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新霊体験隊  作者: waku


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倉庫の浄化と新たなる仲間

 隼人たちは、体育倉庫に悪霊がいる話を聞いて瑞希の到着を待っていた。


***瑞希姉さんの到着***


瑞希姉さんからの連絡を受けて三日後の金曜日の放課後、隼人の携帯に電話が鳴った。

「隼人君、今学校の正門前にいるわ。案内してもらえる?」

瑞希姉さんの声だった。隼人は急いで秀と美優に連絡を取り、三人で正門に向かった。


 正門前に立っていたのは、背が高く長い黒い髪にすらっとした30代前後の女性だった。どこか神秘的な雰囲気もあった。首には小さな水晶のペンダントを下げている。その眼差しは優しいが、どこか普通の人とは違う鋭さを持っていた。手には大きな布製のバッグを持っており中から何やら香の匂いがほのかに漂ってくる。


「瑞希姉さん、来てくれてありがとう。」隼人が挨拶した。

「こちらが秀君と美優さんね。隼人君からよく聞いているわ」瑞希は二人に微笑みかけた。


秀は少し緊張しながらも「初めまして、秀です。今日はよろしくお願いします」と頭を下げた。美優も丁寧に挨拶を返す。


「まず、太郎さんという地縛霊に会って、詳しい話を聞かせてもらいましょう。それから倉庫の浄化に取りかかるわ」瑞希の声は落ち着いていたが、その表情には真剣さが宿っていた。


***太郎との再会***


四人は運動場に向かった。夕方の西日が校舎を赤く染めている。瑞希は運動場の中央で手を合わせ、何かを小声で唱え始めた。すると、太郎の姿がうっすらと現れた。


「こんにちは、太郎さん」瑞希が自然に話しかける。

太郎は驚いた表情を見せた。「あなたは霊能者ですか?久しぶりに私の姿をはっきりと見ることができる方に出会いました」


隼人が紹介した。「太郎さん、この方が僕の親戚の瑞希姉さんです。電話でお話しした霊能者の方です」


太郎は安堵の表情を浮かべた。「それでは、あの倉庫のことを...」


「隼人君から連絡があって、心配で来たの。あの倉庫に潜む存在について、詳しく教えてもらえますか?」


太郎の表情が一気に暗くなった。「あの倉庫には、とても強い怨念が宿っています。私も近づくのが怖いほどです。最近、その存在の力が強くなってきているようで...夜中に倉庫から不気味な音が聞こえてくるんです」


「どのような音ですか?」瑞希が詳しく尋ねた。


「重いものを引きずるような音や、低いうなり声のようなものです。それに、倉庫の周りの空気がとても重く、近づくだけで胸が苦しくなります」太郎は思い出すだけで辛そうな表情を見せた。


瑞希は頷いた。「大丈夫よ、太郎さん。私が必ず浄化してみせるから。あなたも生徒たちを守りたい一心でここにいるのでしょう?」


太郎の表情が少し和らいだ。「はい...できる限り子供たちに危険が及ばないよう見守っているつもりです」


「ありがとう。今日で必ずあの倉庫を清めるわ」瑞希の言葉には強い決意が込められていた。


***浄化の準備***


 夕日が更に傾き、校舎に長い影が落ち始めた頃、一行は問題の体育倉庫に向かった。倉庫に近づくにつれ、確かに空気が重くなっていくのが感じられた。美優は思わず隼人の袖を握った。


「ここが例の倉庫ね」瑞希が倉庫を見上げた。「確かに強い邪気を感じるわ」


瑞希は倉庫の前で立ち止まり、持参していたバッグから様々な道具を取り出した。白い粗塩、線香、小さな瓶、数珠、そして古い経文が書かれた巻物。


「隼人君たち、少し離れていて。危険だから」瑞希は慎重に倉庫の周囲を歩きながら、塩を撒いていく。「この塩で結界を作るの。悪霊が外に逃げ出さないようにするためよ」


 塩の輪が倉庫を完全に囲むと、瑞希は線香に火をつけた。煙が立ち上り、神聖な香りが辺りを包み込む。夕闇の中で、線香の赤い火がほのかに光っていた。


「南無阿弥陀仏...」瑞希が静かに念仏を唱え始めると、不思議なことに倉庫から聞こえていた微かなうなり声が次第に大きくなってきた。まるで中の存在が瑞希の到来に気づき、警戒しているかのようだった。


