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同棲一年半の小説家志望の彼女がゼク〇ィを出したので婚前契約で高価値人生と趣味のヘヴィーメタルを死守しようとしたらバヌアツの地獄で男の魂の真価に開眼しあの子のために魂を燃やすと決意した男のこわい話

掲載日:2026/01/11

※しいな ここみ様主催企画「冬のホラー企画4」参加作品です。

 短編だけど一万三千文字近くと長いので注意……(ひどい)。

 年明けの雰囲気も落ち着いた時期の金曜日の夜。アパートの六畳間に置いたこたつで同棲相手と一緒に夜食の餅を食べる俺は、27歳の独身サラリーマン。


 中学受験で全寮制の中高一貫の進学校に入学。国立大学に進学して卒業後に地元の大企業に総合職として入社。

 小学生の頃から勉強漬けになる中学受験は大変だったけど、早くから勉強のやり方を学んだおかげでシゴデキ社員として同期の中でも出世頭だ。


 そんな順風満帆な人生だけど、27歳にもなると懸案事項を抱えたりもする。


「ねえ。そろそろもう少し広い部屋借りられないの? 六畳1Kで同棲は普通じゃない気がするわ」


 コタツの対面で俺の部屋に苦言を呈するのは、同棲相手の磐長(いわなが)ヨミコ。

 結婚相談所で再会してから1年半ほど同棲生活を続けている。

 ヨミコも仕事をしているから生活費は折半だ。


「何言ってるんだヨミコ。帰って寝るだけの部屋に高い家賃を払うのは無駄だろ」

「でも暖房ぐらいは何とかならない? 部屋の中でも防寒着着用で、自宅なのに寝袋で寝るとかこれもう災害よ」


 慣れるまで大変だけど、慣れたら【秘密基地】みたいで楽しいんだなこれが。


「そのためにコタツがあるんじゃないか。隙間だらけの部屋で暖房を使うのはコスパが悪いからな。無駄を削減して貯蓄に回し価値の高い生活をするのは大事だぞ」


 子供の頃は点数が価値の指標だったけど、大人の世界では資産が価値の指標になる。収入(インカム)を上げて費用(コスト)を下げて収益(ゲイン)を蓄えるのが高価値人生(ハイバリューライフプラン)だ。

 そこそこ高収入な俺が貧乏学生向けの1Kアパートで暮らしているのも、家賃と光熱費の最小化という合理的判断に基づいた戦略的撤退に他ならない。


「本当に貯蓄好きねぇ。でも、冬のボーナスで趣味のヘヴィーメタルを買ったって言ってたけど、どんなの買ったの? そもそも音楽好きだったっけ?」

「あぁ、注文してて今日届いたんだけど、コレだ」


 コタツの上に置いてある小箱を開けて中身を取り出す。


【パラジウム地金 100g】


「……。あー重金属だからヘヴィーメタルね。でもなんでパラジウム? 普通なら金や銀でしょ」

「金、銀、プラチナはもうあるからな。パラジウムでコンプリートだ」


 ロジウム地金まで手を出すとさすがに流動性が悪すぎる。

 ここはパラジウムで止めておいて、次のボーナスは金にしてそこから2巡目だ。


「神棚のアレまさか本物? もしかして台所にある塊も関係あったりする?」

「神棚に飾ってあるのが金とプラチナの100g地金。台所で紙ゴミに乗せてる重りが10kgの銀地金だ。銀は実用金属だからな。実際便利だろ」


「もう驚かないけど。控えめに言って、病気ね」


 なんか失礼な事言われてる気がするけど、俺は何もオカシイことはしてないぞ。


「最近の円安と物価上昇は日本円の価値低下というこわい動きが原因らしいから、リスク分散のために価値の消えない貴金属(ヘヴィーメタル)への資産配分も必要なんだ」


「こわいぐらいの価値への執着を見せてくれたお礼に、私からもこわいものを提供するわ」


 そう言って、ヨミコが近所の本屋の紙袋から雑誌のような物を取り出した。


【ゼク〇ィ (婚姻届の付録付き)】


「こわい!」


 思わずこたつから飛び上がる俺。

 カラフルで分厚い雑誌が放つオーラは俺をホラーの世界に誘う呪物。


 同棲一年半。そろそろ出てきてもおかしくないと思ってはいた。

 しかし、【結婚】なんてのは男にとって費用対効果(コストパフォーマンス)が最低最悪な人生の墓穴。高価値人生(ハイバリューライフプラン)を目指す俺が絶対回避しないといけない地雷だ。

 しかもヨミコは、今でこそ働いているが【専業主婦(ただめしぐらい)】を狙っている節がある。いつか小説家になりたいなどと言って、ネットでコンテストに応募しては落選していた。

 今度こそはと毎回言うけど、出版不況と言われるこの時代。叶えたところで幾らにも金にならない夢のために俺の資産を喰われるなんてまっぴら御免だ。


 だが、ヨミコは怒らせるとこわい。

 普段は冷静沈着で女にしては話が通じるけど、去年怒らせた時にはノートパソコンを窓の外に投げ捨てられた。


 どうする? この危機にどう立ち向かえばいい?


 そうだ!


