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じゅんぶら

掲載日:2026/06/09


 前略。結婚式一週間前。

「あれ……おれ、どうなって」

 ダーリンが女の子になりました。


「うわぁあああ!?」

 布団から飛び起きたダーリン。その甲高い声を聞きながら、わたしは目玉焼きを焼き始める。

「おはよ、ダーリン」

「おはよう、ジュリ。相変わらずその呼び方恥ずかしい……じゃなくて! 俺、女の子になってるんだけど!?」

「そうね。かわいいわよダーリン」

「受け入れるの早すぎない!?」

 甲高い少女の声で言われて、わたしは少しだけ押し黙り、彼……いや彼女の方を向く。

「な、なんだよ……」

 一枚の布団の上。全裸で、女の子座りで、わたしを見つめる黒い髪の少女。歳はだいたい小学校の高学年くらいに見えるが、シルエットは女児と言うより少女というのが正しいような、小柄ながらも第二次性徴を迎えているような体躯。

 その顔はこれまで見たどんな女の子よりも可愛く整っていて。

「だーりん、可愛いねぇ……」

「ちょっと待て、ジュリ。目玉焼きは——」

「大丈夫、火は消したわ」

「別の火がついてないか……?」

「ダーリンはダーリンだもの。別の姿になったって——わたしはあなたが大好きなのっ!」

 そう言いながらわたしは彼女に飛びかかろうとして。

「ちょ、やめっ——」

 じゅっと聞こえた。

 冷や汗が出た。ダーリンの顔面は蒼白になって——それから涙をこぼし始めた。

「うぅ……急に来て……止められなかったんだよぉ……」

 布団が徐々に黄色く濡れそぼっていく。……ごめん、ダーリン。ちょっとはしゃぎすぎちゃったみたい。

「……ひとまず、シャワー浴びましょ? それからご飯にしましょうよ」

「さいあくだぁ……」

 ダーリンは泣きながら、裸のまま、水滴を滴らせながら風呂場に入り。

「……こんな長い髪洗ったことない……どーしよぉ……」

 泣きべそが聞こえて、わたしは一気に服を脱ぎ、風呂場に突撃した。

 こんな弱々しいダーリン、はじめて見た。……なんだか、ぞくぞくする。


    *


 わたしのダーリン——凛くんが女の子になった理由は、結局のところよくわからなかった。お医者さん曰くそういう病気があるらしく、数週間後にまた検査に来てくださいと予約を取った。

「……ジュリ。この服はなんだ……?」

 で、病院からの帰り道。ダーリンはわたしを見上げて頬を膨らませた。

「子供服だけど?」

「こんなコテコテの女児服、きょうび見ないが?」

 その服装は、一言で言えば「平成女児服」だった。

 ツインテールを結ぶ髪留めはうさちゃんのキャラクター。ビビッドでピンクと白を基調としたトレーナーにデニムのミニスカート。裾にフリルがあしらわれてるのがめちゃくちゃキュートで萌える。靴もトレーナーと同じ色合いのキラキラした運動靴。めちゃかわだ。

