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新霊体験隊  作者: waku
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新霊体験隊の新たなる指針

 隼人、秀、美優、数人で結成した新霊体験隊だったが、まだ、主だった活動方針は定まっていなかった。

数人で今後の活動方針について、話し合っていた。

 先日の事件を解決してから、しばらくが経った放課後のことだった。いつもの様に集まる2人に向かって、隼人は、ある提案を口にした。


「メンバーの活動拠点を探そう」


秀と美優もその提案に合意し秀が口を開いた。


「ひとまず図書館を拠点にするのは、どうかな?数人のグループ活動としては適切な場所だと思う。それに色々な本を調べて今後の活動のための知識を得るためにも良いだろう」


 三人はさっそく図書室に向かった。図書室には他にも生徒たちがいた。英語活動部や歴史研究部のメンバー、そして自習のために放課後に本を読んでいる生徒たちもいた。


隼人たちは空いている席に座り、これからの活動について話し合うことにした。


「まず図書館を活動拠点にしよう。学校にも新しい活動部として認めてもらうために、表向きは『社会部』といった名前はどうかな?」隼人が提案した。


「表向きは色々な地域の取材活動といった形で、新霊体験隊の活動を行うというのは?」


美優が「賛成」と手を挙げる。


「よし、決まりだ」


***今後の準備***


「まず、今後の活動として、それぞれスキルを高めていくことも必要だ。今のままでは、これからの調査で遭遇する霊に対して無防備だからね」隼人が続けた。


「俺の親戚が霊能者をやってるから、霊的な対策の物をいくつか教えてもらうのも良さそうだ」


秀が応じる。「俺も近所の神社に神主をしている人がいる。そこでお札やお守り等を分けてもらおう」


美優も続いた。「私も知り合いにマリアさんという占い師がいるの。そこでパワーストーンのブレスレットやお守りを分けてもらおうと思っているの」


「よし、これで俺たちも多少はパワーアップできそうだね」隼人が満足げに言った。


三人は図書室の静寂の中で、新たなスタートを切る準備を着実に進めていた。


*** 最初の手がかり***


 その後も三人は図書館で本を読んだり、学校内の噂を聞くなど、不思議現象について調べ続けた。様々な資料に目を通し、生徒たちから情報を収集する日々が続いた。


そんな中、ある興味深い噂を耳にすることになった。


「夜になると運動場に人が歩いているのを見る」


その噂は複数の生徒から聞かれるものだった。夜間に学校に残っていた部活動のメンバーや、遅くまで勉強していた生徒たちが窓から運動場を見下ろすと、誰もいないはずの場所に人影を目撃するというのだ。


新霊体験隊にとって、これは見過ごすことのできない最初の手がかりとなった。


図書館で三人はこの噂について議論を始めた。


「ただ、普通に学校の運動場で散歩しているとか、そういったのは無いかな?」隼人が疑問を口にした。


秀も首をかしげる。「わざわざ、深夜に学校の運動場を歩く意味とかあるのか?」


 確かに、普通に考えれば不自然な話だった。夜間の学校は施錠されているし何より深夜に運動場を歩く理由が思い当たらない。それでも複数の目撃談があるということは、何かしらの現象が起きているのは間違いないようだった。


