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新霊体験隊  作者: waku
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想いを宿した人形

 新霊体験隊は公園の調査を終え、少し成長したように感じられた。

だが、まだまだ、力不足、勉強不足といった事を痛感し日々、研究活動に力を入れていた。

そんなある日、ある相談が持ちかけられることになる。。。。

***平穏の日々と学び***


その後、桜ヶ丘公園では特に不可解な出来事の連絡もなく、穏やかな日々が続いていた。


新霊体験隊のメンバーたちは活動を休むことなく、放課後の部室で霊的な知識を学び、新しい心霊対策について調べる日々を送っていた。


本や資料を広げながら、隆がふと呟く。

「隼人……俺たちは霊感はあるけど、霊能力者じゃない。瑞希姉さんみたいに霊を浄化する力なんて、ほとんどゼロなんだ」


隼人は黙って聞いていたが、美優がゆっくり口を開いた。

「確かにそうね。私たちができるのは、せいぜい場を清めたり、調査したりする程度。でも、それだって無駄じゃないわ」


秀も笑みを浮かべて加わる。

「そうだよ。お香や砂、日本酒なんかで場を整えることはできるし、お守りだって身を守る手助けになる。俺たちは無力ってわけじゃない」


夕子は小さく頷いた。

「そうね……力の強さじゃなくて、どう向き合うかが大事なのかもしれない」


隼人は仲間たちを見渡し、真剣な表情で言った。

「僕たちにできることは限られてる。でもだからこそ、一歩ずつ学んでいこう。知識を増やせば、危険に巻き込まれた時にもきっと役立つはずだ」


メンバー全員の目が輝いた。

彼らの心には、自分たちだからこそできる役割を果たそうという、新たな決意が芽生えていた。


***日本人形の怪奇***



その日の夕方、部室の扉をノックする音が響いた。

「失礼します……」

恐る恐る顔をのぞかせたのは、クラスメイトの香奈だった。普段は明るく元気な彼女だが、その表情はどこか不安げで、声もかすかに震えていた。


「どうしたの、香奈?」隼人が声をかける。


香奈は、元気がなさそうに部屋に入ってきた。

「……実はね、この人形のことで相談したくて……」


スマホに写された画像には、古びた日本人形だった。白い顔はどこか無表情で、黒髪は艶やかに長く伸びている。

だが、その目だけは妙に光を帯びていて、見つめられると背筋がひやりとするような感覚を覚える。


夕子が小さく息を呑んだ。

「……これ、ただの人形じゃないわね」


香奈は不安そうに言葉を続けた。

「最近、この人形の目が夜になると光ったり、置いたはずの場所から動いていたりするの……。家族は気味悪がって、私にどうにかしてほしいって……」


部室の空気が一気に張り詰めた。

隼人は真剣な表情で人形を見つめながら、仲間たちに言った。

「……わかった。この件、俺たちで調べよう」


こうして、新霊体験隊は人形にまつわる不可解な現象に挑むことになった。


***香奈の家での出来事***


「人形のこと、もう少し詳しく聞かせてくれる?」

隼人の言葉に、香奈は小さくうなずいた。


「最初はね……夜中に部屋からカタッって音がして、目が覚めたの。最初は風かと思ったんだけど、翌朝、人形の向きが変わっていたのよ。枕元に置いてあったのに、窓の方を向いていたの」