 男女不平等契約の【結婚】で苦しみ続けた男達が編み出した物がある。

 俺の高価値人生(ハイバリューライフプラン)を守るために、先人の知恵を最大限活用しよう!


「ヨミコ。今の時代は【結婚】は【婚前契約】がセットだ。お互いの人生価値を最大化するために二人の契約を考えよう」

「【婚前契約】ねぇ……。それで、どんな内容にするの?」


…………


 俺の高価値人生(ハイバリューライフプラン)を結婚生活という墓穴から守るための契約を考えて、A4用紙1枚にまとめた。


――――――――――――――――――――

・結婚前の資産は各個の特有財産とすること。

・お互いの趣味には干渉しないこと。

・生活費は折半とすること。

・お互いの合意なしに無断で退職しないこと。

・子供は最低一人は儲けること。

・妊娠出産時は【産休】【育休】を取得し、期間後速やかに復職すること。


――――――――――――――――――――


「子供アリ前提なんだ。それで【育休】明けたら働く契約?」

「まぁ、子供居ないなら【結婚】の意味がないからな。それに今時【共働き】は常識だろ」


 契約内容を確認するヨミコの表情が険しいが、今の時代は【男女平等】。生活費折半が結婚生活のスタートラインだ。子供が居たって【専業主婦(ただめしぐらい)】なんてあり得ない。


「民法に夫婦間の【相互扶助義務】の規定があるけど、この契約での縛りはそれに抵触しないかしら。一般的に法律に抵触する契約は無効よ」


 出た。仕事から逃げるための法律を盾にした女の言い訳。

 法律自体が【男女不平等】なのが問題だから【婚前契約】が流行るんだよ。


「夫婦ってのは特別な関係だからな。俺達の間だけの約束なら法律が及ばない条項を持っていてもいいじゃないか」

「法律が及ばない特別な関係ねぇ……。悪くないわ」


 やった。納得してくれた。やっぱり女は特別感に弱い。


「最近流行りの【DNA鑑定】は入れないの?」

「ヨミコにそんな相手が居るわけないから無駄だろ」


 鑑定費用は数万円。裁判で使える本式のモノは10万近く。あり得ないリスクのために払う金額としては高すぎる。


「すごく失礼な事言われてる気がするけど無駄という点は同意ね。でも、契約なんだから私の方からも1個だけ条件出させて」

「いいけど、既存の内容に反しないもので頼むぞ」


 契約書にヨミコが追記。


――――――――――――――――――――


・妊娠出産を起因として妻が死亡した場合は夫は切腹すること。


――――――――――――――――――――


 ぎゃぁぁぁぁぁぁ!


 契約に追記されたとんでもなくこわい1行で背筋が凍る。


「ヨ、ヨミコ! どういうホラーセンスなんだコレ! こわすぎるだろ!」

「大丈夫よ。今の時代、五万分の一ぐらいだから」


「でも、夫に自決を強要する契約って、明らかに違法だろ!」

「夫婦は法律が及ばない特別な関係なんでしょ」


 致命的ブーメランキタァァァァ!


「いやいやいや、残った子供どうするんだよ! 母親死亡で父親自決じゃあんまりだろ!」

「婚前契約で子供よりも財産を上に書くような男に残して逝(い)きたくないから、勤め先に託すわ」


 すごくひどい事言われてる気がするけど、ヨミコの勤め先は児童養護施設だからそういうコネはあるのか。


「で、どうする? 私はこの内容で問題ないけど」


 どうするって。結婚に命懸けとかありえないだろ。

 子供を儲けなければって思ったけど、契約前半で子供一人以上の規定あるから詰んでる。

 いや、なんで俺この条項入れたんだ。


 資産価値を守るために作った契約が、たった1項目の追記で特級呪物になってしまった。死んでしまったら資産どころの話じゃない。


 だがしかし、この契約には穴がある。

 そうだ。ヨミコはこの契約の履行を確認できないんだ。

 よし、それでいこう。


「そうだな。これで契約書を完成させよう。俺達だけの秘密の契約だ。署名捺印して、大切に部屋の奥に仕舞っておこう」


…………


 清書して二人で署名して【契約書】は完成。

 これを第三者に見られない場所に隠してしまえば問題ない。

 明日にでも【金庫】を買って来るか。


「せっかくだから、書店でオマケに貰った【婚前契約用印紙】を使ってみましょう。これを使うと契約に神様の加護が宿るそうよ」


 ヨミコが紙袋から印紙を取り出して【契約書】に貼り付けた。と同時に、部屋が急激に冷えたような激しい悪寒。


『ほほう。これが貴公らの婚前契約か……』


 半分腐りかけた手で俺達の【契約書】をコタツから取り上げて確認するのは、突如現れたメイド服着用の動く死体。


「ええっ! どちら様?」


『我は伊邪那美命(いざなみのみこと)。地獄住まいの女神じゃ』

「あー、地獄だから冥途(めいど)とかけてメイド服なのね」


 ヨミコ! 適応力高すぎだろ!

 そしてなんだよその地獄センス!


『うむ。契約内容を確認した。必要となった暁には、神の責において確実に夫の魂を地獄へと運んでくれようぞ』

「よろしくお願いしまーす」


 ぎゃぁぁぁぁぁ! 逃げ道塞がったぁぁぁ!


