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1章 第1話

東京・八王子


丑三つ時だというのに、この通りには人の流れが途切れていなかった。

深夜営業の店、始発を待つ人間、理由もなく歩き続ける彷徨い人。

眠らない街という言葉が、やけに生々しく感じられる時間帯だ。


ニュースキャスター・桐生恒一は、その人波を縫うように歩きながら、テレビ局へ向かっていた。

国際報道ネット――GNN。

今日も、朝の情報番組「GNNワールドレポート」から一日が始まる。


局舎に入ると、夜勤明けと早朝班が入り混じる独特の空気が漂っていた。

桐生はスタッフと短く挨拶を交わしながら、スタジオへ向かう。


途中、窓際の通路で足を止めた。

そこにいたのは、この後放送される番組のディレクター――黒瀬恒一だった。


「おはようございます」


「おう」


自分と同じ名前。

その偶然を面白がって、局内では「最高の恒一たち」などと呼ばれている。

冗談のようで、どこか落ち着かない呼び名だ。


黒瀬は無言でスケジュール表を差し出した。

受け取った桐生は、眉をひそめる。


——長い。


いつもの「GNNワールドレポート」より、淡々とニュースを読む時間が三十分ほど延びている。


「……今日、ここ長くないですか?」


「気にするな。それに、お前なら持たせられるだろ。視聴者を退屈させない力がある」


それだけ言い残し、黒瀬は背を向けた。


「じゃ」


通路の奥へ消えていく背中を見送り、桐生は再びスケジュールへ視線を落とす。


——その瞬間だった。


腹の底に直接打ち込まれるような衝撃。

空気が破裂し、窓ガラスが微かに震えた。


「……事故か?」


そう願うように呟き、窓の外を見る。

局舎の隣、植え込みの向こうから黒煙が立ち上っていた。


視界の端で、人が倒れているのが見える。

衝突したはずの車両も、炎上した設備も見当たらない。


理解が追いつかない。


横から肩を叩かれた。

番組スタッフだった。顔色が抜け落ち、呼吸が荒い。


「隣の建物……何が起きてる?」


「……爆発です」


その一言で、空気が変わった。


スタッフは続ける。


「さっき……この局に電話がありました。

 近くの建物に爆弾を仕掛けた。

 止めたければ――」


一度、息を吸い直す。


「今すぐ『GNNワールドレポート』を放送しろ、と」


桐生の呼吸が、止まった。

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