美優がペンを走らせながら質問した。

「その人形、いつから家にあるの?」


「うちのおばあちゃんの家にずっとあったものなんだけど……去年亡くなった時、私が形見としてもらったの。最初は何もなかったんだけど、最近になって急に……」


香奈は言葉を詰まらせ、不安げに人形を抱きしめる。


「先週なんて……夜中に廊下から足音が聞こえたの。私の部屋の前で止まって、でも誰もいなかった。その次の朝、人形が部屋の外に出ていたのよ」


夕子が低い声でつぶやく。

「……完全にただの偶然じゃないわね」


隆は冷静に整理するように言葉を続けた。

「つまり、人形が動く・目が光る・音や足音がする……複数の現象が同時に起きているわけだ。これは強い念が関係している可能性が高い」


隼人は深くうなずいた。

「わかった。香奈、今夜俺たちで君の家を訪れて、人形を調査させてくれ」


香奈はほっとしたように微笑んだ。

「……ありがとう。ほんとに助かる」


こうして、新霊体験隊は香奈の家の人形を巡る調査を始めることになった。


***香奈の家の調査開始***


放課後、新霊体験隊の隼人、秀、美優の3人は香奈の案内で彼女の家を訪れた。

古い木造の二階建てで、玄関を入った瞬間にほんのりと古い畳と木材の匂いが漂ってくる。


「ここが……人形を置いてある部屋なの」

香奈に案内され、二階の和室に入った瞬間、隼人は空気の重さを感じ取った。


部屋の中央の飾り棚には、例の日本人形が鎮座していた。昼間の光の下でも、その目は妙に光を反射しているようで、じっとこちらを見つめているように感じられる。


「……確かに、ただの人形じゃないな」秀がメガネを押し上げながら低くつぶやく。

美優は眉をひそめて、ノートに書き込みながら言った。

「霊気までははっきり感じないけど……雰囲気が違う。普通の物とは思えないわ」


香奈は不安そうに人形を見つめた。

「最近は、この部屋に入るだけで寒気がするの……」


隼人は落ち着いた声で言った。

「大丈夫。今日はまず現象を確認するだけだ。危険を感じたらすぐに中止する」


その時、玄関の方から声がした。

「おーい!入っていいか?」


夕子と隆が合流してきた。

「二人とも来てくれたのか」隼人が少し安心したように笑う。

夕子は腕を組みながら部屋を見回し、すぐに人形に目を止めた。

「……これね。見ただけで鳥肌が立つわ」


隆は真剣な表情でカメラと簡易測定器を取り出し、準備を整える。

「じゃあ、みんなで調査を始めよう。どんな小さな変化でも見逃さないようにしよう」


こうして、新霊体験隊5人は香奈の家の和室で、人形をめぐる最初の調査を開始した。


***人形の異変***


和室の空気は、時間が経つごとにじわじわと重たくなっていった。

隆は温度計を確認しながら首をかしげる。

「……おかしいな。窓も閉めてるのに、この部屋だけ温度が下がってる」


美優は腕をさすりながら呟いた。

「確かに……寒気がするわ」


その時だった。

カタリ――と小さな音が響き、全員の視線が棚の上の人形に集まった。


「……今、動いたか?」秀が低くつぶやく。

人形の首が、わずかに右へ傾いていた。

さっきまで真正面を向いていたはずなのに――。


「錯覚じゃない……!」夕子が息を呑む。


隼人が慎重に一歩近づいた瞬間、再びカタッ、と音がして、人形の右腕がゆっくりと下へ落ちた。

まるで見えない糸で操られているかのように、不自然に動いたのだ。


香奈は顔を青ざめさせ、思わず隼人の後ろに隠れた。

「ほら!これよ!毎晩こうやって少しずつ動くの!」


隆が慌ててカメラのシャッターを切る。

「証拠は残せた……でも、これは本物だ。何かが宿ってる」


