかしいけど……あいしてる」
薄ら赤い頬ではにかんだ彼女を、わたしは思わず抱きしめた。
「わたしもよ、ダーリン!」
——そこで、ダーリンが僅かに震えていたことに気づく。
「……えっと、その、本当にどうしたの?」
心配して聞いてみると、彼女は蚊の鳴くような細い声で告げた。
「そのぉ……でちゃった……」
ウエディングドレスを脱いだ彼女。その下着は——おむつは既に、ぐっしょりと小麦色に膨れていた。
「えっと……ジュリ……かえて?」
甘えたような声もうまくなったダーリン。わたし特効の武器は当然のごとくクリティカルで。
わたしはそっとダーリンのさらさらした髪を撫でて、もう片方の手でテーブルの上のポーチをまさぐって。
「じゃあ、ここで替えよっか」
「ん……」
彼女は恥ずかしそうにゆっくり頷いた。
何が変わっても、わたしたちの関係は——愛は絶対変わらないんだろう。
そんな青臭い考えが巡ってしまうほどには。
「幸せって、こういうことなんだろうな」
「それ、いま言うことかな」
ツッコみながら股間を拭かれているダーリン。
彼女は一呼吸置いて、それから微笑んだ。
「でも、ずっと続けたいよな。こんな時間」
「続けばいいわよね」
「続けるんだよ。おれたちで」
「……そうね。そうよね」
息を吐いて、わたしは目を細めた。
「これからも末永くよろしくね、ダーリン」
「ああ。よろしく、ジュリ」
ダーリンはわずかに笑った——あと、固まって。
「それより、その……」
顔を真っ赤に染めながら告げた。
「そろそろ新しいの、はかせてくれないか……?」
「あっ」
ずっと下半身裸だったダーリン。
「ごめん!」
「早くしてくれ……」
夫婦生活は、賑やかになりそうだ。
Fin.
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