「さあ、始めましょう」瑞希は倉庫の鍵を開け、扉をそっと開いた。


***黒い影との対峙***


 扉が開かれた瞬間、倉庫の中から冷たい風が吹き出してきた。その風は夏の暑さを一瞬で吹き飛ばすほど冷たく、不自然だった。瑞希が倉庫の中に足を踏み入れると、奥の暗闇から禍々しい存在が姿を現した。


 それは人の形をした黒い影だった。顔は見えず、ただ黒い霧のような存在が人の形を保っているという感じだった。影は瑞希を見つめると、低く響く声で話しかけてきた。


「来たな...久しぶりだ、霊能者よ」

「あなたは一体何者ですか?どうしてここにいるのですか?」瑞希が毅然とした態度で尋ねた。


「忘れたか...俺はここで死んだ者の怨念。この学校で苦しみ、死んでいった者たちの集合体だ」影の声は次第に大きくなり、倉庫全体に響き渡った。


 瑞希は数珠を取り出し、それを手に持って前に進んだ。「苦しんでいるのはわかります。でも、生きている子供たちに害を与えることは許されません」


「生きている者も、俺たちと同じ苦しみを味わうべきだ!」影が突然瑞希に向かって襲いかかってきた。


 瑞希は素早く印を結び、霊術を開始した。「臨兵闘者皆陣列在前!」真言を唱えながら数珠を影に向ける。数珠が青白い光を放ち、影の動きが一瞬止まった。


しかし影はすぐに体勢を立て直し、今度は複数に分裂して瑞希を取り囲んだ。「そんな小細工で俺たちを止められると思うのか!」


 瑞希は冷静さを保ちながら、持参していた小さな瓶を取り出した。これは特別な封印瓶で、悪霊を一時的に封じ込めることができる。しかし、強力な怨霊を封印するには相当な霊力が必要だった。


「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏...」瑞希の念仏の声が倉庫に響く中、激しい霊的な戦いが続いた。影たちは執拗に瑞希を攻撃したが、瑞希の霊術により徐々に追い詰められていく。


***封印完了***


 約20分間の激闘の末、瑞希は黒い影を小さな瓶に封印することに成功した。瓶の中で黒い霧がうごめいているのが見える。瓶には特殊な封印札が貼られており、中の存在が外に出ることはできない。


「はあ、はあ...」瑞希は額に汗をかき、疲労の色を隠せなかった。しかし、その表情には達成感も滲んでいた。


倉庫の外で待っていた隼人、秀、美優の三人は、倉庫から聞こえてくる様々な音に不安を感じていたが、急に静かになったのを感じて安堵した。


「瑞希姉さん、大丈夫ですか?」隼人が心配そうに声をかけた。


「ええ、なんとか封印できたわ。でもこれは一時的なものよ」瑞希は封印した瓶を大切に手に持ちながら答えた。「完全な浄化は私の工房で行う必要があるの。この瓶に封じられた存在をきちんと成仏させてあげないと」


太郎も現れて、「ありがとうございます。倉庫から感じていた嫌な気配が消えました」と感謝の言葉を述べた。


瑞希は微笑んだ。「太郎さんも長い間大変だったでしょうね。これでようやく安心して過ごせるはずです」


***完全浄化の報告***


三日後、瑞希から隼人に電話があった。

「隼人君、報告があるの。例の封印した存在の完全浄化が成功したわ」


「本当ですか?」隼人は安堵の声を上げた。


「ええ。私の工房で丸二日間かけて浄化の儀式を行ったの。最初は抵抗していたけれど、最終的にはその存在も自分の過ちに気づいて、静かに成仏していったわ」瑞希の声には温かみがあった。