「ダーリン。わたしのコーデ、気に入らなかった?」

「流石に恥ずかしいんだけど! センスが平成すぎて……っ」

「でも可愛いわよ?」

「そ、それとこれとは……じゃなくて! そもそも俺はお前の……ッ」

 ……確かに通りかかった周りの小学生に怪訝な目で見られてる。指差して笑ってこない辺りに令和女児のモラルの高さを感じる。

「じゃあ、あとで買いに行きましょうよ。一緒に可愛い服選びましょ? ——もちろん、ダーリン専用の、子供服をね」

「……わかった。ジュリといっしょなら……というか、俺たちはいまどこに向かっているんだ?」

 照れて俯きながら聞いてくるかわいいダーリンを心の中で愛でつつも(帰ったら思いっきりなでなでしてやろう)、わたしはふふんと胸を張って答えた。

「チャペルよ!」

「……なんで?」

「結婚式のこと! 貸衣装のこととか……ほら、サイズとか変わっちゃったじゃない?」

「あー、そうだな……。このサイズのタキシードとかあるのかな」

 身体をまさぐるように確かめる小柄な彼女。……わたしは少しだけ目をそらして。

「そうそう。だからね、それを確かめるのよ」

「それはそうだな。折角なら、しっかり似合った格好で迎えたいしな。……俺たちの、記念の日」

 噛み締めるように口にして、ふたたびわたしを見上げたダーリン。なんだか心なしか嬉しそうだ。

 ……言質は取れた。わたしの予想通りなら、きっと面白いことになる。

 期待しつつ、浮き足立って、わたしたちは結婚式場へと向かった。


「新郎さんが女の子に! やだーこれじゃあ新婦さんが二人じゃないですかー! おめでとうございます!」

「ありがとうございます!」

「なにがめでたいんだ……?」

 ダーリンのツッコミを意に介さず、わたしはさっき連絡しておいたウエディングプランナーさんと話しながら式場の裏を歩く。

 このプランナーさんはすごく親身でノリが良い。話してて楽しい。ダーリンとは違った意味で。

「着きましたよ! 衣装室!」

 開けてくれた部屋。そこには。

「……ウエディングドレスが、いっぱい……どういうことだ?」

 ダーリンの疑問に、プランナーさんはすっごいまばゆい笑顔で答えた。

「凛さんのドレスを選び直すんです!」

「ドレス……おい待て、俺は男で——」

「ジュリさん、とっても可愛らしい『奥さん』ですね!」

 遮るように口にしたプランナーさんの言葉に。

「えへへ……これから『婦婦』になるんだもんねぇ。だったらダブルウエディングドレスははずせないですよねぇ……っ」

 つい浮かれながら、ダーリンをギュッと抱きしめた。

「ちょっ、ジュリ……なに勝手に」

「いいでしょ? ダーリン!」

「……それでジュリが喜ぶんなら……」

 わたしの胸に埋もれながら控えめに告げるダーリン。一見すれば無表情に見えるその顔は、実のところまんざらでもなさそうなのがよく分かる。愛おしい。


「それじゃあ、採寸しましょう! ——凛さん、お洋服を脱いでくれるかしら?」

 少し子供に向けた口調になってしまっているプランナーさんの言葉に。

「っ……!」

 ダーリンは顔を真っ赤に染めた。

 カタカタと震えてわたしを見上げる彼女の頬を、軽く撫でて。

「大丈夫だから。——それとも、もう濡れちゃった?」

「ちょ——……っ、と……?」

 待って、と言おうとしたのだろうけど、疑問形になってる。……まさか、とは思ったけど。

「だったらついでに替えちゃう?」

「…………出て、たら……うん」

 ものすごく控えめに首を縦に振った彼女の頭を撫でると、少し安らいだかのように僅かに頬をほころばせる。

「じゃあ、脱ごっか。……自分で脱げる?」

 尋ねると、ダーリンは首を縦に振ろうとして、それから少し固まって——緩慢に横に振った。


 トレーナーを脱がし、ミニスカートのチャックを下げて。

 あらわになった、下着のカップ付きキャミソール。そして、そのショーツは——それに似つかぬほど、幼稚な。

「……おむつ、外れてないのですね」

 プランナーさんは、感嘆したかのように言葉を溢した。

 ——ピンクの、肌触りの良い不織布。その乳幼児向けのキャラクターがプリントされた前面。クロッチの部分は、薄黄色に膨らんでいた。

「……ドラッグストアで、お試しのニ枚入りが売ってて……」

「そう。ダーリンってば今朝おねしょしちゃって……不安だったから、はかせてみたの。……まさか本当に使っちゃうなんて思わなかったけど」

「濡れてるのもわからなかった。最近のおむつって、性能いいんだなぁ……」

 現実逃避半分で言ってるダーリンの耳元で、わたしは囁いた。

「……これじゃあ、ダーリン専用のおむつ買わなきゃね」

「っ……!」

 ふふ。やっぱりダーリンかわいい。ちょっとからかうとすぐに赤く恥ずかしそうにするのが、すっごくかわいい。——その嫌がる素振りに、ちょっとまんざらでもなさそうな雰囲気が見えるのが、たまらない。