『亡くした妻の後を追うその覚悟は良いが、実際されると案外迷惑な物なんだがのう……』


 メイド死体の伊邪那美(いざなみ)様が、落ちそうな眼玉で寂しそうに天井を見上げるけど、経験あるのかよ!


「そう思うならこんなアタオカな契約止めるところでしょ! 神様として!」

『うぬ? 自ら結んだ契約をアタオカと申すか。もしやそなた!』


 ギクッ


 半分骸骨な感じの伊邪那美(いざなみ)様に睨まれた。

 まさか、命懸けの契約からバックレ企んでたのバレたか! ヤバイ!


『女は貧乳モブが安上がりで良いと考えておったな!』

「そっちかよ!」


『着眼点は良い。お主なかなか見る目があるな』


 褒められた。


 女の美貌は加齢と共に価値が下がる。

 だから長期保有する価値は無い。


 美貌のある若い美女とは遊びと割り切り短期保有。

 嫁にするならコスパの高いモブが適している。


 これが高価値人生(ハイバリューライフプラン)における女選びと考えていたけど、女神様目線でも正しかったんだ。

 俺は間違ってなかったんだ。


「そうですよね。やっぱり嫁にするなら美人じゃなくてヨミコみたいな貧乳モブですよね。歳とったら顔もスタイルもどうせ劣化するんだから、マスクしてれば可愛く見えるヨミコぐらいの風貌があれば必要十分ですよね」

『そうじゃそうじゃ。外見だけで女を選ぶものではない。だが、言葉は選んだ方がよいぞ』


 ふと正面に座るヨミコを見ると、なんかオーラを出している。


 あのオーラは

 【モブ自覚はあるしそういう扱いも気付いてたしそれでいいとも思ってたけど、初対面の第三者を前に名指しでモブ強調マスク美人扱いは一線超えたぞ、タダでは済まさんコノヤロウと思った時】

 のオーラだ。


「伊邪那美(いざなみ)様。コイツ私をモブ扱いする癖に入浴覗いたんですよ」

『神罰覿面(しんばつてきめん)!』 ドカーン


 鬼の形相になったメイド死体が長い棒のようなものを一振り。

 謎の衝撃波でこたつから吹っ飛ばされて窓際の壁に叩きつけられた。


 全身痛い。


『貴様のような【セクハラ男】は、【分娩室】で切腹となる前に天沼矛(あめのぬぼこ)のシミにしてくれるわ!』

「殺(や)っちゃえー」


 いきなり激怒した伊邪那美(いざなみ)様もこわいけど、平然と煽るヨミコもこわい。


「ごめんなさい! ごめんなさい! つい出来心で!」


 必死で謝るけど、神っている道具が容赦なく振り上げられる。

 ヤバイ。全身痛くて足腰立たない。


『待てい!』


 衣褲(きぬはかま)姿の大男が俺と地獄メイドの間に割って入った。


『出たな、元祖セクハラ男神! 神国日本の破廉恥行為の権化! 邪魔をするな!』

『伊邪那岐命(いざなぎのみこと)だ! 誤解を招く刷り込みをするでない!』


 神様達がいきなり痴話喧嘩を始めたよ。


『若造、ここは一旦退くぞ! 南南東微南!』


 伊邪那岐(いざなぎ)様の謎の掛け声と共に、視界が眩しい光に埋め尽くされる。


…………


 気が付けば、海岸近くの林の中。

 さっきまで夜だった事を忘れるぐらいに、太陽の下で輝く大海原が絶景。


「……ここはドコなんですか?」

『バヌアツ共和国トレス諸島のトーガ島だ。ちょっとした避難だ』


 えーっと、オーストラリアより東の太平洋だっけ。

 えらく寒いけど、冬かな。


「季節とか時差とか矛盾しません?」

『細かいことは気にするな。それよりも、若造も随分と愚かしいことをしたな。あんな【契約書】なぞ作って、どうするつもりだ』


 そうだった! あの致命的な婚前契約を何とかしないと俺が死ぬ!


「伊邪那岐(いざなぎ)様! どうかお助け下さい!」


 伊邪那岐(いざなぎ)様に、俺とヨミコの事と、婚前契約と、それを作った目的である高価値人生(ハイバリューライフプラン)のビジョンを説明した。


『若造よ。資産形成にこだわる癖に、【お金】の意味を理解しとらんな』


 いきなり厳しい一言。だけど、子供の頃からの努力で高収入を勝ち取った上に、株や投資信託で資産形成を進めている俺はお金に詳しい自負はある。


「お金は【価値の対価】でしょう。だから、価値の高い仕事をしたらたくさんもらえる」

『それは一つの側面に過ぎん。紙幣でも何でも、それを欲しがって働く人が居るところに価値があるのだぞ。日本円の価値すら流動的であると昨今の物価上昇で学んだだろう』


 そうだ。最近の物価上昇は日本円の価値低下と言う説もある。

 だけど、俺は先手を打ってる。


「日本円やドルの価値が下がっても、貴金属(ヘヴィーメタル)なら価値を維持できます」

『同じだ。金だろうがパラジウムだろうが、それを欲しがって労働力を提供する人間が居るから価値がある。実際、日本列島を創った時には金山だって独り占めだったが、コンビニも無いからおにぎりすら買えなかったぞ』


 神ってる経済学キタァァァァァ!