その瞬間、人形の黒い瞳が蛍光灯の光を反射し、ギラリと赤く光ったように見えた。

部屋に冷たい風が流れ込んだかのように障子がガタガタと揺れる。


「……っ!危ない!」隼人が叫び、全員が人形から距離を取った。


和室は不気味な沈黙に包まれる。

ただ一つ確かなのは――この人形に“ただならぬ存在”が宿っている、ということだった。


***応急処置***


「これ以上近づくのは危険だ」

隼人が声を張ると、秀がすぐに盛り塩を用意し、人形の四方に置いていった。


「これで結界ができるはずだ。触らずに封じよう」


人形はじっと沈黙している。だが、その瞳の奥に潜む気配は、まだ消えてはいなかった。


隼人は瑞希姉さんから受け取った浄化のお香を焚き、部屋に柔らかな煙を漂わせた。

「……少しは落ち着いたな」


さらに秀は部屋の入口に近所の神社で手に入れた魔除けの札を貼り付けた。

「これで簡単には動けないはずだ」


その時、夕子が手首から黒水晶のブレスレットを外し、香奈に差し出した。

「これを持っていて。少しでも身を守る助けになるはずだから」


香奈は震える手でそれを受け取り、深く頭を下げた。

「……ありがとう。本当に心強いわ」


その夜は大きな異変もなく、応急処置は成功したかに思えた。


***翌日の異変***


だが翌日。

香奈は学校に姿を見せなかった。先生の話では「急に熱を出して休んでいる」という。


不安になった隼人たちは放課後すぐに香奈の家を訪れた。

玄関に入るなり、ただならぬ気配が漂っている。


「……嫌な感じがする」美優が小声で呟く。


急いで二階の和室へ入ると、彼らは目を疑った。


 前夜に置いたはずの盛り塩は、白い粒ではなく水のように溶け、畳に染み込んでいた。

入口に貼った札は無惨に破かれ、文字が判読できないほどに裂けている。

さらに、香奈に渡したはずの黒水晶のブレスレットは床に散らばり、紐は切れて石がバラバラになっていた。


「……これは、結界を突破されたってことだ」隆が低い声で言う。


「ただの霊じゃない。明らかに強い意志を持っている」秀も顔を険しくする。


隼人はすぐにスマートフォンを取り出し、瑞希姉さんに連絡を入れた。

「姉さん、緊急事態だ。昨日張った結界が全部破られてる……!」


しばらくして、落ち着いた声が返ってきた。

『……わかった。今夜、そっちに行く。必ず来るから、それまで無茶はしないで』


その言葉に、隼人は深く息を吐いた。

「……よし、瑞希姉さんが来てくれる。俺たちはそれまで持ちこたえよう」


 だが部屋の隅に置かれた人形は、相変わらず静かに座っている。

ただ、その黒い瞳の奥に――“薄笑い”のようなものが浮かんでいるように見えた。


***再び結界の強化***


 隼人たちは、崩れた結界を立て直すために急いで準備を始めた。

秀が再び盛り塩を人形の四方に置き、簡易の結界を張る。

隼人は浄化のお香を焚き、和室いっぱいに煙が広がった。


「これで少しは押さえ込めるはず……」


 隆は神社で受け取った新しいお札を貼り直し、美優は鞄から透明に輝く水晶を取り出した。

「マリアさんに頼んで譲ってもらった結界の水晶よ。四隅に置けば力が安定するはず」

カチリ、と音を立てて四隅に石が並べられると、空気が僅かに澄んだように感じられた。


 香奈には、新たに黒水晶のブレスレットと銀で作られた魔除けのペンダントが渡された。

さらに彼女の部屋の四隅にも結界の水晶を置き、魔除けの香を焚いた。


「これで二重の守りになるわ」夕子が頷き、隆と共にお経を唱え始めた。


***異変の始まり***


その瞬間――。


ゴゴゴゴゴ……!


