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4-4. 事情聴取

 ロバートとエドワードは、一切会話しなかった。

 ただ黙々と目的地へと歩み、一切の行動を事務的に進めているような感じだ。

 すごく、落ち着かない。


「オマエ、隊長なんだろ?

 なんでお偉いさんが直々に動いてるんだ?」


「貴様に関係ない」


 そうやって、ロバートが質問しても適当にはぐらかされてしまう。

 なので仕方なく、世間話に切り替える。


「今日は天気がいいな」


「……」


「騎士団のメンバーって、エルフが多いのか?」


「……」


「そういえばオマエ、エイルの知り合いなのか?」


「……」


「リコリスのことも知ってそうだったが、どんな関係なんだ?」


「黙れ」


 エドワードは足を止めた。

 そして無表情のまま振り返り、一定の波長の声で話し始める。


「与太話をするために、貴様を呼んだわけではない。

 ボクは刑事隊、貴様はただの被害者だ。

 言動を慎め」


 そう言って彼はゆっくり向き直ると、再び歩き始めた。



 普通なら、被害者の精神を和らげるために何か軽い話をするはず。

 なのに彼は、一切その素振りを見せない。

 そういう性格ということで片付けられなくもないが、それにしては淡々としすぎだ。


(騎士団員は感情を廃しているって……本当なんだな)


 聞いた話、彼らは感情によって判断を鈍らせないために、入団した日から心を抑える訓練をするらしい。

 それが『都市の秩序を守る』ために、必要な犠牲だそうだ。


 そのため団員は全員冷静無頓着で、見た目以外の個性は殆どない。

 強いて言うなら、感情を捨て去る前の癖や本人の力量くらいだろうか。

 どっちにしろ、全員ただの傀儡みたいになっているのは確かだ。




 気まずい空気をしばらくズルズル引きずっていると、やがて立派な洋館が見え始めた。

 2階建てで一見小さいように見えるが、奥行きがすごくあり装飾も豪華だ。

 質素なつくりの冒険者ギルドとは、正反対な見た目だ。


 周囲には、騎士団の警備隊らしき青い鎧を着た人達が何人も立っている。

 どうやらここが、アクアマリン騎士団の本部らしい。


「ちょっと待った! 工房に行くってさっき約束しただろ!」


 ロバートは慌ててエドワードを制止した。

 せっかく自分でなんとか調査できるように努力したのに、これでは水の泡だ。

 こんなところで、呑気に道草を食っている暇と心の余裕なんてはない。


「まずは基本的な事情聴取が先だ。

 その後記録係を連れて、現場に向かう。

 もしこちらの方針に従えないというなら、先程の話は白紙にさせてもらおう」


 エドワードは有無を言わさずに、立ちはだかるロバートを押しのけた。


「どうする? ロバート・モーガン」


「……っ」


 ロバートは下唇を噛み締めた。

 出来れば一刻も早く現場に行きたいが、ここで我慢しないと本当に水の泡にある。

 せっかくのチャンスを、こんなところで台無しにするわけにはいかない。


 ロバートはコクリと頷くと、やむを得ずエドワードの後を歩いた。






 通されたのは、無機質な取調室だった。

 灰色の石造りの部屋の中に机と椅子だけが置いてあり、建物の外観とは大違いだ。

 それに少し寒くて、窓が全くない。

 まるで、拷問部屋のようだ。


 エドワードは、奥の椅子に座るようにロバートを促した。

 相手がゆっくり腰を下ろすと、エドワードも向かい側に座る。

 そして間もなく、記録係らしき騎士団員が部屋に入ってきて、2人の間に入るように席についた。


「ここから先の発言は、全て証拠として記録に残される。

 軽率な発言は控えるのが身のためだ、()()()


 今まで以上に、空気が重い。

 まるでロバート自身が犯罪を犯して、尋問されるような感じだ。

 無意識に体が強張り、緊張して手足が冷たくなっている。


 ロバートはぎこちなく、首を縦に振った。




 エドワードから聞かれたのは、基本的なことだった。

 名前、職業、事件当時の居場所、原因と犯人の心当たり……


 それらを端的に質問され、事実を正確に答える。

 その間エドワードはロバートの発言にこれと言ったリアクションは示さない。

 対する記録係も黙々と2人の会話をメモする。

 そんな機械的な事情聴取が、淡々と進んでいった。



 やがて聞くべきを事を聞き終わったのか、エドワードは手を顎に当てて考え込み始めた。


「なるほど、おおよその事情は分かった」


 そう言うと彼は、前のめりになりロバートの目をまっすぐ見つめた。


「貴様の推測では、不在時に何者かが侵入し資料を盗もうとした。

 その際張り巡らされた罠の1つが作動し、火災となった。

 犯人は逃走に成功し、目的のものは入手したかもしれない……と」


「……あぁ」


 エドワードは椅子にもたれかけた。

 そして何か悩んだように、顔を両手で覆う。

 ロバートはそんな彼の様子を、腕を組みながらまじまじと観察していた。


「マリーガーネット・ファミリーの関与の可能性は?」


「……は? ファミリー?」


 突然関係のない集団の名前が出てきて、ロバートは困惑した。

 確かファミリーは犯罪の温床となっているため、騎士団と対立していると聞いたことがある。

 どうやらエドワードが動いているのは、彼らが関わっている可能性があると踏んだかららしい。


 ロバートはうなりながら、彼の疑惑を吟味した。


「オレがあそこで開発しているのを知っているのは、ヤンソン先生と魔法店のメンツくらいだ。

 皆口が堅いし、オレも親戚や親しい友人にそのことを話したことなんてない。

 ファミリーが空き巣を狙った可能性はゼロじゃない。

 だがそもそも工房の中に何があるかなんて知らないはずだ」


 エドワードはしばらく、考えるようにロバートを凝視していた。




 しかし彼の話に納得したようで、体勢を少しリラックスさせた。

 そして記録係に目で合図を送り、広げた書類を片付けさせ始める。


「聞きたいことは以上だ。

 この後約束通り、現場に連れて行こう。

 だが、1つだけ言っておく」


 彼は立ち上がり、ロバートの隣に移動して目線で威圧し始めた。

 まるで犯人を睨むかのように。


「侵入者を防止するのは勝手だが、やりすぎだ。

 電撃による侵入者の無力化、意図的な放火、それによる侵入者の身の危険……

 話を聞いただけでも、傷害罪、現住建造物等放火罪、殺人未遂などいくつもの容疑の疑いがある。

 それ故、捜査規範第118条に基づき貴様を”被疑者”として拘束する」


「な――――」


 エドワードはロバートが言葉を発する前に、彼を無理やり机に押さえつけて両手をロープで縛った。

 突然のことで、ロバートは現実かどうか一瞬分からなかった。

 しかし、縄が食い込む痛みでそれが現実だと理解する。

 パニックになりながらも必死に悶えたが、かなり頑丈でびくともしなかった。


「安心しろ。

 この措置は、感情的な貴様の逃亡を防止するためだ。

 容疑が晴れ次第、直ちに開放すると約束しよう」


<<同刻魔法店にて>>

アインツ「どうした?やけにそわそわしているみたいだが」

エイル「だって……大丈夫って言っていたけど、ロバートが心配だよ」

アインツ「だったら行けばいいんじゃないか? あいつらが向かった先は分かっているんだろ?」

エイル「うーん……」

(エイルは深く考え込む)

エイル「……そうだね、行ってくるよ」

アインツ「気をつけてな」

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