 でも確かにそうだ。欲しがる人が多いから価値があると思えるけど、地金自体はショボい金属片だ。

 銀地金は実用性あるけど、重りとしての実用性は100円のレンガと同じだし。


「あれ? でもその理屈からすると、最近の物価上昇の原因は……」

『少子化だ。日本円で買える労働力の絶対量が長期的に減っていくことが確定しているのだ。そりゃぁ通貨の価値だって下がる。まぁ、どの国も似たようなものだがな』


 先進国は軒並み少子化してるから、そこが発行する通貨の価値が下がると。

 そうなると、消去法的に金の価値が上がると。

 物価上昇と金価格の高騰の遠因は、少子化だったのか。


 だったら金地金を買ったのは正解だけど、それも欲しがる人が居なくなったらいずれ価値は無くなるわけで……。


「じゃぁ、高価値人生(ハイバリューライフプラン)を実現するための価値って何でしょう」

『人だよ。経済の仕組みが複雑化して本質が見えづらくなってはいるが、文明社会の中で全ての価値は人が働いて生み出すものだ。働く人が減る状況で価値が増えることなど無い』


 だとしたら、結婚して子供を儲けるのが高価値人生(ハイバリューライフプラン)の一つの答えか。

 何となく婚前契約に子供の条項入れたけど、あれは間違ってなかったんだな。


『今の男共にも困ったものだ。男は普通に生きていれば死ぬような目に遭うことは無いというのに、命懸けで子を授かる女をぞんざいに扱いおって。産めば終わりでない事すら忘れとるのかの。ロクな死に方せんぞ、本当に……』


 伊邪那岐(いざなぎ)様がぼやきながら、林の中に座った。

 俺も何となく隣に座る。


 大海原の向こうに船が見えた。漁船かな。


『若造よ。同棲相手の事をモブだのマスク美人だのディスっておったが、そもそも、他の女と付き合った事はあるのか?』

「うーん。そう言えば、無いかな……」


 母の勧めで結婚相談所に行ったけど、受付ロビーでばったりヨミコと再会したから入会しなかったし。

 たまに呼ばれる合コンで、勤め先や年収がバレたら若い美人にモテたりするけど、それも何か違う気がするし。


『選べるのに勿体ない。儂(わし)なんて選べなかったぞ』

「伊邪那岐(いざなぎ)様。それ思ってても言っちゃダメなやつ」


 【神級失言】だよ。神話をぶっ壊さないでくれ。


『若造にだけは言われたくない』

「それもそうですね」


 自分の失言に反省しつつ、ツッコミどころを思いついた。


「伊邪那岐(いざなぎ)様。男は普通に生きていれば死ぬような目に遭わないって言ってましたけど、俺さっき殺されかけましたよ」

『女を怒らせた場合はその限りではないのだ』


 スゴイ納得感がある。

 俺も死ぬほどこわい思いをしたのは、ヨミコを怒らせた時ぐらいだ。

 ヨミコは昔から当たり前のようにとんでもないことをする。


「伊邪那岐(いざなぎ)様も何か経験あるんですか?」

『あぁ……、別れが辛くて追いかけた時にな、つい【覗き】をしてしまってな。うっかり【地獄】を作られてしまった……。若造も経験あるのか?』


 苦い経験を思い出し、つい海を眺める。

 沖合に浮かぶ船の側面から釣り竿のようなものが2本出てきた。

 船首にクレーンみたいなものもあるけど、あの船一体何だろう。


「まぁ、つい出来心で……、入浴姿を【盗撮】してしまいまして……」


 パソコン内の画像が見つかった時に無茶苦茶怒られた。【後姿】しか撮ってないと弁明したら逆上されて、ノートパソコンが二階の窓から飛んだ。

 ヨミコは怒らせると本当にこわい。


『それは最悪だな。一番ダメなやつだ。儂(わし)よりひどい。神として全く庇えんぞ』


 呆れられた。そりゃそうだよな。


『五十歩百歩じゃ! 棚上げするなこのセクハラ男神が!』


 伊邪那美(いざなみ)様の地獄ボイスが響いた直後、沖合の船から光。


『いかん! 伏せろ!』


 伊邪那岐(いざなぎ)様に突き飛ばされて、林の中の地面に転がった直後、耳をつんざく轟音と共に頭上を掠めた何かにより近くの木々が薙ぎ払われた。


「一体何が!」 『馬鹿者! 頭を上げるな!』


 頭を掴まれて顔面を土に叩きつけられた直後、首筋に焼けるような痛み。

 何かが掠(かす)った。


 轟音は続き、近くの木々がどんどん吹っ飛ばされて破片が降り注ぐ。


『【機銃掃射】だ! 『【黄泉醜女(よもつしこめ)Tai!(たい)】の巡視艇に見つかった』


 さっきの船、軍用艦だったのか!

 釣り竿に見えたのが機関銃か!


「何なんですか! なんであんな【地獄の軍隊】みたいなのが居るんですか!」

『地獄だから地獄の軍隊が居るんだよ!』


 通じてるけど通じて無い!


「その地獄でアレはいったい何と戦ってるんです!」

『平時の任務は【三途の川】の防衛だ! 女を粗末に扱った男共の魂を水際で【滅殺】しておる!』


 ロクな死に方しないってそういうレベルか! まさに地獄!