家全体が低く唸り、壁がきしみ始めた。まるで地震のように床が揺れ、天井からはカタカタと音が響く。

「ラップ音だ……!」秀が顔を上げる。


 隼人が周囲を見渡すと、香奈の前に“人形の幻影”が現れた。

飾り棚に座っているはずの人形と全く同じ姿の影が、スッと香奈のすぐ前に立っている。


そして声は聞こえないのに、心の中に直接響いてきた。


――あなたも、一緒に行きましょう。


香奈の顔が青ざめ、膝が震える。

「や、やめて……!」


隼人は即座に異変を感じ取り、人形の部屋に駆け込むと、周囲に携帯していた浄化スプレーを一気に吹きかけた。

白い霧が空間を覆い、異様な気配を押し返そうとする。


だがその刹那――。


全員の体がピタリと止まり、金縛りに襲われた。


 隆も夕子も、美優も秀も、声を出そうとしても喉が塞がれたように動かない。

目だけが必死に動き、視界に入るのは、じっとこちらを見つめる人形の黒い瞳。


その瞳が、どこか楽しげに笑っているように見えた。


***瑞希姉さんの到着***


金縛りに襲われた全員が身動き取れずにいた時、玄関の扉が勢いよく開かれた。


「隼人!」


凛とした声が響くと同時に、和室に足音が駆け上がってくる。瑞希姉さんだった。


彼女が和室の入り口に現れた瞬間、空気が一変した。手には大きな数珠と、古い経典、そして白い布に包まれた何かを抱えている。


「みんな、目を閉じて!」


瑞希姉さんの一声で、隼人たちは必死に目を閉じた。すると不思議と、体を縛っていた見えない力が緩んでいく。


「ふう……間に合った」瑞希姉さんは安堵の息を漏らし、すぐに人形を見据えた。


その黒い瞳は、今度は瑞希姉さんを睨みつけている。まるで「邪魔をするな」と言っているかのように。


***人形の正体***


「この人形……ただの地縛霊じゃない」


瑞希姉さんは人形の前に座り込み、冷静に観察を始めた。


「香奈ちゃん、この人形のおばあさんについて、もう少し詳しく教えて」


香奈は震え声で答える。


「おばあちゃんは……人形が大好きで、たくさん集めてたの。でも晩年は一人暮らしで、寂しがってた。この人形だけは特に大切にしてて、毎日話しかけてたって……」


瑞希姉さんは深くうなずいた。


「そういうことね。おばあさんの『寂しさ』と『愛情』が人形に宿り、さらに亡くなった後の『この世への執着』が加わって、強い霊的エネルギーになったのね」


隼人が息を呑む。


「じゃあ、おばあさんの霊が……?」


「正確には、おばあさんの『想い』が人形と融合して、独立した存在になったの。だから普通の浄化では効かなかった」


瑞希姉さんは白い布を広げ、中から古い鈴と、美しく装飾された短刀を取り出した。


「この人形は『愛されたい』『一人にしないで』という強い願望を持っている。香奈ちゃんを『一緒に連れて行こう』としているのも、そのためよ」


***浄化の儀式***


瑞希姉さんは人形の前に正座し、数珠を手に取った。


「みんな、私の後ろに下がって。でも逃げないで。この子の『寂しさ』を理解してあげることが、浄化への第一歩なの」


隼人たちは言われた通り、瑞希姉さんの後ろに並んだ。


 瑞希姉さんは静かに経を唱え始める。だが、それは通常の除霊のような激しいものではなく、穏やかで優しい調子だった。


「南無阿弥陀仏……南無阿弥陀仏……」


鈴の音がチリンチリンと響き、お香の煙が立ち上る。


人形の瞳が再び光り、部屋の空気が震え始めた。だが今度は敵意ではなく、何か訴えかけるような、切ない気配だった。


「おばあさん……あなたはもう、この世にいる必要はないのよ」


瑞希姉さんが人形に向かって優しく語りかける。


「香奈ちゃんは、あなたを忘れたりしない。人形を大切にすることで、あなたの愛情はちゃんと受け継がれているの」


その時、人形の口元がわずかに動いたように見えた。


ゴゴゴ……と低い音が響くが、それは先ほどの怒りではなく、悲しみを表しているようだった。


***心を通わせる***


瑞希姉さんは立ち上がり、人形に近づいた。


「香奈ちゃん、あなたも前に出てきて」


香奈は恐る恐る、だが勇気を出して人形の前に立った。


「おばあちゃん……私、人形を粗末にしたりしません。でも、私を連れて行こうとしないで。私には私の人生があるから……」


香奈の涙声が和室に響く。


「でも、おばあちゃんのことは忘れません。この人形を見るたびに、おばあちゃんの優しさを思い出します」


その瞬間、人形の表情がふっと和らいだように見えた。