 特別、何か被害に遭った話も無いので、しばらく様子を見る事になった。


 他にも色々な噂話もあったが、どれも、特別、被害に繋がる話は無かった。



***新たな装備***


一週間後、三人は約束通りそれぞれの知り合いから霊的な護身具を調達してきた。


 隼人は親戚の霊能者から、邪気を払う効果があるという水晶のペンダントと、霊を鎮める効果のある線香を分けてもらった。


「これをつけておけば、悪い霊に憑りつかれる可能性は低くなるって言ってたよ」隼人がペンダントを首にかけながら説明した。


秀は近所の神社から、お守りと数枚のお札を持参していた。


「神主さんが言うには、このお札は家の鬼門に貼ったり、持ち歩いたりすることで邪気を寄せ付けなくなるそうだ。それと、このお守りは身に着けておくだけで効果があるって」


美優は小さな布袋から美しいブレスレットを取り出した。


「マリアさんが作ってくれたの。ローズクォーツとアメジストを使っているから、心を落ち着ける効果と悪いエネルギーから守る効果があるそうよ」


三人はそれぞれの護身具を身に着け、なんとなく心強さを感じていた。


***新たな目撃情報***


その日の放課後、いつもの様に図書室で待っていると、美優が興奮した様子で図書館にやってきた。


「大変!新しい情報があるの!」


隼人と秀が振り向くと、美優は息を切らしながら続けた。


「昨日の夜、演劇部の佐藤先輩が遅くまで練習していて、帰る時に運動場を見たそうなの。そうしたら、トラックを歩いている人影を見たって!」


「それって、これまでの目撃談と同じパターンだね」隼人が確認した。


「でも今回は違うの。先輩が言うには、その人影は同じ場所を何度も何度もぐるぐる回っていたって。まるで迷子になっているみたいに」


秀が資料を整理しながら言った。「つまり、ただの不審者じゃない可能性が高いってことか」


「それに」美優が声を小さくした。「先輩が窓から呼びかけても、その人影は全く反応しなかったそうよ。普通の人だったら気づくはずなのに」


三人は顔を見合わせた。これまでの漠然とした噂話とは違い、具体的で不可解な行動パターンが見えてきた。


***調査の決意***


「よし」隼人が立ち上がった。「今夜、実際に確かめてみよう」


「え?夜の学校に忍び込むの?」美優が不安そうに尋ねた。


 秀が冷静に答える。「正面から入るのは無理だが、裏手の体育館近くに壊れた柵があったはず。そこから校庭に入れるかもしれない」


「でも危険じゃない?もし本当に霊だったら...」美優の声が震えた。


 隼人が自信を込めて言った。「だからこそ、みんなで護身具を用意したんだろ?それに、このまま放置しておくわけにもいかない。もし生徒に害が及ぶ可能性があるなら、俺たちが調査するしかない」


美優は一瞬迷ったが、やがて決心したような表情を見せた。


「分かった。でも、絶対に無理はしないって約束してね」


「もちろんだ。何か危険を感じたらすぐに逃げる。それが新霊体験隊の第一ルールにしよう」秀が提案した。


 三人は今夜の調査に向けて、最終的な準備を始めた。懐中電灯、携帯電話、そして各自の護身具。初めての本格的な霊現象調査に、緊張と期待が入り混じった気持ちで臨もうとしていた。