 ものすごい勢いの【機銃掃射】は続き、薙ぎ払われた木々が俺達の上に倒れてくる。

 痛い。だけど動けない。こわい。


『動くなよ若造! 対物用12.7mm弾だ! 人間など1発でバラバラだ!』

「怒らせたかもしれないけど! コレ絶対やりすぎ!」


 銃撃は途切れない。

 防寒着の背中を何かが掠(かす)めた。こわい。


『確かにやりすぎだ! 12.7mm弾は1発1000円するのに、過剰連射だ!』

「いやだぁぁぁ! 時給以下の値段で死にたくない!」


 近くの地面に当たったのか、巻き上げられた土と石で頭が埋まる。

 ほぼ同時に、俺の脚の上に倒れた木が着弾で爆散した。

 死ぬ。本当に当たったら死ぬ!


『若造よ! 【死の危険】は初体験か! 妊婦はこの重圧と何カ月も』

「イマ! アタマ! マワリマセン!」 


 本当に死ぬ! ヤバイ! ヤバイ!


 どれだけの間続いたのか分からないが、銃撃が止まった。


『過剰連射で銃身が焼けたか。本当に撃ち過ぎだ』

「伊邪那岐(いざなぎ)様! 今のうちに林の奥に逃げましょう!」


 倒れた木に埋まっているけど今なら脱出はできそうだ。


『若造よ。船の様子は見えるか? 儂(わし)は近眼だからよく見えん』


 それで船に気付かなかったのか。

 倒木の隙間から白煙に包まれた船を見る。


「船首のクレーンのようなものが動いています」

『それはクレーンではなく40mm砲だ! 艦砲射撃が来るぞ!』

「それドンダケですか!」


 ヨミコと違って俺はミリネタ詳しくないから、40mm砲と言われてもピンとこない。


『若造にも分かるように言うと、砲弾1発が16万円ぐらい』

 「チガウ!」

  『着弾点半径6m即死の砲弾が島内全域に秒間5発で降り注ぐ』

   「ワカリヤスイ!」


 島ごと吹っ飛ばす気か!

  逃げ場がないし! 

   俺死にたくないし!


「月給未満の単価で死にたくない! 助けて! 神様助けて!」


 一緒に埋まってる神様が頼りになるかどうかは分からないけど、すがるものが他にないから必死で神頼み。


『【黄泉醜女(よもつしこめ)Tai!(たい)】の隊員は、イイ男に巡り会えず生涯を終えた【心霊喪女(ゴースト・ヴァージン)】達だ。若造の魂に【生かしておく価値】を見出したら退いてくれるかもしれん』


「なんでもします! 無価値扱いで殺されたくありません!」


 伊邪那岐(いざなぎ)様が赤いガラス玉のようなものを差し出してきた。


「これは、息子の火之迦具土神(ほのかぐづちのかみ)の力が宿った神具だ。それの中に若造の見出した価値を念じてみよ。活路が開けるやもしれん」


 渡された半透明の玉の中に何かが見えた。


 意識が吸い込まれるように眼前に地球生命の歴史が広がる。


 地球生命の進化の過程――そして、ヒトの誕生。


 直立二足歩行により自由に使える両手を獲得し、それにより高度な知能を発現したヒトの祖先。

 しかしその代償として、出産時の脆弱性と長い育児期間という縛りを抱えた。


 生物として生き残るのにあまりに不利な形質。

 それを克服するために考えた知恵。


 産み育てる女を男が力と優しさで守るという役割分担――文明の原点。


 これこそが、人間が価値と呼ぶ物全ての根源(ルーツ)。


 見えたぞ! 男の人生の価値!


【男の人生の価値は女の我儘を叶える事である】


 到達した真理が俺に道を示す!

 炎の神の加護を受け、俺の魂が熱く輝く!


 「マナ・パワァァァァァァ!」


 魂の奥から轟いた叫びと共に、視界が光に包まれた。


…………


 気が付いたら、俺の部屋のコタツの前に転がっていた。

 起き上がってコタツの上を見ると、さっき作った【契約書】。

 でも赤い大きなスタンプが押してある。


【却下】 


「た、助かった……」


 この婚前契約さえなければ、俺が死ぬ危険は無い。

 だとしたら、俺の高価値人生(ハイバリューライフプラン)の次のステージはヨミコとの【結婚】だ。


 婚前契約なんて無くたって、そもそもヨミコは安上がりだ。

 共働きなら育児と資産形成の両立だってできる。

 最高じゃないか。


 部屋を見渡してヨミコを探すと、台所の隅で正座して静かに泣いていた。


「ヨミコ。一体何があったんだ?」


 目を真っ赤に腫らして、重ねて片づけてある紙ゴミに涙を落として泣いている。

 付き合いは長いけど、ヨミコのこんな姿は見たことが無い。


「外堀ナシからの同棲一年半で男をオトせないのはどういう事だって、伊邪那美(いざなみ)様に鬼説教された」


 うわぁ……。伊邪那美(いざなみ)様、女性にも厳しんだ。


「火の神の力で集った歴代の地球生命の魂達に、オスに求められないメスの存在自体が有性生殖5億6千万年の歴史に対する冒涜だと罵倒されて……」


 ひどい! 伊邪那美(いざなみ)様は名実ともに鬼女神だ!