「わたしの肩に手を置いて?」

「……こう?」

「そう!」

 かがんだわたしの肩に手を置くダーリン。わたしは彼女の下着の横に走ったステッチをつまんで、丁寧に破った。

 むわっと鼻をつくかぐわしい匂い。小麦のような蒸れた尿臭。普通なら悪臭であるはずのそれは、不思議と嫌に感じない。

 あらわになった真っ白な肌。下腹にあったダーリンを『男』たらしめていたものは、やはり影も形もなく——代わりにあるのは、毛の一本も生えていない綺麗で無垢な素肌だけ。

「な、なんだよ」

「やっぱりダーリン、女の子になっちゃったんだなぁって」

「……やめろよ。受け止められてないのは、俺の方だっての」

 唇を尖らすダーリン。わたしは少し目をそらしてから、カバンの中の道具を取り出す。

 アルコールフリーのウェットティッシュと、換えのおむつ。ニ枚入りで助かった。

「ひやっとするよ?」

「んっ……ん」

 敏感な部分を丁寧に拭き取られて声を漏らすダーリン。拭き残しがないことを祈りつつ、新しいおむつを広げ。

「右足上げて?」

「その、一人ではけるからっ」

「だめっ。お世話させて? おねがい、ダーリン」

「……仕方ないな……これでいい?」

「そう!」

 上げた片足に、おむつの足の部分を通し。

「つぎは左足ね」

「その、恥ずかしいんだけど……」

 いいながらももう片足を上げてくれる辺り、素直で愛おしい。

 両足を通して、おむつを腰まで引き上げると、彼女はほうっと息をついて——わたしにもたれかかってきた。

「……ぎゅーして」

「ふふ。えらいぞ、ダーリン」

「えへへぇ……」

 嬉しそうに微笑んだ彼女を、わたしは優しく撫でた。

「……そのー、お二人さん? 採寸——」

「あっ」

 プランナーさんの言葉に引き戻されるまで、わたしたちはずっと抱きしめ合っていた。


    *


「……その、ジュリ」

 赤面するダーリン。それを見てわたしは少しにやけながら

「なに? ダーリンっ」

「恥ずかしいんだけど……そろそろ離してよ……」

「はなすって、なにを?」

「お、俺をっ! ——その、手ぇ繋がれるの……はずかしい……」

 ふふっ。顔がトマトのように真っ赤になってるダーリン、かわいいっ。

 そんなかわいいダーリンに、わたしはより一層体を押し付けた。

「ちょっ、なんで……」

「わたしたち、もう夫婦なのよ? ——このくらいいちゃついてたって、誰も文句は言わないわっ!」

「わぁっ! ……その、胸があたってぇ……」

「いまは女の子同士だからセーフ!」

「アウトだよっ! あと歩きにくいし……」

 キョロキョロと目を泳がせるダーリン。口ではあーだこーだいいつつ突き放そうとはしてこないあたり、素直じゃないなぁとか思ったり。

 しかしそんなダーリンの視線が一つのところに固まったように見えた。

「どうしたの?」

 尋ねてみると、彼女は首を軽く横に振って……それでもそれをじっと見るのをやめられずに、よだれを垂らした。

「……あれ、食べたいの?」

 ダーリンはビクッとした。図星だ。

 彼女が見ていたのは、喫茶店のケーキだった。

 逡巡するダーリン。目をそらして、俯いて、もじもじして、それからわたしの目を見て、か細く鳴くように告げた。

「だめぇ……?」

 こんな顔されたら断れるわけないじゃない。もともと断るつもりなんてなかったけど。


 ダーリンは、甘いものを食べるときだけはすごく幸せそうな顔をする。

「このケーキ美味しい……今度取材に来てもいいかもな」

 喫茶店。ボックス席。顔をほころばせたダーリンを対面から眺める。

「グルメルポ? いいじゃない」

「ほとんどブログのようなものだけど……少しでも収入は多いほうがいいもんな」

「ダーリンは仕事なんてしなくていいのに。わたしの収入で十分暮らしていけるでしょ?」

 わたしはデザイナーをしている。在宅メインだけどありがたいことに仕事をたくさんもらってて、食べるには困らない。

 けど、ダーリンはアイスティーをストローで吸ってから告げる。

「でも……ジュリにしてもらってばっかじゃ、なんか恥ずかしいから」

「男として?」

「人として。……この姿になっても、きっと変わらないこと」

 そう言ってケーキをまた一口頬張って、「おいしい」と目を輝かせるダーリンを横目に、わたしはくすりと笑った。

 ——こんなぶっきらぼうで優しいダーリンだから、わたしは好きになったのだ。


「……正直さ、ジュリがいなきゃ、俺はもう俺じゃなくなってたんだと思う」

 ダーリンはぽつりと口にした。ストローをくわえながら、グラスの氷に目を落として。

「だってさ今朝いきなりこんな体になって……びっくりするだろ? 普通なら……俺みたいに」

 わたしだって、びっくりしなかったわけじゃない。けど、きっと彼女が言ってるのはそういうことじゃない。

「でもジュリは……俺自身でも受け止めきれなかったことを、笑って受け入れて、いつものように明るく楽しく接してくれた。……それが、なによりも……俺を『俺』であり続けさせてくれた」