「それは良かった。瑞希姉さん、本当にありがとうございました」


「これで倉庫は完全に安全になったわよ。普通に使えるはずです」


***社会部としての申請***


その日の放課後、秀が担任の田中先生のところに向かった。田中先生は40代の穏やかな男性で、生徒思いの良い先生として知られていた。


「先生、相談があります」秀が職員室で声をかけた。


「なんだい、秀君?」田中先生が振り向いた。


「実は、僕たち数人で新しい部活動を始めたいと思っているんです。『社会部』という名前で、地域の歴史や文化について調査研究する活動をしたいと考えています」


「社会部?面白そうだね。どんな活動をするつもりなんだい?」田中先生が興味を示した。


「地域の古い建物や史跡を調べたり、地元の方にインタビューをしたりする予定です。それで、活動拠点として体育倉庫を部室として使わせてもらえないでしょうか?」秀が恐る恐る提案した。


田中先生は一瞬驚いた表情を見せた。「体育倉庫?あそこは確か...最近まで変な音がしていたりして、近寄りにくい場所だったが...」


「はい、でも最近は全然そんなことありません。僕たちで確認したんですが、とても静かになっています。資料整理や打ち合わせをするのにちょうど良い広さなんです」秀が説明した。


田中先生は少し考え込んだ。「そういえば、ここ数日は体育の先生からも苦情がないな...よし、社会部として正式に認可しよう。ただし条件があるぞ」


「条件ですか?」


「中の古い道具類をきちんと片付けて整理してもらうこと。それと、定期的に活動報告書を提出すること。そして何か問題があったらすぐに報告すること。この三つを守れるなら使用を許可する」


秀は喜んで頷いた。「ありがとうございます!必ず守ります!」


***部室改造作業***


 次の日の土曜日、隼人、秀、美優の三人は早朝から倉庫の片付けを開始した。もう嫌な気配は全く感じられない。中には古い体育用具や使わなくなった道具がたくさん積まれていた。


「うわあ、結構大変だね」美優が汗を拭きながら言った。


「でも、これが終われば立派な部室ができるんだ」隼人が励ました。


 三人は一日がかりで倉庫を片付け、使用可能な道具は体育教師に返却し、不要なものは適切に処分した。翌週の月曜日には、新しい机と椅子を4つずつ購入して設置した。


 火曜日には本棚を設置し、心霊現象に関する書籍や参考資料を並べた。美優が図書館から借りてきた民俗学の本や、隼人がインターネットで注文した霊現象の研究書など、様々な資料が棚を埋めていく。


水曜日にはノートパソコンを設置した。これは調査で集めたデータや写真を管理するためのもので、秀が家から持参した古いものだったが、十分実用的だった。


木曜日、最後の仕上げとして、暑い夏場の活動に備えてスポットクーラーを設置した。これで快適に活動できる環境が整った。


「最後に看板を作ろう」美優が提案し、三人で手作りの看板を作製して壁に取り付けた。表向きは「社会部」、しかし三人だけが知る真の名前「新霊体験隊」の文字も小さく併記された。


「これで立派な部室の完成だね!」隼人が満足そうに部屋を見渡した。確かに、かつて禍々しい存在が潜んでいた場所とは思えないほど、明るく快適な空間になっていた。


***新メンバーの登場***


部室が完成して一週間後の金曜日、隼人が部室で資料整理をしていると、扉を叩く音がした。


「失礼します」可愛らしい声がして、小柄な1年生の女子生徒が顔を出した。


「君は?」隼人が尋ねた。


「1年B組の夕子です。社会部に入部させていただきたくて」少女は丁寧にお辞儀をした。


程なくして秀と美優も到着し、三人は夕子の話を聞くことにした。


「実は私、昔から霊感があるんです」夕子が控えめに説明した。「家族にも霊能者がいて、小さい頃からそういう話を聞いて育ちました。体育倉庫を浄化されたって噂を聞いて、とても興味を持ったんです。社会部って表向きの名前ですが、本当は、違いますよね?」