「メスの存在価値を汚した罪を償えと、銀塊を強奪されてミジンコのメスに土下座させられたわ……」


 ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ! 俺の銀塊が無いぃぃぃ!

 いや、違うだろ俺。さすがにここはヨミコの心配が先だろ。


 それにしても、なんてひどい事をするんだあの鬼女神様。


「私って……【喪女(もじょ)】って……、そんなに無価値なの?」


 小さく丸まって嗚咽を漏らすヨミコ。

 それを見て、小学生の頃に一緒に遊んだあの子を思い出した。


 家が近所で幼稚園から一緒だったけど、中学受験のために疎遠になったあの子。

 明るく無邪気で、当たり前のようにとんでもないことをするあの子。


 こんな姿にしていい存在じゃない。

 俺が何とかしないと。


「ヨミコ! 【結婚】しよう! お前は無価値なんかじゃない!」


「ふざけんなぁぁぁ!」


 いきなり立ち上がったヨミコが鬼の形相で絶叫。


「空調も無い六畳一間の寝袋雑魚寝で当たり前のように一年半も飼殺しやがって! 今時フェレットだってこんな扱いされてねぇぞ! それでなんで【プロポーズ】ができるんだよ!」


 余りの剣幕に後ずさる俺。


「いやでも【ゼ〇シィ】持ってきたのヨミコだよな」

「書店員さんの強い勧めで買っただけだよ! 私は【結婚】なんて一言も言ってねぇだろうが!」


 そういえばそうだ。

 ヨミコは【結婚】に言及してない。

 俺が勝手に暴走して【婚前契約】を言い出したのが発端だ。


「勝手に暴走して【婚前契約】だぁ? 何なんだよあの契約内容! 妊娠の命懸けの重圧に耐えて働けだと? それで苦痛を越えて授かった子供を1歳にもならねぇうちに施設に預けて働いて生活費出せだと? ドコから産まれてダレが育てたらソレを【常識】に出来るんだこのキ〇ガイ!」


 考えてみればそうだ。

 本当の【命懸け】の意味はさっき学んだ。

 あの重圧が何カ月も続くなんて考えられない。


 そして、子供にとって母親は絶対的存在だ。

 俺が辛かった中学受験を乗り切れたのも、母の支えがあったからだ。

 全寮制の中学校に入学した時に母の存在の大きさを痛感したんだ。


 ましてや、0~1歳児から母親取り上げるなんて。ありえないだろ。


 なんでそれが【常識】なんだよ。

 そんな扱いをされて子供が産めるわけがない。

 少子化が進むのは当然だ。


「分かってんだよ……。テメェに捨てられたら後が無ぇ事ぐらいは。なろう系のファンタジーならクズ男捨てた後にスパダリに拾われる展開が鉄板だけどな。現実世界じゃ27歳の交際歴ナシの喪女(もじょ)なんて、ワンチャン逃したら【無●様(む●●さま)】として独りで枯れる未来しか無ぇよ。分かってんだよ……」


 そうだな。ヨミコは女にしてはこういうところは賢い。

 出生数は男女ほぼ同じだけど、安定収入無い男は婚活市場から脱落するから、今の時代普通に女が余る。

 美女は遊ぶ男を選べるというだけで、モブでも美女でも結婚相手は選べない。

 27歳のヨミコが今から他の結婚相手を見つけるのは現実的に難しい。


「分かってるから耐えた。でもな。結婚前は愛玩動物以下の扱いして、結婚後はタダ未満の対価で命賭けて、その後働けと? テメェにとって女の命はそんなに安物か! 無価値か! 何考えて生きたらそんなことができるんだよ!」


 1000円の銃弾や16万円の砲弾に殺されかけて絶望したけど、俺はヨミコの命をそれより安く扱っていたのか。


「働くのは嫌いじゃない。稼げない訳じゃない。ただ、弱くなる時だけは支えて欲しい。それすら認められない扱いを男から受けたせいで……。女の、メスの価値を貶めた罪を問われて、歴代の地球生命の魂の前でミジンコ様に土下座だよ……」


 俺のせいか。

 俺があんな婚前契約を突き付けたからヨミコは尊厳破壊されたのか。


「なんか言えよ……。私を貶めて満足なんだろ。これが常識なんだろ」


 言葉が出ない。

 俺はどうすればいい?


「【喪女(もじょ)】の命の価値なんてプランクトン以下なんだろ! 排水管のスライムに生息する従属栄養細菌(じゅうぞくえいようさいきん)ぐらいなんだろ! 望み通り汚物として消毒されてやるよ!」