 グラスの氷は彼女の可憐な姿を反射する。彼女はそれを見つめて。

「それが、うれしくて……うれしくて……っ。だから、ジュリ」

 ——泣き出しそうな笑顔で、わたしに向き直った。

「だいすきだ。……愛してる」

 強がらなくてもいいのに。

 ボックス席の対面——ダーリンの隣に移って、わたしは彼女を抱き寄せた。

 少女は少し震えながら、しかしわたしを見上げて——目を細めたわたしを見て。

「……ん」

 安心したように息を吐いて、わたしに身を寄せた。


 結婚式まで、あと一週間。


    *


 その日は雨だった。

「えーっと、新郎……だった方の方。準備はよろしいですね?」

 戸惑いつつ尋ねる神父さん。その声に頷いて、ダーリンは目を細めた。

「ジュリ。先、行ってくるよ」


「新婦の入場です」

 パパはわたしを見て、それからその手を優しく握った。

 チャペルのドアが開く。パイプオルガンの音が、一気に響いた。

 広い空間。幾多の人々。ダーリンとわたしの、家族、友人、会社の同僚。——縁のある人々が並び。

 その中央に、彼女はいた。


 純白のドレス。その意匠は、わたしのそれと似通っている。しかし胸をフリルで覆い、スカート部分を短くしたような少し子供らしい可愛さを持った衣装。

 真っ白なベール越しに、彼女はわたしに天使のような微笑みを向けていた。

 一歩一歩、パパと足を合わせて彼女に向かうわたし。けど。

「ダーリンっ」

 抑えられず、つい一歩先に踏み出してしまった。

「わっ……」

 ちょっと前のめりになったわたしを、けどダーリンは受け止めようとして。

 ずべしゃっと倒れてしまった。

 ざわつく会場。式場のスタッフさんが駆け寄ってきた。けど——わたしは自分で立ち上がって。

「……ダーリン、立てる?」

「うぅ……」

 ちょっとだけうつむくダーリンに手を伸ばして。

 ダーリンはその手を取って、重そうなドレスを引きずって立ち上がった。


 讃美歌を歌う。ダーリンのか細くて高い声に聞き惚れつつ、わたしは小さく歌う。音痴だから、あんまり聞かせたくなくて。

 ……ダーリンは「その歌も素敵だよ」って褒めてくれるけど……ダーリン以外に聞かせるのは、やっぱり恥ずかしいや。

 神父さんが聖書や式辞を読み上げ。


「——新婦、凛。あなたはここにいる新婦、樹里(ジュリ)を、悲しみ深い時も、喜びに充ちた時も、共に過ごし——愛をもって互いに支えあうことを、誓いますか?」


 隣りにいる少女は、その問いかけに、真っ直ぐな目で。

「はい。誓います」

 答える。

 新婦はそれに頷いて——わたしに目を向けた。

「——新婦、樹里。あなたもまた、ここにいる新婦、凛を、悲しみ深い時も、喜びに充ちた時も、共に過ごし——愛をもって互いに支えあうことを、誓いますか?」

 その答えは。

「はい。……誓いますっ」

 淀みなかった。


 神父の合図で、わたしたちは向かい合う。指輪の交換だ。

 向き合って、改めて見る互いの顔。——ダーリンは少しだけ険しい顔だった。頬を染めて、荒くなりそうな息を抑えながら、しっかりとわたしを——そっと薬指を差し出すわたしを、見つめていた。

 左手の薬指に、そっと指輪をはめられる。

