須藤美紀の憂鬱
中学の数学かもしんない……いや、小学校か?
† This is my memories of the MINI-CROISSANT †
By MIKI
今日も私はメランコリー。
朝起きて、顔を洗って、歯を磨いて、朝食にはパンを食べる。
慣れ過ぎた惰性の時間も、特に気にせず淡々とこなしていって。
最後に鏡を見てチェックして……うん、今日の私も決まってる……!
だけど私はメランコリック。
理由は色々とあるのだけれど、一番の理由はあいつ。
居候の存在が澄み渡った私の心に負担をかける。
ミケがいるおかげで、私の心はキレイにならない。たぶん、なんかそんな感じ。
今日も気だるい足音を立てながら、私は一階への階段を下る。
「お姉ちゃんおはよー!」
「美紀おはよー」
今日も今日とて、それは日常になりつつあった。
私は扉の方へ向かっていた足を止めて向き直る。
自然とミケへ目が向いた。
そこにいるのは確かに昨日と同じ人物。
髪型が違うだけだっていうのに、随分と印象が変わるわね……って、何見てんだ私は。
「おはよ颯太。相変わらずあんたはテンション高いわね」
「テンションって何?」
「おはよ~」
「……今日も元気ねってことよ」
「テンションテンション!」
「おはよっ」
…………。
「それじゃ、私は行くからね」
「うん、バイバーイ」
「……まさかの痴呆とは。可哀想に」
「聞こえてるわよっ」
一方的に怒鳴りつけて。
鈴を鳴らして店を出る。
今日もミケがうざかった。
「あ、みっちゃん!」
「おいっすー」
軽やかに挨拶を交わして席へと着席。
「みっちゃん」
「んー?」
荷物は手提げ鞄だけ。
教科書の類はいつも机の中に完備してあるので、忘れる心配はない。
入りきらない分は横に吊るしてある。勉強熱心な私にはこれくらい造作も無いことだ。
「あ、昨日ちゃんと帰れた?」
「帰れたよー。車なら楽ちん楽ちん」
「そう、良かったわね」
「良かったよー」
さて、勉強勉強。
「あのね、それで昨日のことなんだけどね?」
「えーっと、p22p22……あった」
「……みっちゃん、なにしてるの?」
「勉強」
まずは数学の教科書を開いて昨日のおさらい。
授業は半分寝ていたので、どうしてなかなか難しかった。
「それよりみっちゃん、昨日の」
「遙、気が散るから喋らないで」
「えーっ!? ホントにどうしちゃったの!? あれだけ勉強嫌いなみっちゃんが、みっちゃんが!」
「うっさいわよ」
新品同様の教科書を広げて、難解なアルファベットの公式を解読する。
「…………」
「……y=2xの時、y=6x+4………?」
「…………」
「yが2xなのに、6xって? ……+4はただの飾りか?」
「みっちゃん、みっちゃぁぁぁぁん!」
「泣くな! そしてうっさい!」
ダメだ、遙が煩いせいで、ちっとも勉強が捗らない。
それでも何とか必死に頭を働かせるが、本をただ眺めるだけの時間が続いた。
………………パタン。
「やめよ」
「みっちゃん、昨日の人誰?」
私が諦めた時、今までの苦労が水の泡となって弾けて消えた。
「…………」
「すごいカッコよかったね」
「…………」
「二人で一緒の傘に入ってたね」
「っ!?」
「彼氏?」
「んなわけないでしょっ」
聞いて欲しくないから誤魔化していたのに、空気を読めと言いたい。
ミケといい遙といい、人のプライバシーというものを知らないに違いない。
「じゃあ、誰なの?」
「ぁ、あいつは……」
「あいつぅ?」
「…………」
もうやだ。帰りたい。
――キーンコーンカーンコーン。
一時限目のチャイムが鳴ったところだった。
『なんか、朝から変な視線を受けるのよね……やな予感がする』




