カッパだって獣人枠でいけるじゃないっ!? という暴論の聖女
われは世界を救うべく異世界に呼ばれたものである。
人はわれのことを聖女と呼ぶ!
その実態は、人外スキー(重度)である。
どのくらいかと言うと……
「妖怪は異世界にいない」
「妖精はいます」
「豆腐小僧はいないのね……」
「一反もめんもいません。なお、子泣きじじいもおりません」
「くっ、異世界に来てこんなにつらいことはないわ」
「僕としては、そんな人外の幅が広すぎてめまいがします」
「宇宙にユニバースに広がる夢がきらりん」
「……なんでしょうね。お子様が泣きそうな女児アニメみたいななんか」
以上が、つい先日、私をこの世界につれてきたやつと交わした言葉である。だいぶ、いや、かなり? の乱心だったという自覚はある。
名前を出していけないバグなんちゃらとか、ほび……とか、そういうのはいるのに、そういや、妖怪いないなと気がついたからだ。
レッドキャップはいた。可愛くない虐殺方面の。あーごめーんとつぶやきつつ数を減らしてきた。可哀想だけど、ほら、害悪は害悪。別なところで栽培してあげますからねぇと隔離は必要。
聖女家業をツライぜ。でも趣味に走っても爆走しても許されるのはいいんだぜ。
そして、今日も今日とて救うべく人外を求めていたりする。
「あのですね、カッパはいませんか」
「……かっぱ。あの、甲羅を背負って、お皿を乗っけた、尻子玉抜くやつ」
「あ、お詳しい。よかった。で、あれ、獣人カテゴリでいけません? ほら、魚っぽい。半魚人より人間っぽい感じで」
「呪われた漁村にいそうなのは、いますけど」
「うぉ、そ、それは、遠くから拝見してもよろしいんですかなっ」
「なぜ、遠く」
「滅してはいけないので。育てていかねば」
「……ほんと、おもしれーを通り越してやべー女ですね」
「やだなぁ、褒めても」
「褒めてませんし、わかっていっているのがムカつきます」
おやおや。初期値から考えると大変人間らしい反応。無機質なのは無機質な対応もオツだけど、感情的なのもなかなか。
「なんか、ぞわってしました」
「うふふふ。
じゃあ、ぺんぎん」
「ぺんぎん?」
「緑のペンギン、記憶喪失ならなおよし」
「…………へぇ」
「い、いや、愛でるだけ!愛玩!」
「へぇ……」
氷点下を超えそうなくらいの寒さを記録した。いや、氷点下は下回るというべきなのか、いや、どうなんだ!
「流石にこの異世界でも食べ物に命は宿らないです」
「へい。あれはなんか別カテゴリでした。すみません」
「……まあ、水生生物でよければ、リザードマンなどが」
「ひゃっほーいっ!」
「アマゾネスな集落が男がいないと困っているそうです」
「お姉様たちの婚活! いかせていただきます! ……あれ?」
「なんです?」
「最近、お姉様とお知り合いになる件多くないですか?」
「両方行けるなら、今まで保留してた分を排出中です」
「そうなの? まあ、いいかな。婚活婚活。私もしちゃおっかな」
「次。来てからにしてください」
「はぁい」
「配偶者ほしいですか?」
「いや? 相棒がいるからいい。でも甘酸っぱいの楽しみたい」
恋の駆け引きとか楽しみたいだけなのだ。そういうの無縁だったから。現代日本では残念ながら妖怪ともお会いできず婚活できなかった。
「…………ひとでなし」
「ひっどーい、人道的に評価されているこの聖女様を捕まえて人でなしとはっ!」
「弄んで捨てる宣言でしたよ」
「ふわっとしたやつふわっとした! 忠誠とか信仰とか重いの!」
「やりすぎるからですよ。
まったく……。僕の」
「下僕?」
「僕の下僕は、ひどいやつです」
「泣きそう」
「ほら、もしかしたら現地でそういうイキモノいるかも知れませんよ」
現地で鱗もない尾もないと泣く、極めてカッパに近いリザードマン個体に出くわしてしまうのである。