 ヨミコが台所のシンク上にある【排水管清掃用塩素系洗剤】のボトルを取った。


「やめろぉぉぉぉ!」


 俺はとっさにヨミコを抱き締めて、ボトルを取り上げた。


「触んじゃねぇ! テメェが創り出した汚物だぞ!」


 俺の腕の中で暴れるヨミコ。

 しかし、あの洗剤はご家庭にある薬剤では危険度上位に入るブツだ。悪用されると取り返しがつかないことになる。


 俺のすべき事。

 反省や謝罪は無意味だ。

 ヨミコの尊厳を破壊した俺は【三途の川】を渡れない。


「生きろ! 生きて、有性生殖5億6千万年の歴史の頂点に君臨しろ!」

「できるわけねェだろうが! ミジンコ以下の【喪女(もじょ)】だぞ!」


「目標達成の第一歩は、できると思う事だ! 頂点に君臨するために必要な物は全部俺が用意する! 俺の魂を全て燃やして、ヨミコを頂点まで打ち上げてやる!」


 地獄にすらたどり着けない魂だ。

 ヨミコのために全部燃やして悔いは無い。


「マトモな、家が欲しい……」


 ヨミコが暴れるのをやめてつぶやいた。


「そうだよな。どんな家がいい? 新築か? タワマンか?」

「ここの近所に丁度いい中古住宅の売物件があるの。子供3人ぐらいなら十分な広さよ。築20年だからリフォームすれば十分住めるわ」

「そうか。なんとかしよう」


 この近辺の不動産の相場からすれば、俺の資産でローン無しでも手が届く。


「私の職場。児童養護施設だけど、幼児が入所することもあるの。その中には、母親が仕事家事育児の激務で倒れて長期入院になって帰る場所を失った子も居るわ……。あの子達が毎晩お母さんを求めて泣くのを見るのがつらいの……」


 【共働き】を常識とする社会の陰でそんな事が起きていたのか。

 次世代の価値の担い手になんてひどい仕打ちを。

 本当に日本円が紙くずになるぞ。


「全部何とかする。母親に専念できるようにな。育児に疲れたら休む時間ぐらい作るぞ。子供に愛される母親こそが生命の頂点だ。ヨミコならできる」


 俺の全てを使って、ヨミコを頂点に輝かせる。


「【共働き】が常識じゃないの?」

「夫婦は法律や常識が及ばない特別な関係だ。社会がどんなデタラメを常識にしても俺達には関係ない。俺の全てでヨミコの我儘を叶える」


 俺に出せる物は全部出す。

 命懸けの対価としては安いが、それしかできない。

 むしろ、男の命はそのためだけにあるのだろう。


「……【小説家】になるのが夢なの。……子供が育ったら……」

「いいぞ。好きなだけ書いたらいい。本をたくさん読めばいい。取材のために世界を飛び回ってもいい。何があってもとことん応援してやる。ヨミコならきっとスゴイのを書ける! 自伝を書けば名作だ!」


 どんな我儘だって叶える。この命尽きるまで。


「……書くよ。頑張って書くよ……。自伝は書かないけど」


 ヨミコが抱き着いてきた。

 その小さな身体とほのかな体温に人生最高の価値を感じた。


 価値と言っても、妻や子供は所有物にはならない。

 だからこそ、妻子のために全てを捧げて次世代に命を繋いだ人生に価値がある。

 これが俺の高価値人生(ハイバリューライフプラン)の答えだ。


「ヨミコの尊厳が、俺の全てだ」

「じゃぁもう【子作り】する? 安上がりだし、簡単だよ。多分」


 当たり前のようにとんでもないことを言い出したよ。

 魅力的な提案だけど、簡単にはできない。ヨミコは安くないんだ。


「もう逃げないし待たせないから、順序は守ろう」


 【ゼク〇ィ】付録の【婚姻届】が使えるな。保証人は双方の両親でいいか。

 帰省先は路線バス1本の距離だしヨミコの実家もその近所だ。


 まぁ、ヨミコは小学校の頃の同級生で、親御さんも顔見知りだ。

 見通しを示せば反対される理由は無いだろう。


 朝になったら朝食済ませてから出発だ。

 新しい高価値人生(ハイバリューライフプラン)の始まりだ。


………………

…………

……


 伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と伊邪那美命(いざなみのみこと)。

 神国日本を創り出した夫婦神であるが、死別後に再会した黄泉平坂にて夫が犯した【覗き行為】により喧嘩別れ。日本人が寿命という縛りを持つ原因となった。

 それから数十世紀。国産みの神として近年の少子化を気にしており、結婚を迷う若い男女を見つけると二柱でひょっこり出てきて【茶番劇】を披露する。

 今回は書店員に化けて【ゼク〇ィ】にオマケを付けたようだ。


 ヨミコの【神級暴言(かみきゅうぼうげん)泣き墜(お)とし】の原案は伊邪那美(いざなみ)様の入れ知恵。だけど、執筆で培った創作力によるヨミコのアレンジで言葉の刃はAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)並みに強化され、男心を見事に撃ち抜いた。

 ちなみに叫びの大半は演技じゃなくて本音。


 そして、神の名誉のためにあえて書くなら――

  伊邪那美(いざなみ)様は銀塊を強奪していない。


 男が大事に蒐集(しゅうしゅう)していた貴金属(ヘヴィーメタル)を祈祷料として無断で差し出したのはヨミコ。

 元自衛官でもありミリタリー小説を執筆する彼女が捧げた願いは――


 【銃身焼けるまで撃ち尽くせ】


 かくして、銀塊10kgは12.7mm通常弾2000発(約320kg)と過剰連射で焼損した銃身の代金とその他諸経費として南太平洋に消えた。

 艦砲射撃が実施されていれば残りの貴金属(ヘヴィーメタル)も40mm榴弾1パレット分(240発 約850kg)の代金に消えるところであったが、砲撃中止により金、プラチナ、パラジウムの地金はヨミコに返却された。


