21:木こり
「それじゃあ行ってくるよ」
「はいっ、気を付けてください」
「下の畑に水をお願いね。水の量はノームが教えてくれるから」
「任せてくださいニャ」
俺が転生者であること、ロロたちが転生者のひ孫であること、そして俺のスキルやリカバリーの事を話した翌日。
今日は森のほうへ出かけることにした。
出来るだけたくさんの食糧を調達するために。
なんたって今日は、アイテムボックスが使えるからね。持ち帰る重さを考えなくていい。
「移動の時は感知スキルをセットしているんだ。あと剣術スキルのスラッシュをね」
「そうだったのね。じゃあ剣術も?」
「あ、いや。あれは子供の頃からの経験で習得したものなんだ」
「じゃあディオンって、私たちのように学んで習得するスキルと、そのポイントってのを使って取れるスキルの二種類があるってこと!?」
「二種類ではなく、習得できる手段が二種類かな。獲得出来るスキルの種類も、この世界にあるスキルだからね」
全てのスキル──だから、世間ではゴミだと言われているようなものまである。
ちょっと便利だけど無くても構わない、そんなスキルだ。
掃除関係の魔法がその代表みたいなもの。
だけどまさかスキルの組み合わせで派生するスキルがあるとは思わなかった。
他にも何か発見できるかもしれない。
今夜にでもいろいろ試してみるかな。
「ん、前方のあの大岩の向こうに何かいるようだ。待ち伏せしているんだろうな、嫌な気配をさせてるよ」
「モンスターでしょうね。私が魔法で──」
「土で頼むよ。毛皮が必要だ、火だと燃えてしまうからね」
「そうね。人数分の毛皮は必要よね。オッケー」
セリスが短く呪文を唱えると、岩の奥から『キキッ』っと声がいて兎が飛び出してきた。
もちろんモンスターだ。体長一メートルを超えているから、立派な毛布になるだろう。
「悪く思うなよ。"スラッシュ"!」
「"ロック・シュート"」
兎の首筋を狙って剣を一閃。剣圧が衝撃波となり、兎の首を刎ねた。
セリスの魔法で石が浮かび、それが勢いよく兎に命中。
もう一匹いた兎も俺が仕留め、毛皮三枚ゲット!
もちろん肉は食用になる。
「セリス、ちょっと待ってくれ。アイテムボックスのスキルをセットするから」
「分かっ──アイテムボックス!?」
「あ、言い忘れてたな。実はスキルの組み合わせで、アイテムボックスというスキルが派生したんだ」
「ちょ、ちょっと待って。スキルなの!?」
セットし、インベントリを開きながら頷く。
「いや、ほんとビックリしたよ。スキルでアイテムボックスがあればいいなぁとは思ったけど、まさか本当にあったとはね。前提スキルをクリアしないと、獲得可能一覧に出てこない仕様だったみたいでさ」
「スキルの組み合わせ……魔法でもそういうスキルはあるけど……前提ってなんだったの?」
前提スキルは三種類。それを説明すると、彼女は噴き出してしまった。
「た、確かになかなか難しい前提ね」
「そうなのかい?」
「整理整頓スキルは、身分の高い人の家で働くような人が好んで習得するスキルよ。空間魔法はどの系統も消費魔力が高く、空間掃除であっても普通の魔力じゃ十回も使えないわ。気絶してたんじゃ仕事にならないじゃない」
まぁ確かにそうか。
その上で、魔力が高ければそんなところで働かず、もっと別の道に進むだろう──というセリスの意見だ。
空間魔法をばんばん使えるだけの魔力があれば、魔術師として有能なんだって。
なら冒険者がどこかの貴族に召し抱えられるほうが、よっぽど稼げるだろう。
そう言われたらそうかって思えてくる。
更に荷物運びはポーター職が重宝するスキルだけど、彼らは掃除をしてくれる訳じゃない。
荷物を運ぶだけだ。
しかもスキルレベルがそれぞれ20必要ってのもハードルが高い。
「リカバリーでスキルを自由自在にセットできるあなただからこそ、派生させることが出来たんでしょうね」
「もっと他にも派生スキルがないか、今度いろいろ試してみよう」
「いいなぁ。私も転生者だったらよかったのに」
さて、これどうやってアイテムを入れればいいんだろう?
ステータスボードに向かって兎を突っ込む?
違うな。
こういう時ゲームだと、クエスチョンマークとかあってヘルプが見れるんだけどなぁ。
まぁヘルプの代りに鑑定みたいなものか。
それでも念のためにとヘルプがないか探してみる。
で、枠に触れた時、ポップアップが出てきた。
【アイテムを入れますか?】
──と。
「枠に触れるときに手にしている物を、インベントリって部分に入れられるようなんだ」
「ふ、ふぅん。全然分からないけど、ディオンが持っていた物が突然消えたのだけは理解できるわ」
そして取り出すときは枠に触れ、【取り出しますか?】とポップアップが浮かぶので『はい』を選択。数指定も出来るので、なかなか便利だ。
森に到着したら残りスキルポイントを確認して、鑑定を5だけ取る。それから採取スキルもだ。
鑑定が無ければ、食べられる物とそうでないもの、毒のあるものとないものが見分けられないし。
セリスには薪になる枝を拾い集めて貰う。
ストーブを二台稼働させることになるし、人数が増えれば料理のために使う火の量も多くなるだろう。
いくらでも、あればあるだけ安心出来る。
枝も食用植物もまだアイテムボックスには入れていない。
あとでリカバリーする予定だから。
途中で蒸かしたじゃがいもを食べ、昼からは椅子の補修に使うための木の伐採だ。
一度アイテムボックス内の兎を出して、それからリカバリー。
で、アイテムボックススキルが取れる状態にして、更に感知と、今度は伐採スキルをセットした。
伐るのは大きな木でなくていい。椅子数脚の脚を補修するのに必要な分でいい。
「スキルを獲得はしたけど、一応初めてだから君も気を付けてね」
「分かったわ。周りを警戒しつつ、木の様子を見てるわ」
伐採スキルは20。
斧を持って目当ての木の前に立つと、幹に赤い線が浮かんだ。
ここを伐れってことなんだろうな。
何度か斧を振るうと、赤い線が移動。ぐるりと後ろに移動したので、また斧を振るう。
数回斧を振るって、ポップアップが浮かぶ。
【倒れる方角を確認してください】──と。
そして木の根元から赤い矢印が伸びていた。その方角に倒れる訳だね。
「セリス、たぶん次で倒れる。この方向に倒れるよ」
「大丈夫よ。でも早かったわね」
「まぁ意外と細い木だしね」
そう言って最後の一振りを──叩きつけた。