 夕日が校舎の向こうに沈んでいく。新霊体験隊の最初の夜間調査が、いよいよ始まろうとしていた。


***夜間調査開始***


 午後十時。三人は約束の場所で落ち合った。街灯の明かりが薄暗く校舎を照らしている。


「みんな準備はいい?」隼人が小声で確認した。


秀と美優は緊張した面持ちでうなずいた。三人は慎重に体育館裏の壊れた柵から校内に侵入した。


 運動場は静寂に包まれていた。月明かりがトラックを淡く照らし、時折吹く風が木々を揺らしている。三人は校舎の陰に身を潜め、じっと運動場を見つめた。


「何も見えないね」美優が囁いた。


「もう少し待ってみよう」秀が答える。


それから約十分後、隼人が息を呑んだ。


「あそこ...見て」


運動場のトラックに、確かに人影があった。薄ぼんやりとした輪郭の人物が、ゆっくりとトラックを歩いている。


「本当にいる...」美優の声が震えた。


その人影は、目撃情報の通り同じコースを何度も歩き続けていた。規則正しく、まるで日課のように。


***初めての接触***


「どうする?」秀が小声で尋ねた。


隼人は一瞬迷ったが、意を決した。「近づいてみよう。でも、何かあったらすぐに逃げるんだ」


三人は恐る恐る運動場に足を踏み入れた。人影は彼らの存在に気づいているのかいないのか、相変わらず歩き続けている。


 距離が縮まるにつれ、人影の正体がはっきりしてきた。それは中年の男性で、昔の体操服のような服装をしていた。表情は穏やかで、特に恐ろしい雰囲気は感じられない。


「あの...」美優が勇気を振り絞って声をかけた。


人影がゆっくりと振り返った。驚いたような表情を浮かべている。


「君たちが見えるのか?」穏やかな声だった。


美優は一歩前に出た。「はい、見えます。あなたは...」


「私はいつも夜のこの時間にグラウンドを散歩しているんだ。邪魔をしてしまったかな?」


意外にも、その霊は丁寧で人懐っこい口調だった。三人は少し安心した。


***太郎との出会い***


「私は太郎という。君たちは?」霊が自己紹介をした。


隼人が代表して答えた。「僕たちは、この学校の生徒の隼人、秀、美優です。あの、失礼ですが、あなたは...」


「ああ、察しがいいね」太郎は苦笑いを浮かべた。「そう、私はもうこの世の人間ではない。いわゆる地縛霊というやつだ」


美優が心配そうに尋ねた。「ずっとここに?」


「そうなんだ。どうやら、この場所に囚われているようでね。でも、悪いことばかりじゃない。毎晩の散歩が日課になっているし、この学校のことなら何でも知っているよ」


太郎の表情には寂しさもあったが、どこか達観したような落ち着きがあった。


「学校のこと、ですか?」秀が興味深そうに聞いた。


「ああ、長い間ここにいるからね。生徒たちの悩みや、校内で起こる不思議な現象、歴史的な出来事まで、いろいろと見てきた」


三人は顔を見合わせた。これは予想以上の収穫かもしれない。


「もしよろしければ」隼人が丁寧に尋ねた。「今度、また色々教えていただけませんか?」


 太郎は嬉しそうに微笑んだ。「もちろんだ。何か聞きたいことがあったら、いつでもこの時間に来てもらえたら答えるよ。一人でいると退屈だからね」


「ありがとうございます」美優が感謝を込めて言った。


「それじゃあ、今夜はこの辺りで」太郎は手を振った。「また会おう、新霊体験隊の皆さん」


そう言うと、太郎の姿はゆっくりと薄れていき、やがて完全に消えてしまった。


三人は静寂に包まれた運動場で、しばらく立ち尽くしていた。予想していたものとは全く違う、温かい出会いだった。


***太郎の残した言葉***


 翌日の放課後。

三人はいつものように図書館の一角に集まり、昨夜の出来事を振り返っていた。


「まさか、あんな穏やかな霊に会うなんてな」秀はまだ少し信じられない様子だ。


「うん…むしろ、普通に先生や先輩と話してるみたいだった」美優も頷く。


隼人はノートを開き、昨夜の会話を書き留めながら口を開いた。


「でも、太郎さんが最後に言ってたよな。『学校には他にも“気になる場所”がある』って」


 三人は思わず顔を見合わせる。

太郎の声は穏やかだったが、その時だけ妙に含みを持たせた言い方をしていた。


「たしか…『古い倉庫の近く』って言ってたよね」美優が記憶をたどる。


「うん、あそこって今は使われてないはずだろ?部活の道具置き場も移動して、長いこと閉まったままのはず」秀が言った。


隼人はペンを止め、ゆっくり頷いた。

「じゃあ…次はそこを調べてみるか。ただし、慎重にな」


***倉庫にまつわる噂***


 次の日から、三人はさりげなく倉庫のことを聞き込み始めた。

歴史研究部の部員から、こんな話を耳にする。


「あの倉庫?…昔は使われてたけど、ある時期から鍵がかけられて閉鎖されたんだって。理由はよくわからないけど、夜になると倉庫の中から何かを引きずる音がするって噂はあるよ」


