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異世界恋愛系 作品いろいろ

愚痴ばかり言う婚約者にも文句も言わずずっと付き合ってきたのですが……急に婚約破棄されるというオチでした。

作者: 四季
掲載日:2026/05/07

 婚約者である彼アヴァヴァは愚痴の多い青年だ。


「それでさぁ、先輩マジうっざくて。どうしようもないんだよな。ごちゃごちゃうるせぇことばっか言ってくるし。いちいち注意してくるし。はよどっか行けや、て思うくらい、その先輩ウザいんだよ」

「そうなんですね……」

「なあ! お前も思うよな? ウザいって!」

「その方に注意されないよう気をつけるというのは難しいですよね。注意がしたいからしている、みたいなところもありますし」


 こうして顔を合わせるたび、延々と愚痴を聞かされる。


 それは婚約して間もない頃からそうだった。

 なのでこの状況に驚きはないのだけれど。


 ただ、終わりなき愚痴というのは少々厄介なもので、聞いても聞いても終わりが来ないとなると段々心が折れそうになっていってしまう。


「その先輩にさ、嫌がらせしたんだよこの前。そしたら余計にごちゃごちゃ言われるようになっちまって。もうあり得ねえよあの職場! 最悪だろ!」

「他の方にフォローしてもらうとかはできないのでしょうか……」

「無理無理! だってあいつらみーんな嫌なやつだもん! 俺のこと嫌ってるしさぁ。あーウゼー! あーあーあー! ウゼェわホント!」


 それでもなるべく真面目に聞くようにはしていた――のだが、思わぬ形で終わりがやって来ることとなってしまう。


「てかさ、お前、他人事って思ってるよな?」

「いえ」

「いいやそうだ思ってる! 絶対! そう思ってる! てことで、婚約は破棄な」


 滅茶苦茶なことを言われたうえ、婚約破棄を告げられてしまった。


「え……それはさすがに急過ぎませんか」

「だってお前親身に聞いてくれねえじゃん! それってさぁ、俺のこと、大事じゃねえってことだろ!」

「真面目に聞いているつもりです」

「つもり? はは。馬鹿かよお前。つもりじゃ駄目なんだよ! つもりじゃ! お前ホント馬鹿だな、きちんと聞くってのはつもりじゃ駄目なんだ。つもり、じゃ、駄! 目! 駄目なんだよそんなレベルじゃ!」


 アヴァヴァは攻撃的な言葉ばかりを並べて。


「じゃ、これで縁切りな! ばいばい! 永遠に、さよなら!」


 一方的に関係を叩き壊したのだった。


 婚約者なのだから話は聞かなければならない。そう思っていた、だからこそ今日まで付き合ってきた。面白くない話だとしても、こちらの心が重くなるような話だとしても、それでも婚約者だからと思い彼を支えるために対応してきた。


 けれどもそんな努力には何の意味もなかった……。


 彼は私の努力なんて知らない。

 私が彼のためにしてきたことにも気づかない。


 すべて無駄だっというのか……だとしたら、正直、がっかりしてしまう。


 とはいえ、どうしようもないものはどうしようもないということは分かっているので、これ以上彼に対してあれこれ言うつもりもない。


 私は私の道を。


 ただ歩むだけ。



 ◆



 婚約破棄された直後から新たな趣味として家庭菜園を始めた私は、その活動の中で新種の虫を発見した。はじめは「ああ、こんな虫いるんだ」くらいにしか思っていなかったのだが、それが新種でしかも人々の健康のためになるかもしれない種であるといったことが判明したことで、人生は一気に動き出した。


 これまでの常識を変える。

 そんな力を持った虫を最初に発見した人物。


 私に与えられた名誉はそれだった。


 おかげで、国からかなりの額の褒美のお金を貰うことができ、その結果生活もかなり裕福なものへと変化していった。


 また、発見した時のことについて話す講演会の仕事も多く舞い込んでくるようになり、経済面以外から見た日々の暮らしもより充実したものへと変わっていった。


 こんな未来が訪れるなんて思っていなかった。

 でも悪いものではない。

 だから想定外のものだとしても嫌だとは思わない。


 これらの変化は、むしろ、喜ばしい変化と言えるだろう。


 自分で生きていく力を身につけられたなら、きっと、これから先も自分の力で道を切り拓き歩んでゆけるはず。


 より良い未来のために頑張ろう。


 今はそう思っている。


 ああ、そうだ、そういえば。

 あの時私を切り捨てたアヴァヴァだが、彼は、あの後飲食店で知り合ったセクシーな女性に騙されてかなりの額の借金を背負わされてしまったそうだ。


 女性に頼るようなことを言われ代わりに背負うことにした借金。しかし女性は彼に感謝なんてしていなかった。なぜなら女性は金貸しとぐるだったから。


 アヴァヴァははじめから頼られてなんかいなかった。

 上手くはめることができそうな愚かな男と思われていただけだったのだ。


 借金地獄に落ちた彼は今、命こそまだ何とか保っているものの、経済的にどうしようもない状態に陥ってしまっているそう。


 彼の未来に明るい光が射し込むことは……もう二度とない。



◆終わり◆

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