女性比率が低いからといって逆ハーが出来るとは限らない。
そこは地球によく似た世界。
違っているのは女性が元々少ないこと。
二十年前にさらに女性を減少させる病気が蔓延したこと。
一妻多夫は元々認められていたもののソレですら、結婚できない男があぶれにあぶれ、結婚制度が変わったのでした。
結婚相手に性別は問われません。
つまり、びーえる的世界に変容したのでした。
……という設定の世界の女性に生まれたのですが、どうしましょう。
そんな彼女は紆余曲折色々あって男が信じられなくなり、修道院に駆け込み一時保護的にお世話になっている。
結構いるらしい。
真っ当な男性もいるとリハビリを兼ねて奉仕活動に出たりもする。
そして、不信感をさらに募らせる悪循環もあるらしい。
「最悪です。シスター」
そう言って駆け寄ってきた少女もそんな奉仕活動で知り合った子である。
彼女の今日の奉仕は女学院での散策、という名の困った少女たちの手助けだった。今時、談話室を開けていても誰も来ない、ということだ。
「どうなさったのですか?」
「親友に寝取られました」
少女の虚ろな笑みが大変恐ろしい。
それを前に霧江は首をかしげる。男を取り合う、ということがピンとこない。彼女が執心であった男っていたっけ? そんな疑問だ。
少女は既に家の都合などから結婚している。どの夫の話でもそれほど興味がなかったように思うのだが。
蛇足ながら霧江は未婚である。無理矢理結婚するなら尼になると脅して修道院に行った。そこは寺じゃないのかと親友に爆笑されたことを未だに根に持っている。
さらに蛇足で言えば親友は男だった。
「男に走るとかそんなちゃちな話じゃなかったのです」
「は?」
「元々できてたんですって。でも、お家のことがあって形ばかりの結婚だったんですって。
ふふふ。
面白いことを言うモノですねぇ」
少女からの無意識に出ている真っ黒なオーラに霧江はびびりそうになる。
済ましたシスター顔が引きつっていることには幸い気がつかれていない。
「どのような制裁がふさわしいと思います? ねぇ、シスター」
こう言う話を聞く度に霧江は人間不信になっていく。箱入りのままちやほやされて箱庭で生きていきたかった。
「離婚しなさい」
「でも、この煮えたぎる怨念が」
「……無駄な燃料投下だからおやめなさい。相手が燃え上がって悪役にされるだけだから」
過去の事例を考えてもさっさと離婚する。慰謝料請求は両方にする。今後一切のつきあいをしない。
これが最適解であると霧江は思う。
「シスターが仰るのでしたら」
渋々ながら意見を聞き入れてくれるようで霧江もほっとした。
少女が頭を下げて去って行くのににこやかに手を振って見送った。
そんな彼女は離婚と同時に新しい出会いがあり、日々楽しいと報告をしてきた。
霧江は穏やかに祝福した。
彼女には密かに恋の女神というあだ名がついていたのだが、知らないとは幸いである。
男女比率が極端に違う場合にはいないもんはいないもんとして処理されるんじゃないかと。遠くの異性より近くの友みたいな。