瑞希姉さんは短刀を取り、人形の前で印を結んだ。


「あなたの愛情は、もうこの子に十分届いているわ。だから安心して、向こうの世界に行きなさい。きっと、もっと素晴らしい場所で安らげるから」


チリン……と鈴の音が一段と美しく響く。


人形の瞳から、金色の光がゆっくりと立ち上がった。それは憎しみや怨念ではなく、暖かい愛情の光だった。


***浄化の完成***


光は次第に人の形を成していく。透明だが、確かにおばあさんの優しい顔が浮かび上がった。


『香奈……ありがとう。私の気持ちを受け取ってくれて……』


香奈の頬に涙が流れる。


「おばあちゃん……!」


『もう大丈夫。あなたは強い子になった。私も安心して、お爺さんのいるところへ行けるわ』


光に包まれたおばあさんの姿が、ゆっくりと薄れていく。


『みんな、香奈を守ってくれてありがとう。この子をよろしくお願いします』


隼人たちは深く頭を下げた。


「はい!」


 光が完全に消えると、人形はただの古い日本人形に戻っていた。あの不気味な気配はもうなく、ただ静かに佇んでいる。


瑞希姉さんは深く息を吐いた。


「……終わったわ。今度こそ、完全に浄化されたわね」


***平穏の戻った日々***


それから数日後、香奈の家は完全に平穏を取り戻した。


人形が勝手に動くこともなく、夜中に足音が聞こえることもない。香奈の部屋は暖かく、安らぎに満ちている。


「ありがとう、みんな」


香奈は新霊体験隊のメンバーに深々と頭を下げた。


「おばあちゃんの気持ちがわかって良かった。今は人形を見ても怖くない。むしろ、おばあちゃんが見守ってくれてる気がするの」


隼人は微笑んだ。


「それが一番だ。霊の中には、悪意を持っているものばかりじゃない。愛情や寂しさから生まれる霊もいるんだってことがよくわかったよ」


瑞希姉さんも満足そうに頷く。


「あなたたちも成長したわね。力ずくで追い払うのではなく、相手の気持ちを理解することの大切さがわかったでしょう」


隆が感慨深げに言う。


「今回は僕たちの力不足を痛感したけど、瑞希さんの浄化を見学できて勉強になりました」


夕子も頷く。


「霊との向き合い方にも、いろいろあるのね。怖がるだけじゃダメだってことがわかったわ」


秀は笑いながら言った。


「でも、結界の張り方はまだまだ練習が必要だな。あんなに簡単に破られちゃったし」


美優がクスクスと笑う。


「それでも、みんなで力を合わせて最後まで諦めなかったのが良かったのよ」


***新たな決意***


体育倉庫の部室で、新霊体験隊のメンバーたちは今回の事件を振り返っていた。


「今回の件で改めて思ったんだ」隼人が真剣な表情で口を開く。


「俺たちには、特別な霊能力はない。でも、困っている人を助けたいという気持ちと、霊と向き合う勇気はある」


秀が頷く。


「そうだな。力の強さじゃなくて、どう向き合うかが大事なんだ」


美優がペンを走らせながら言う。


「今度からは、霊の気持ちも考えて調査するようにしましょう。ただ怖がるんじゃなくて、なぜそこにいるのか、何を求めているのかを理解することから始めましょう」


夕子は腕を組んで微笑んだ。


「そうね。私たちなりのスタイルを見つけられた気がするわ」


隆はカメラを手に取り、今回撮影した写真を見返している。


「記録も大切だ。今回のことはしっかりファイルにまとめて、次に活かそう」


隼人は窓の外を見つめながら言った。


「きっと、また誰かが困っている時が来る。その時は今回の経験を活かして、もっと良い方法で手助けできるようになりたい」


夕日に照らされた部室で、新霊体験隊の5人は新たな決意を胸に抱いていた。


彼らの旅は、まだ始まったばかりだった。


***エピローグ***


一週間後、香奈は人形を綺麗に拭き清め、小さな神棚に大切に飾った。


毎朝、お茶とお花を供えて、おばあさんに感謝の気持ちを伝えている。


人形の表情は穏やかで、もう不気味さは微塵も感じられない。


「おばあちゃん、今日も見守っていてね」


そう語りかける香奈の声は、明るく希望に満ちていた。


そして新霊体験隊は今日も、誰かの助けになるべく活動を続けている。


次はどんな出来事が彼らを待っているのだろうか――。

購読、ありがとうございました。


人形シリーズは、怪談では鉄板の物語なので、今回も鉄板シリーズとして描いてみました。


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