表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険者ギルド〈黄昏〉公式記録 ── 書記担当による業務文書の順次公開  作者: ぶらっくそーど


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/13

第6話:任務報告書 第1,205号 / 商隊護衛(王都〜〈クリンドル〉、〈ファーレン〉経由)

─────────────────────────

雪月02日完了の業務記録、以下に公開する。


──書記担当(黄昏)

─────────────────────────



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

任務報告書 第1,205号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


依頼番号 E-0429-02

依頼種別 護衛(商隊)

依頼主  北部商業組合〈ファーレン支所〉所属、商隊主トルム・ガル

発令   第三紀308年 楓月29日 早朝

完了   第三紀308年 雪月02日 夕刻

任務難度 D(一般)

機密分類 C(一般任務)

報奨額  銀貨180枚



【任務概要】

王都〈ヘルムランド〉から北部の街〈クリンドル〉までの商隊護衛。

護衛対象:商隊主トルム・ガル、商隊員5名、馬車3台、運搬用の馬6頭

(馬車牽引3頭、予備3頭)。

区間:街道4日行程。経路途中、第3日目に村〈ファーレン〉にて補給

および1泊の予定。

リスク評価:街道沿線は通常運用、ただし〈ファーレン〉一帯は

家畜消失事案(任務報告書 第1,202号参照)の発生地につき、

夜間警戒の強化を当方より要請済み。



【派遣編成】

戦闘班B(4名)


班長 ハインツ・ベルムント「鋼鉄」 重騎士 班長歴6年


副長 ナラ・コルク 槍兵 在籍8年

護衛任務通算43回(本任務含む)


テオ・ロスケ「遠視」 弓兵 在籍5年

夜間視認能力に優れる


ミラ・グレム 治癒師 在籍3年



【経路】

楓月29日 08:00 王都〈ヘルムランド〉出発。馬車3台、班員4名。

楓月29日 18:30 第一野営地到達。

楓月30日 09:00 出発。

楓月30日 14:00 村〈ファーレン〉到達。

楓月30日 17:00 補給完了。村長宅にて宿泊許可。

馬は村営の馬囲場へ集約(村人立会いのもと)。

楓月30日 19:00 夕食。商隊主トルムが村人より家畜消失事案の

聞き取りを実施。

楓月30日 23:00 哨戒開始。戦闘班B、二交代制。

雪月01日 02:18 哨戒中の事案発生。詳細は別項に記す。

雪月01日 06:00 朝、馬囲場の確認。詳細は別項に記す。

雪月01日 09:00 〈ファーレン〉出発。

雪月01日 16:00 第二野営地到達。

雪月02日 09:00 出発。

雪月02日 18:00 〈クリンドル〉到達。商隊を依頼主側へ引き渡し。



【哨戒中事案記録(雪月01日 02:18〜06:00)】


02:18 哨戒中の班長ハインツ・ベルムント、馬囲場の北方向、

森林側に「視線を感じる」旨を、後刻、本書類に記載

する形で報告。

具体的事実関係:

・葉擦れの音を確認。当時、風はなし。

・対象方向の樹間に、明確な発光体・人影は視認できず。

02:20 ハインツ、テオ・ロスケに応援を要請。

テオ、視認を試みる。

テオの報告:「視線らしき方向に何かが存在する感覚は

あるが、対象を視認できない。

通常の獣であれば、私の視力で輪郭は

捉えられるはず」

02:22 ナラ・コルク、武装を整え馬囲場周辺を巡回。

馬囲場の柵、紐、馬の位置、いずれも異状なし。

全6頭の存在を確認。

02:25 哨戒継続。村人2名(村営馬囲場の管理者)を起こす。

管理者の証言:「最近、何度かこの感覚を覚えた夜があった。翌朝、家畜が消えていた」


02:30 ハインツ、馬囲場の灯を一晩中点灯する判断。

ミラ・グレムを起床、班員全員に再配置を指示。

新配置:班員4名のうち2ハインツ・テオ

馬囲場、2ナラ・ミラが商隊員の宿泊先を哨戒。


03:42 ハインツ、再度同方向に視線を感じる旨を報告。

テオ、視認を試みるが、対象を確認できず。

馬囲場の6頭、存在確認済み。


04:14 三度目の視線を感じる旨をハインツが報告。

同時刻、馬囲場の馬6頭のうち3頭が、北側を向く挙動を

確認。馬の異常な発汗、軽度の震えあり。

テオ、矢を番え、対象方向へ警告射撃を1発実施。

矢は森林内に消える。応答なし。


04:14〜06:00 ハインツ・テオ、馬囲場を離れず哨戒継続。

馬6頭の存在を、毎15分ごとに目視で確認。


06:00 朝、馬囲場の最終確認。

馬:5頭。1頭、消失。



【消失した馬の特定情報】

種別 馬(運搬用、予備)