また、別の生徒からはこんな証言があった。


「放課後、倉庫の近くを通ったら、窓の奥で何かが動いた気がした。誰もいないはずなのに…」


情報は断片的だが、どうやらただの空き倉庫ではなさそうだった。


***太郎からの再訪メッセージ***


 その週の金曜日、三人は再び夜のグラウンドへ向かった。

太郎は約束通り、いつものようにトラックを歩いていた。


「おや、また来てくれたのか」

彼は笑顔で迎えてくれる。


「太郎さん、倉庫のこと…詳しく教えてもらえますか?」隼人が切り出す。


 太郎は少しの間黙り、遠くにある古びた建物に視線を向けた。

「……あそこには、昔の道具や記録だけじゃなく、“あるもの”も一緒にしまわれている。長い間触れられずにね」


「あるもの?」秀が眉をひそめる。


「今はまだ話さない方がいい。ただ、もし近づくなら…中に入る前に必ず、外で三回深呼吸してから入りるんだ。息を整えずに中へ入ると…あれは君たちを見つけやすくなる」


 太郎はそれ以上語らなかった。

ただ、その表情には昨夜とは違う、どこか影のある色が浮かんでいた。


***予兆の夜風***


 帰り道、三人は体育館横の道を歩いていた。

ふと、美優が足を止める。


「…今、聞こえなかった?」


「何が?」秀が振り返る。


「……こっちへって、誰かが囁いたような…」

美優の顔色は青ざめていた。


その瞬間、倉庫の方角から冷たい夜風が吹き抜け、錆びた鍵の鎖がカラン…と小さく鳴った。


隼人は無意識にペンダントを握りしめた。

まだ踏み込んではいけない気がする――それでも、次なる調査場所はもう決まってしまったようだった。


***倉庫への調査***


 その次の日の放課後、三人は学校の事務室で倉庫の鍵を借りることにした。

「体育の授業で使う道具を確認したいんです」隼人が事務員に説明した。

「そうですか。気をつけて使ってくださいね」事務員は鍵を手渡した。

校舎裏の古い倉庫は、確かに年季の入った建物だった。錆びた扉と、ところどころ剥がれた塗装が不気味な雰囲気を醸し出している。


「太郎さんの言う通り、3回深呼吸をしよう」隼人が提案した。

三人は倉庫の前で深呼吸を3回繰り返してから、恐る恐る扉を開けた。

中には古い体育用具が雑然と積まれていた。跳び箱、マット、古いボール類。特に異常な気配は感じられない。


「何も無いみたいだね」秀が辺りを見回した。

「でも油断は禁物よ」美優が警戒を緩めなかった。

十分ほど倉庫内を調べたが、特に変わったものは見つからなかった。三人は一旦倉庫を出て、再び太郎のもとへ向かった。


***太郎の警告***


「太郎さん、倉庫を調べましたが、特に何も...」隼人が報告した。

太郎の表情が心配そうになった。「そうか...でも気をつけるんだ。あそこは悪霊がいる場所だから。君たちが何も感じなかったのは、まだ本格的に活動していないからかもしれない」


「悪霊って、僕たちにも対処できますか?」秀が尋ねた。

太郎は首を振った。「私のような地縛霊とは格が違う。君たちの力だけでは無理だ」


***瑞希姉さんへの相談***


その夜、隼人は帰宅後すぐに親戚の瑞希姉さんに電話をかけた。

「瑞希姉さん、実は相談があるんです」


電話の向こうで、落ち着いた女性の声が答えた。「どうしたの、隼人君?」


隼人は学校での出来事、太郎との出会い、そして倉庫での悪霊の話を詳しく説明した。


「隼人君、それはかなり危険かもしれないわ」瑞希の声に緊張が走った。「悪霊は地縛霊とは違って、積極的に人に害を与える可能性がある。今度、私が直接出向いてみるから、それまでは勝手な行動は控えて」


「分かりました。ありがとうございます、瑞希姉さん」


***翌日の報告***


 翌日の放課後、図書館で三人は集まった。隼人は瑞希姉さんからのアドバイスを二人に報告した。

「親戚の瑞希さんって、どんな人なんだい?」秀が興味深そうに尋ねた。

隼人は少し考えてから答えた。「俺も詳しくは知らないんだけど、色々な霊現象を解決しているみたいなんだ。小さい頃から、よく瑞希姉さんから『霊には気をつけるように』って言われてきたんだ」


「本格的な霊能者なのね」美優が感心した。

「今度、学校に来てくれるから、それまでは無理な調査は控えよう」

三人は瑞希の到来を待つことにした。新霊体験隊にとって、初めての本格的な悪霊との遭遇が近づいていた



 新霊体験隊の新しい活動として、瑞希との悪霊対峙に向かう新霊体験隊だった。

購読、ありがとうございました。

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