 タダでは済まさん――その実践の投入鉄量(ヘヴィーメタル)に地獄女神もドン引きした。


 女を怒らせてはいけません。

 女を安く扱ってはいけません。


 これは大事な事ですよ。

●オマケ解説●

 火之迦具土神(ほのかぐづちのかみ)の加護により命の真理に到達した男の叫び「マナ・パワァァァァァァ!」は、かぐつち・マナぱ様からお借りしました。

 ありがとうございました。


<参考:ヘヴィーメタルの相場(2026年1月ぐらい)>

・金地金100g 240万円ぐらい

・銀地金10kg 420万円ぐらい

・プラチナ地金100g 120万円ぐらい

・パラジウム地金100g 100万円ぐらい


 貴金属、特に金の価格は通貨の価値を示す指標。

 10年前、20年前の相場と比較して、日本円の価値がどんだけ落ちたか見てみよう。


 資本主義の性質を表現する「r > g《アール・グレート・ザン・ジー》」という不等式。

 働くよりも投資するほうが儲かるという意味だけど、文明における価値の根源は人の労働。働く人が居なくなったら通貨の価値は消滅し、投資活動は無価値な数値を取り合うだけのボードゲームに成り下がります。


 価値の源泉である人を産み育てることができるのは女だけ。

 女を粗末に扱う国は通貨が紙くずになります。こわいこわい。


<ヨミコさんの秘密>

 磐長(いわなが)ヨミコ 27歳 身長157cm モブ外観


 幼稚園児の頃から当たり前のようにとんでもない事をするお転婆(てんば)だった。

 小学生の時に唯一のツッコミ役だった幼馴染と疎遠になったことで、抑止力を失いお転婆(てんば)が暴走。


 地元の底辺高校で絶対不可侵(アンタッチャブル)な存在に上り詰めた後、高卒で自衛隊に入隊。

 教育隊、術科学校を経て、立入検査隊兼務の砲雷員としてミサイル艇に配属。


 出動が無いことは喜ばしい事と理解しつつも、訓練ばかりの日常から社会とのつながりが恋しくなり、5年間の任期満了後に児童養護施設に転職。


 立入検査隊の任務は、不審船に突入して内部から制圧する事。

 男性隊員に比べて小柄な体格を活かした狭い船内での格闘戦はヨミコの特技。


 一般男性を秒でボコれる彼女の児童養護施設における仕事は、境遇に悲観して非行に走ろうとする青年への教育的指導(物理)。


 指導力(物理)の評判を聞いた幼馴染の母親より、英才教育の副作用でダメな方向にズレてしまった息子の矯正(物理)を依頼され、結婚相談所にて偶然を装い再会。そのまま同棲へ。


 普通ならあり得ない六畳1Kの同棲生活。

 扱いのひどさに怒りを蓄えつつも、ミサイル艇での暮らしに慣れていたヨミコにとって狭い部屋での生活はむしろ快適で高度に順応。子供の頃大好きだった【秘密基地ごっこ】の続きとしてうっかり堪能してしまい、あっという間に一年半。


 年齢を考えるとこれ以上遊び続けるのはマズイとさすがに焦り、被っていた【猫】を脱ぎ捨てて既成事実(物理)で仕留めてやろうと思った矢先に、あの【ゼ〇シィ】を手に入れて成功報酬(生殺与奪権)の獲得に至った。


 平均身長で目立たない系モブのヨミコであるが、鍛え抜かれて引き締まった肢体の後姿は全ての男を魅了する至高の造形を持つ。ある意味これが【覗き】や【盗撮】の原因。

 男は弁明時に後姿の美しさを褒めちぎったが、後姿限定のベタ褒めが彼女の逆鱗に触れノートパソコンが窓から飛んだ。


 本当に、自伝を書いたら売れそうなヨミコさん

 どうかお幸せに……。


※ポイントクレクレ記述

 短編でこの文字数は長すぎてひどいと思ったスマホ読みの読者様が居たら、【ひどい】の証として★1評価をブチこんでもらえると、作者はバヌアツ戦場パートで区切って4千文字×3話の連載にすることも考えたけど読者様に1万文字超を一気読みさせる【強い引き】の技術の探究をしたくてあえて繋げてしまいましたと謝罪しつつ、この気持ち皆ならわかってくれるよね、ね、と共感を求めてみます。


 ひどいは最高の誉め言葉!


 ご愛読ありがとうございました!

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 質量を云う話に価値を言い、質量なき神に本質を説く。実に捻くれた話でありながら感銘を受けそうにもなるラストには、神への畏敬の念があるようにも感じられました。  金属塊はあるものの、一般人がPallad…
色々と『へぇ、へぇ』が詰まってました。 ゼク◯イに婚姻届が付録でついてるんですか!? まるでタ◯ンワーク! 需要があるから価値がある……。宇宙人に需要はあるでしょうか? さまざまなものを詰め込ん…
時に突き刺さり、時に笑いを誘う ナイスな長め短編お疲れさまでした! 長いことを気にされてますが、 このくらいなら全然許容範囲だと思います。 いっぺんで最後まで楽しんで読めました^^ 楽しませていた…
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