特徴 栗毛、雌、推定6歳、左脇腹に白斑1箇所、左後脚に古傷

商隊主トルム・ガルの私的呼称 「ロンガ」


馬囲場内の状況:

・繋紐:柵に括られたまま、結び目は損なわれていない

・蹄跡:囲場内には残るが、囲場外への蹄跡なし

・毛、血、争いの音や痕跡:いずれも確認できず

・他5頭:いずれも異状なし


最終目視確認時刻:05:45。

消失確認時刻:06:00。

消失推定時間帯:15分以内。



【商隊主への対応】

06:30 商隊主トルム・ガルへ報告。

商隊主、護衛の責任を問う旨の発言あり。

具体的な発言記録:「ロンガは10年の付き合いだった」

07:00 ハインツ、補償交渉を実施。

当ギルドより、馬1頭分の市場価値相当として

銀貨30枚の支払いに合意。

支払いは本任務完了後、ギルド本部にて執行予定。

07:00 〈ファーレン〉村長ベン・カルムに報告。

村長より:「これで、ファーレンの家畜消失被害、

本月通算58頭となる」



【死傷】

戦死  該当なし

重傷  該当なし

軽傷  該当なし


※馬1頭の消失は、当該護衛任務の被害として扱う。



【戦利品】

なし。



【任務評定】

評定:可(人員被害なし、ただし護衛対象の物的損失あり)

報奨支給:規定どおり銀貨180枚。

     ※補償金30枚の支払いは、班員4名の私的負担にて分担

(マルク・ベーレント発議に倣い、班長ハインツ判断)。

依頼主側対応:護衛対象の引き渡しは無事完了。

ただし、補償交渉の経緯について、依頼主側より

ギルド長代理宛てに正式な書状が後日提出される

予定。



【特記】

本任務における事案は、任務報告書 第1,202号で報告された

〈ファーレン〉家畜消失事案の継続事象である。

当方は哨戒中であり、班員4名のうち2名が馬囲場の直視範囲に

位置していた。それでも、馬1頭の消失を防ぐことができなかった。


班長ハインツ・ベルムントの所見:


「私は20年、護衛任務に従事してきた。

 夜間哨戒で、目視範囲内の対象を喪失したのは初めてである。

 当該事案について、以下を所見として記録する:


 ・対象は、私たちの視認範囲外から作用を及ぼした

 ・対象は、繋紐を解かず、馬を『取り除いた』

 ・対象は、私たちが見ている間、姿を現さなかった

 ・対象は、私たちが警戒した直後に作用しなかった

  (02:20の警戒後、04:14まで実害なし。

   私たちの哨戒態勢の隙を計っていた可能性)


 以上から、対象は知性ある存在である可能性が高い。

 ただし、視認に至らなかったため、種別の特定は不能である」


副長ナラ・コルクの追加所見:

「ハインツの所見に同意する。

 加えて、馬6頭のうち3頭が、04:14の直前に北方向を

 向いた挙動は、馬が対象を『感知していた』ことを

 示唆する。馬の感覚は人より鋭い。

 対象は、人の視覚には捉えられないが、馬の感覚には

 届く性質の何か、である可能性がある」



報告者 戦闘班B班長 ハインツ・ベルムント

受領  書記担当

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【書記担当所感(雪月05日追記)】

本書類、調査班に追加情報として送付済み。

任務報告書 第1,202号、第1,203号、第1,204号と併せて、

調査班第二次中間報告書(予定:雪月末日まで)の

基礎資料とする。


馬1頭分の補償金30枚については、本来、護衛側の人員過失

ではなく、未確認個体による被害として、依頼主側との

交渉によりギルド側の負担を減ずる余地がある。

ギルド長代理オットー・グレーゼに判断を仰ぐ。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【閲覧記録】

雪月02日 夜刻 書記担当(受領)

雪月03日 朝刻 ギルド長代理 オットー・グレーゼ

雪月04日 朝刻 調査班長代理 レナルト・キム

雪月05日 朝刻 書記長 ████████


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