「霊感があるって、具体的にはどんな?」美優が興味深そうに尋ねた。


「霊の姿を見ることができますし、時々彼らの声も聞こえます。でも、浄化はできません。見えるだけで、何もしてあげられないんです」夕子は少し悲しそうな表情を見せた。


そのとき、扉が再び開き、今度は背の高い男子生徒が入ってきた。


「あ、すみません。1年A組の隆です。僕も社会部に興味があります」


隆は眼鏡をかけた真面目そうな男子生徒で、手にはノートとペンを持っていた。


「僕は霊感は全くありませんが、データ分析や科学的な調査なら得意です」隆が説明した。「心霊現象を科学的にアプローチして解明したいと思っているんです。表向きは地域調査ということですが、実際の活動内容を知って、ぜひ参加させていただきたいと思います」


隼人、秀、美優は顔を見合わせた。そして、隼人が代表して答えた。


「歓迎するよ。君たちのような人材を待っていたんだ。ただし、僕たちの本当の活動は極秘だ。表向きは社会部として地域調査をしているが、実際は霊現象の調査をしている。それでも構わないか?」


夕子と隆は即座に頷いた。「もちろんです」


こうして、表向きは社会部、実際は新霊体験隊という5人の部活動が誕生した。


#***新体制での初活動***


新メンバーを迎えて最初の部活動の日、太郎も新しいメンバーを歓迎するために現れた。


「新しい仲間が増えて嬉しいです」太郎が笑顔で言った。


夕子は太郎の姿をはっきりと見ることができ、「太郎さん、はじめまして。夕子です。これからよろしくお願いします」と自然に挨拶を交わした。


隆は最初太郎の姿は見えなかったが、夕子や隼人たちが話しかけている様子を観察し、ノートにメモを取っていた。「面白い現象ですね。特定の人にだけ見える存在...これは研究のしがいがありそうです」


新しいメンバーの役割分担も決まった。


隼人は部長として全体の統率を取り、霊感を活かして現場調査を行う。

秀は行動力を活かして情報収集や現場調査のサポートを担当。

美優は資料調査と分析を得意とし、事前準備や事後の検証を行う。

夕子は強い霊感を活かして霊との交流や詳細な情報収集を担当。

隆は科学的検証とデータ管理を担当し、現象の客観的分析を行う。


「これで学校がもっと安全になりそうですね」太郎が嬉しそうに言った。


「はい、みんなで協力して、困っている人たちを助けていきましょう」隼人が決意を込めて答えた。


***新たなる出発***


 快適な部室を手に入れ、新メンバーも加わった新霊体験隊。瑞希姉さんからも「素晴らしい環境を作ったのね。何かあったらいつでも連絡してください」と激励のメッセージが届いた。


夕方、部室で今後の活動計画を立てていると、校内放送が流れた。

「社会部の皆さん、職員室まで来てください」


田中先生のところに向かうと、先生の表情は少し困ったような感じだった。


「実は、地域の方から相談が来ているんです」田中先生が説明した。「近所の公園で最近変わったことが起きているらしくて、社会部の地域調査の一環として、君たちに相談したいとのことなんです」


隼人たち5人は顔を見合わせた。これが新体制での最初の正式な依頼となりそうだった。表向きは地域調査だが、実際は霊現象の調査になる可能性が高い。


「わかりました。詳しい話を聞かせてもらいます」隼人が答えた。


太郎も運動場から見守るように現れ、「君たちなら大丈夫。でも無理はしないように」と励ましの言葉をかけた。


 こうして、表向きは社会部、実際は新霊体験隊の本格的な活動が始まろうとしていた。体育倉庫の浄化から始まり、図書館での活動拠点確保、太郎との出会い、そして瑞希姉さんの助けを得た悪霊浄化。それらの経験を経て、新たな仲間と共に、より大きな展開を迎えようとしている。


夕日が校舎を照らす中、5人の部員と見守る太郎は、これから始まる新しい冒険に向けて、静かに決意を固めていた。部室の窓から見える運動場では、他の部活動の生徒たちが元気に練習に励んでいる。普通の学校生活の中に、特別な使命を持った社会部(新霊体験隊)の活動が溶け込んでいく。


明日からまた、新しい物語が始まるのだった。

 購読、ありがとうございました。

今回は、中々、次の展開が決まらなかったので、更新が遅れました。


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