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霊が見える私と少女の霊がくりなすサスペンス?です
私は普通の人と違うところがある。
それは・・・霊が見えてしまうということだ。
その為、中学校までは変人としてみられることもあった。
だって、見えない人と話しているのだから仕方がない・・・
高校に入って変わろうと思い、見て見ぬふりをするようになった。
話しかけてくる霊をシカとし続けるのも大変ではあったが、
そこは頑張りのおかげで楽しい高校生活を送ることが出来た。
見て見ぬふり。これが功を奏したのか分からないが、段々と見える霊の
数も減った気がする。
今は状況して川崎に住みIT業界の会社に勤めている。
一人暮らしを始め4年目になるが、今はほとんど霊に邪魔をされず、
都会暮らしを満喫していた・・・あの日までは。
私のことを簡単に紹介すると、中肉中背で見た目は優しそうと言われるが、
かっこいいと言われることは少ない。
18歳で専門学校で状況し、そのまま東京にあるIT会社に入社。
現在2年目になる。
毎日覚えることが多く大変であったが、通勤が原付バイクで通える場所にあり、
あの名物の満員電車に乗らなくてもいいのはすごく助かる。
(・・・原付バイクでの通勤は会社で禁止されているが)
3月に入ったがまだ肌寒く、コート、マフラーが手放せないような時期でした。
その日はグレイがかった雲が低くどこまでも張っており、帰りは17時半なのだが、
すでにまわりは薄暗くなっていた。
私は厚手のコートをはおり、マフラーを首に巻き付け原付に乗った。
鶴見から小杉方面へ。時間としては30分程度かかる。
真冬に比べるとかなりましにはなったが、切る風はやはり冷たい。
それは『Cポイント』に差し掛かった時だった。
『Cポイント』とは私が付けたポイントで坂と坂の丁度谷間になる箇所があり、
両側には木が生い茂りそのポイントだけ体感だが温度が下がるのだ。
雨上がりの時も最後まで濡れていたり、温度が下がっているのは事実であり、
1日中日が当たっているところをあまり見ない。
そんな場所に差し掛かった時、・・・見えてしまった。
左側の路肩に制服をきた少女が立っていた。
時間はまだ18時前。女子高生が立っていても不思議ではないのだが、
私には分かる。
この世の人ではないと・・・。
少女はじっと私を見ていたのを遠くからでも分かった。
(すまぬ)
私はこれまでやってきたように無視を決め込みそのまま走りさった。
(何かいいたげそおうだったな・・・)
と頭では分かっているが、関わらない。これが今まで生きてきた中でだした私の答えだ。
スピードを緩めることも無く、そのまま走り去った。
アパートの駐輪場が見えてきたので、スピードを落とす。
いつもの定位置に原付をおくとヘルメットを取った。
ヘルメットをバックミラー吊るし、カバンを取ると2階に上がるため、
階段の方を振り返った。
「っ・・・」
思わず声が出そうになる。
その理由は階段に腰かけているさっきの少女が目に入ったからだ。
(うわ~ついてきてる)
最近は見えなくなってきているとはいえ、恐怖心はない。
霊を見いた時の私なりのルールがある。
それは、絶対、声を掛けないことだ。
声を掛けることで向こうは受け入れられたと思い、そこに霊と私との間に、
変なインターフェースが生まれるのだ。
そうなったら大変で、とにかく付きまとわれる。
過去に1年もの間付きまとわれたことがあるのだ。
なのでここは絶対に声を掛けてはいけない。
あくまで見えないフリをし、素通りするしかない。
私は気づいてないフリをしながら、その少女の横を通り抜けた。
少女の目線が気にはなったが、そのまま何事もないように階段をのぼり、
私の部屋に入っていった。
カップラーメンにそそぐ湯を沸かし、テレビを付けて何気なくボーとしていた。
(あの子はなんだ。なんのようだろう。
今までは家についてくるなんてケースはなかったぞ。)
テレビをBGMにしながら、あの少女のことを考えていた。
(これでいなくなってくれるのだろうか・・・)
そんな心配をしながら、湧いたお湯をとりにキッチンに向かった。
玄関を見るが特に変わったところはない。
(大丈夫か・・・)
少し不安もあったが、問題ないと言い聞かせ、お湯をカップラーメンに注いだ。
3分など時間を図るタイプではないのでテレビを観ながら時間を待った。
「もういいんじゃない?」
「ううう、うわっ!!」
飛び上がるという言葉が大げさではないくらい私は飛び上がった。
『もういいんじゃない?』
急に後ろから声がしたのだ。
思わず振り返った私の目に飛び込んできたのは、そう!あの少女だった。
「なっ」(なんだ!君は!!)
思わずでそうになった声を飲み込む。
(話してはだめだ。話してはだめだ。)
姿勢をもとに戻し落ち着くまで深呼吸を続けた。
無理やりでも聞こえない見えないフリを押し通そうと私は
カップラーメンのふたを開けすすりはじめた。
「ねぇ」
「・・・」
「ねぇ」
「・・・」
「鼻毛出てるよ」
「うそっ!」
思わず鼻に手をやる。
「うっそー。なんだ聞こえてんじゃん」
「・・・」
「なんで無視すん」
「・・・」
「こんなかわいい子を」
少女の容姿は、肌が白く、目じりがややあがっていて、
可愛いというよりは綺麗という方があってる。
私はあきらめた。
「かわいい、かわいくない関係なく無視することにしてんの」
「なんで?」澄んだ瞳で私をみてくる。
「めんどくさいだろ。君たちは。ずっと付きまとってくるし。」
少女が視線をしたにやる。
(やべ。言い過ぎたか・・・)
少しの沈黙。に堪えられず
「で、なんなの?ここまで付いてくるなんて。なんかあるの?」
と私から沈黙を破った。
すると少女は軽く笑みを浮かべ視線を再度こちらに向けてきた。
「お願いがあるの・・・」
(うわ、1番めんどいパターン)
「やだ」
思わず口にでた。
「はぁ!まだ何も言ってないじゃん」
「やだ」
「あっそ」
少女は立ち上がりながら、
「じゃ、お仲間にいいとこあるよって言って回ろう」
「ちょちょちょっと待って」
私は少女の腕をつかもうとしたが、当然すり抜けてしまった。
「あーーー今触ろうとした。変態、バカ、日本の恥!!」
「いや・・・そこまでいうことじゃないだろう。実際さわってないし」
「お願い聞いてくれないと、言って回るよ」
少女の余裕の笑みがむかつく。
「わかった。聞くよ。」
「ほんと?」
「わかった。わかった。」
あきらめた私は機械的に答えるしかなかった。
「ありがとう。」やっと素直な笑顔が少女からでた。
「わかったけど・・・そのお願いってなんなの?」
少女は真剣な表情を浮かべるとこう言った。
「私の遺体をさがしてほしいの」