 そっとはめられた銀色のリング。その頂点に収まる宝石は——わたしの手の中にあるものと、同じ。

 ダーリンはそっとその細い左手を差し出して。

 わたしは指輪をそっとつまんで、彼女の細くて真っ白な薬指にそっと通した。


 荘厳な讃美歌が鳴り響く中、わたしたちは互いに純白の薄いベールを上げる。

 隔てるものがなくなったわたしたち。綺麗に化粧されたその顔は、少しの緊張の色と——それよりも大きな歓喜で埋め尽くさていていて。

「……ジュリ」

 ダーリンはその可憐な瞳でわたしを見つめて、呼んだ。

 緊張してるのはわたしも同じだ。でも——きっと、喜びも嬉しさも鏡写しなのだろう。

 見つめ合った瞳。目を細めて、近づく彼女の頬。

 そのツヤツヤとした薄紅色の唇に、わたしはそっと口づけした。


    *


 披露宴の後半に向けて、お色直し。わたしたちは並んで一緒にドレスを着替えさせてもらっていた。

 純白のウェディングドレスを脱ぐわたし。ダーリンは俯いて、黙りこくっていた。

「どうしたの?」

「……その、おれたち、結婚したんだなって」

「いまさらだ」

「そうだな。いまさらだ」

 他愛のない会話も楽しくて。

 小さくなったダーリンの変わらない微笑が、さっきまでの緊張を解きほぐしてくれた。

「……恥ずかしいけど……あいしてる」

 薄ら赤い頬ではにかんだ彼女を、わたしは思わず抱きしめた。

「わたしもよ、ダーリン!」


 ——そこで、ダーリンが僅かに震えていたことに気づく。

「……えっと、その、本当にどうしたの?」

 心配して聞いてみると、彼女は蚊の鳴くような細い声で告げた。

「そのぉ……でちゃった……」

 ウエディングドレスを脱いだ彼女。その下着は——おむつは既に、ぐっしょりと小麦色に膨れていた。

「えっと……ジュリ……かえて?」

 甘えたような声もうまくなったダーリン。わたし特効の武器は当然のごとくクリティカルで。

 わたしはそっとダーリンのさらさらした髪を撫でて、もう片方の手でテーブルの上のポーチをまさぐって。

「じゃあ、ここで替えよっか」

「ん……」

 彼女は恥ずかしそうにゆっくり頷いた。


 何が変わっても、わたしたちの関係は——愛は絶対変わらないんだろう。

 そんな青臭い考えが巡ってしまうほどには。

「幸せって、こういうことなんだろうな」

「それ、いま言うことかな」

 ツッコみながら股間を拭かれているダーリン。

 彼女は一呼吸置いて、それから微笑んだ。

「でも、ずっと続けたいよな。こんな時間」

「続けばいいわよね」

「続けるんだよ。おれたちで」

「……そうね。そうよね」

 息を吐いて、わたしは目を細めた。


「これからも末永くよろしくね、ダーリン」

「ああ。よろしく、ジュリ」


 ダーリンはわずかに笑った——あと、固まって。

「それより、その……」

 顔を真っ赤に染めながら告げた。

「そろそろ新しいの、はかせてくれないか……?」

「あっ」

 ずっと下半身裸だったダーリン。

「ごめん!」

「早くしてくれ……」

 夫婦生活は、賑やかになりそうだ。


Fin.


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